第27話 アリア王国との対峙
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国境を警備する軍団からアリア軍3個軍団が国境に進出してきていることが知らされました。急いでお爺様と僕、ジェームズが向かいました。伯父上はパラスでの業務が多忙を極めるため、そのまま残留です。
アリア軍は国境手前で停止していました。我々の旗印を見たのでしょう。アリア軍から軍史がやってきました。
「私はアリア軍参謀、シュタインベック・アルツハイム子爵であります。こちらの指揮官とお会いしたい」
「私がこの軍を率いるジョン・アッピア、エリトリアの侯爵である」
「お噂はかねがね聞いております。有能にして勇猛、そしてエリトリア王家の救世主であらせられますな」
「そこまで言われると恥ずかしく思います。私のことを勇猛とおっしゃるがアリア軍の勇猛さこそ、この大陸で鳴り響いております。私は貴国との戦闘は避けたいと思っております」
「ありがとございます。我々も貴公とは戦いたくはないですな」
「同意を得られて嬉しいですな」
「しかし、我々には、大きなとげがございます」
「それはどのようなとげでしょうか」
「我が王の妹君であるエレナ様の件ですな。また、我が国からエレナ様とともに貴国に行った貴族の子弟たちの扱いですね」
「元王妃のエレナ殿、及びアリア貴族の皆さんですな。彼女たちをアリア王国に引き渡すことはやぶさかではないですが、一つ問題があります」
「それは何でしょうか」
「返還はエレナ殿と元アリア貴族本人のみ、配偶者と子供はこちらで処分させていただきたい」
「それらの者は渡せないと」
「しかり」
「貴公の意見は分かりました。ならば王に裁可を仰がなくてはなりません。場合によっては戦いになるかもしれません」
「かまいません。こちらとしては最大の譲歩です。これで不満とあれば武人らしく堂々と戦いましょう」
そう言って二人は別れた。
アリア王国仮王宮にて
アリア王国国王ルードビッヒ五世は国境近くで仮王宮を建設し、その場で事態の推移を見ていた。
王は、パランクの妹からの派兵要請が来るものと思っていた。3個軍団をいつでも派遣できる状態にしていたが、派兵の依頼はなく、そのうち首都パラスが墜ち、エレナたちが虜囚となったことを聞いてびっくりした。
そのため、とりあえず準備していた3個軍団を率いて国境までやってきたのである。
「なぜエレナは救援を呼ばなかったのだ」王は側近に愚痴をこぼした。
「きっと王宮の貴族が邪魔をしたのではないでしょうか。アリア軍が来れば、パランクは併合されてしまい自分たちの権利は剥奪されてしまうと」側近は恭しく答えた。
「それが一番考えられるな。馬鹿な奴らだ。どちらにしても地位を失ってしまったではないか」
「御意でございます」
「せめて、東部地域は併合したかったが、敵の動きの方が早かったな。さて、どう決着をつけようか」
「戦にしますか?」
「敵はあのジョン・アッピアとフィリップ・プリンディジだろ?我が国にも相当の被害が出ることが予想できる。我が国が負けることはないが、我が国の力が弱まればどこから干渉を受けるかわからんからな」
「我が国は地理的に四方を敵に囲まれていますから、国力をあまり消耗させるわけにはまいりません」
「本当に大変な国だよ。王としては、もう少し楽なところがいいな」
「こればかりは仕方がございません」
「とりあえず、妹たちを返すよう交渉することを命じてあるがどのような返答が来るかだな」王は、どうでもいいとばかりに話をした。
しばらくして、シュタインベック・アルツハイム子爵が王を訪ねてきて、先ほど話した内容を伝えた。
「分かった。つまり第三皇子はパランクで処刑したいということか」
「御意。こちらに渡したらパランクに干渉するいい材料になりますから」
「さて、どうしようか」王が考えを巡らしていると、本国から急使が来た。
「ウィーンブルクとエトルリアから合同の手紙が届いております」と使者は言い、書簡を王に渡した。
ウィーンブルクはアリア王国の南にある国で、アリア王国とは緊張関係にあった。
書簡に目を通した王は破顔一笑した。
「ジョン・アッピアが一枚上手だった。両国からパランクと停戦するようにとの依頼だ。まあ、言葉はいろいろ飾っているがパランクと戦うなら南から攻め込むぞと言うことだな。これは、ひょっとすると、東のボルスカ王国も秘密裏に話がついているのかもしれないな」
「なぜでございましょうか」アルツハイム子爵が尋ねた。
「ウィーンブルクの王の妹がボルスカ王に嫁いでいる。それにその縁で我が国に対する秘密の攻守同盟をこの二つの国は結んでいるからな」
「よくご存じで」
「我が国も生き残るためには敵の情報が重要だからな。いろいろな手を使って情報を集めている」と王は言った。
「ジョン・アッピアに伝えろ。貴族たちの配偶者と子供は返してほしい。ただ、エレナの子供たちはそちらで処分してかまわない」
「御意」そう言って、シュタインベック・アルツハイム子爵は退出した。
パランク側もこの条件を飲み、エレナ元王妃とアリア貴族たちは返された。
「エレナよく戻ってきたな。まあ、しばらくゆっくりしろ」王は言った。
「お兄様、いろいろ手を尽くしてくださりありがとうございます」エレナは頭を下げた。
「それで子供たちはどうなったのでしようか」エレナは尋ねた。
「王子は処刑、娘は修道院行か処刑だろう」王は平然と言った。
「そうですか、仕方がありません」元王妃はあっさり受け入れた。産んだのは間違いないが、別に好きでもない男の種だし、育てたのも乳母やお付きの者なので、子供たちに対する愛情はなかった。
「お兄様一つお願いがあります」
「なんだ、言ってみろ」
「返された者たちを家族ともども処刑してください」
「ほう、なぜかね」
「奴らは私にプルターク達が攻めてきていることを言わずに黙っていました。おかげでお兄様に援軍を頼むことができず、結果アリア王国の得るべき利益を失いました。このことは万死に値すると思います」
「そうだな、その通りだ」と言ってニヤリと笑い、その場を去っていきました。
「お兄様は酷薄な方ですから、この失態の責任を取れと自害を強要される可能性があったわ。とりあえず部下たちに責任を負わせて罪を逃れなきゃ」とエリナ元王妃は呟いた。
しばらくして、パランクから帰ってきた貴族とその配偶者、子供は全員処刑された。
エルザ・リヒトシュタットは「お願いだからエリナ様に連絡を取ってちょうだい!きっと助けてくれるはず!」と叫びながら処刑された。
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明日で本編は最後です。その後閉話が2話続きます。