第5話 初めての冒険
毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。
さて、ニコルさんの馬車は街道を進みます。僕たち護衛は一台馬車を借りてそこに集まっていました。
御者は僕です。お爺様が「お前やってみろ」と言ったからです。
最初は慣れませんでしたが、だんだんと様になってきました。
「君、幼いのによくやる」そう言ってブリシアさんが横に座ってきました。
「君いくつ?」と聞いてきたので、「12歳です」というと、少しびっくりしたみたいでそれからぎこちなく頭をなでてくれました。
「何かあったらお姉さんに言いなさい。力になってあげる」フンスと鼻息を出して、胸に手を当てて言いました。
「お姉さん、もう冒険者長いのですか」と聞くと、「魔法学校を出て、直ぐ冒険者なった。もう5年目になるベテラン」と言って自慢してきました。
魔法学校は冒険者育成のための専門学校で、2年の教育課程になっており、卒業すると初級魔法使いに任命されるそうです。主に平民の子で魔法の力がある子が通う学校です。
魔法学校は12歳が入学最低年齢なので、少なくとも18歳ぐらいだと思われます。
ブリシアさんは外見上、10代前半のようなきゃしゃな体をしており、身長も僕よりも低いです。顔はとても整っていて、まるでお人形のようで、とても18歳以上には思えないのですが、女性に年齢のことを言うのは自殺行為だということは前世からの記憶でよく理解しています。
「ベテランなんですね、すごいです」僕は無難に返しました。
ブリシアさんは嬉しそうな顔をして、「そう、何でも任せる」と言って、僕の頭とほほを撫でました。
しばらく馬車が進んだところで、僕の気配察知に反応がありました。
これは女神にもらった能力の一つで、広範囲で、指定したものを察知できる能力です。
内容も細かく察知でき、敵性を帯びているか、味方か中立かも判断できるうえ、人数や武装なども分かる能力です。
「お爺様、敵です」そう馬車の中のお爺様に言うと「何人だ」と聞いてきたので、「7人です。一人は魔法使いのようです」と答えました。
「先に魔法使いをつぶしたいのですがよろしいでしょうか」と聞くと、「ニコル殿、賊がいるので、攻撃をかけたいのですが」と尋ねたところ、「わかった。頼みます」とニコルさんは震えながら言いました。
プリシラさんは、「えっどうしてわかるの?」と驚いていました。
「僕の特殊能力です」と言って、ニコッと笑うとプリシラさんは顔を赤らめて「わかった。手伝うことがあったら何でも言って」と僕の頭をなでました。
プリシラさん、僕の頭をなでるの癖になっていないかな、嫌じゃないんだけどきれいな女の人に撫でられると少し照れます。
僕は魔法をテルミヤさんから教えてもらい、一通り使えるようになっています。特に火魔法と風魔法は師匠であるテルミヤさんを上回る力だそうで、「天才っていうのはいるものだね。お前のお爺さんも人外だったが、お前も人外だな」とびっくりしていました。
僕の得意魔法はファイアーボールを極限まで絞り、小さな火弾にした後、風魔法で相手に飛ばします。
それを何百発と一度に生成し、あたり一面にばらまく魔法です。僕はこの魔法を魔道機関銃と名付けました。
僕はその魔法を使って、敵のいる場所、特に魔法使いの気配のある場所を中心に魔法を放ちました。同時にお爺様が飛び出し、敵のいる場所に向かいます。
リンダさんが一緒に飛び出しますが、あっという間に置いて行かれたようでした。
気配察知により、僕の魔法で、6人が無力化出来たようです。
すぐに残り一人も無力化されました。お爺様がやったのでしょう。
お爺様が帰って来た時、リンダさんはお爺様に背負われていました。
「リンダ殿は足が速くないからな、背負った方が早く帰れると思って背負ってきた」とお爺様は涼しい顔で言いました。
リンダさんはお爺様の背中で顔が真っ赤になっていました。
「こんな、女の子扱いされたのは初めてだ……」と小声で言っています。
お爺様がリンダさんを背中から優しく下した後、リーニャさんが足に回復魔法をかけていました。どうも途中で足をくじいたみたいです。
リンダさん、お爺様の方をチラチラ見て顔を赤らめています。何となくおばあ様が言ったことが分かりました。
その後も盗賊の襲撃が何回かありました。どうもこのあたりを縄張りにしている盗賊がいるらしいです。面倒なので、ニコルさんに了解をもらって、僕とお爺様が行ってつぶしてくることにしました。
「私たちは着いていかなくて大丈夫?」とジュリアさんが聞いてきたので、「ジュリアさん達はニコルさんの護衛をお願いします。別口が来ないとも限りませんから」と言って説得しました。
さて、僕は気配察知の能力を広く浅く伸ばします。広域にすればするほど詳細な情報は手に入らなくなりますが、敵性位は判別できます。
しばらく行った山の中腹に種別が敵性の人間が何十人も集まっている場所を発見しました。おそらくここがアジトです。
お爺様と僕はそこへ向かうと、見張が何人か立っていました。
僕は数発の弾を生成すると見張の頭に狙い撃ちしました。僕の魔法の射撃精度はかなり高いと師匠も褒めていました。
見張を皆倒すと、僕は手入り口に魔法の蓋をして、一酸化炭素を大量に流し込みました。
入り口から逃げ出そうとする者が何人かいましたが、魔法の蓋に阻まれ外に出られません。剣をふるってその壁を壊そうとしますが壊せません。
魔法使いが辛うじて穴をあけて外に出ましたが、お爺様に一瞬で切られてしまいました。
そのうち、入り口付近にいた者は泡を吹いて悶絶したように死んでしまいました。
その後もしばらく一酸化炭素を流し込みましたが、気配察知したところ、どうも数人生き残っている者がいるようです。
これ以上は無駄なので僕とお爺様の周りに防壁を張り、中に侵入しました。
生き残っている者は魔法使いたちでした。無味無臭の一酸化炭素を吸って、苦しくなったので訳も分からずに防壁を張って助かった者や、周りに苦しむ者が出たので、とりあえず防壁を張った者が生き残っていたのでしょう。
ヘロヘロの魔法使いはお爺様の敵ではなく、あっという間に切られてしまいました。
無事だった魔法使いとは戦闘になりましたが、僕の火弾で敵の気をこちらに向けた後に、お爺様が側面から切り込んで片を付けました。
さて、アジトにはお宝がいっぱいありました。結構大規模な盗賊だったのでしょう。
すべての物品と死んだ盗賊たちも根こそぎ時空魔法で収納しました。
盗賊の死体はどうするかって?
冒険者ギルドにもっていけば、盗賊は死体一人につき10ブッシュで引き取ってくれますし、賞金首はもっと高い値段がつきます。
普通だったら死体は重いので放棄するのが常なのですが、僕には時空魔法があり、いくらでも持ち運びできます。
仕事を終えた僕らはニコルさんのところに戻りました。
「早かったけど、アジトは見つからなかったのですか?」とニコルさんが聞いてきたので、「いえ、もうつぶしました。ニコル殿護衛の任務途中で抜けて申し訳なかった。お詫びと言っては何だが、今回の依頼料は無しで結構です。その代わりと言っては何ですが、また賊が出たらアジトをつぶすお時間をいただければありがたい」とお爺様がニコルさんに頭を下げました。
「依頼料無料ですか!本当によろしいのでしょうか?はい、その条件ありがたく受けさせていただきます。この程度の時間であれば全然問題ありません。それにこんな強い方に護衛してもらえるなんてすごくありがたい」とニコニコ顔です。
「私たち要らないみたいね」とジュリアさんがため息をついて言いました。
「いいえ、赤いバラ団の方がいるので、私たちがここを離れられるのです。すごく感謝しています」お爺様はジュリアさんに騎士の礼を取って、更に手の甲に軽くキスをしました。
ジュリアさん真っ赤です。
その代わり、リンダさんは少し膨れているようです。
そんな形で旅は進みます。
賊のアジトをつぶした所為か、国境の町まで二回しか盗賊の襲撃はなく、それも恐らく単独のはぐれらしく武装もぼろで、盗賊というより物乞いのような身なりでしたので、赤いバラ団の方にお任せしました。
1回目はプリシラさんが対応しました。プリシラさんの魔法は闇魔法らしく、呼びだした悪霊たちが盗賊に襲い掛かり、あっという間に全員を死滅させました。
2回目はジュリアさんとリンダさんは、素早い動きで盗賊を切り伏せました。
2人とも擦り傷一つありませんでした。
リーニャさんは「私何もやることないわ」とぼやいていました。
師匠は闇魔法が苦手でさわりしか教えてもらえなかったので、プリシラさんの闇魔法にすごく関心がありました。だめもとで教えて欲しいと聞いたら、プリシラさんは快諾してくれました。
「ありがとうございます、プリシラさん!」と言ったら、「未来の夫のためだもの、そのぐらい構わない」と真顔で言いました。
どう返していいのかわからず、ニコッと笑ってごまかしましたら、また頭をなでてくれました。
休憩時間や空いている時間に闇魔法を習いました。
闇魔法はとても面白い魔法でした。悪霊を呼び出して攻撃したり、スケルトンを召還したりと実践に仕える魔法でした。また、呪いのかけ方、解き方も学びました。
「呪いを解くのは聖魔法だと思っていました」というと、「聖魔法で解くのが一般的。でも聖魔法は呪いを強制的に解除するやり方で、鎖を斧で断ち切るようなやり方。鎖が複雑になればなるほど聖魔法では大きな力が必要になる。反対に闇魔法は呪いを解きほぐす感じ。だから時間さえかければどんな呪いも解除できる」と言っていました。
僕はこの魔法の勉強を通してプリシラさんともっと仲良くなれたように思いました。
お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。
星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。
10月も休日出勤が多いです。まあ、代休や超勤がもらえるので、ブラックではないのですが時間があまりありません。そうしたら最近ちゃんと本を読んでいないことに気付きました。作品を書くうえでも本は読みたいのですが、さてどうしようと思案中です。