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第25話 パランク戦争とパランク王国王宮

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 アッピア侯爵軍が進攻していることは宮廷貴族たちに衝撃を与えた。これはどういうことかと混乱したが、とりあえず軍を差し向けることにした。

 形式上、6個軍団は王の指揮下にあることになっており、南部の3個軍団に攻撃命令を出すため使者を送ったが帰ってこず、情報も入ってこなかった。

 王家の持つ情報機関の幹部たちはすでに姿を消しており、やむなく町の商人たちを呼びつけ情報を集めさせた。

 

 情報は錯綜しており、エリトリア軍が侵攻しているだの、リオン侯爵が討ち取られただのありえない情報が飛び交っていた。

 とりあえず北部の3個軍団を首都に呼び集めるため、命令を出したが、それに応じたのは、首都にある第1軍団と北東部に駐屯する第2軍団だけだった。

 この二つの軍団も将校クラスが逃亡により不足しており、戦闘力は低下していた。

 なぜなら将校クラスは領地貴族出身者が多く、宮廷貴族は将官クラスか、軍でも事務官が多く、実戦で戦う貴族はほとんどいなかった。


 王妃はアリア王国に軍の派遣を依頼しようとした。しかし、貴族たちは猛反対した。

 敵の状況が分からない状態で、下手にアリア王国から軍を呼び込むとパランクがアリアに占領されかねない。

 そのままアリアに併呑されたら、パランクの宮廷貴族たちは良くて降格されてアリア王国に仕えるか、だいたいの場合は爵位はく奪、最悪の場合反乱の恐れありとして処刑される可能性もあった。

 貴族たちの猛反対に、さすがの王妃もアリア王国軍を呼び込むことをあきらめた。

 「おそらくプルターク伯爵が反乱を起こし、リオン侯爵軍と戦っているのでしょう。きっと我々に味方することにしたに違いありません。彼らにとってリオンをつぶせば、領地貴族たちの代表になれるわけですからな」と王妃の側近たちは言っていた。

 「情報がうまく届かないのは、戦が互角で双方使者を潰しあっているのだと思います。共倒れすればよいし、どちらかが弱ったところを我々が叩き潰してもいいかもしれません」と王宮貴族たちは自分たちにとって都合のいい予想を話し合っていた。


 その都合にいい予想が覆された時には、全てが遅かった。

 「パラス近くにプルターク軍、エリトリアのアッピア軍、国軍の一部が進撃中との情報が入りました」首都に駐屯していた軍の斥候が敵発見の報を王宮に伝えた。

 王宮はパニックとなり、「それは真実か。何かの見間違いではないか」と言って、何度も確認させ、貴重な時間を浪費した。

 このことは王妃には知らせずに、何とかしようと貴族たちは必死に足掻いた。


 プルターク軍とアッピア侯爵軍の合同軍はパランク王国軍とパラスの近くで対戦することになった。

 パランク王国軍の指揮を執るゴール将軍は、パラスの城内に籠城して敵を迎え撃ち、時間を稼いでいるうちにアリア王国軍が救援に来るのを待つ作戦を考えたが、この事態を王妃に言えない貴族たちはこの作戦を拒否、外に出て戦うよう命じた。

 やむなく、外に仮陣地を構築して敵を迎え撃つこととなったが、時間不足により陣地の構築がほとんどできないままに戦うこととなった。


 戦闘は合同軍が攻め込んで始まった。

 まず魔法攻撃でお互い遠距離攻撃を行った。防御魔法もかけていたので、お互い被害が少なく、そのうちお互い互いの魔法使いの魔力が尽きて魔法攻撃は終わった。そのあと、弓矢での攻撃が始まった。

 そして、鎗兵たちの突撃が行われ、一挙に乱戦になった。

 「そらそら、命のいらない者はかかってこい!」アッピア侯爵が先陣を切って突入してきた。ゴール将軍が迎え撃った。

 「久しぶりですな、プルターク前伯爵」ゴールは声をかけた。

 「おう、ゴール将軍か。久しぶりだな。ちょうどいい、相談だが、お前のような優秀な武人を殺すのはもったいない。降伏しろ。部下たちの命も助けるぞ。地位も保証する」とアッピア侯爵はいった。

 「そうはいかないですな。わしも王家の禄を長らく食んでおり、不忠な行為はできません」

 「そういうが、王宮は、アリアのメギツネが牛耳っておるのだろう?王家に忠義を尽くすならメギツネを王家から追い出すことが重要なのではないか?」

 「王妃も王家の一員です。政治のことは私のような軍人が口を出すべきではない。私はただ王家のために戦う存在だ。さあ、そろそろ始めようではないか」

 「この石頭め」

 「軍人に理屈はいらぬ。ただ、戦いをもって意を表すべし」


 二人の戦いは、夕方まで続いた。

 「時間切れだな」

 「そうだな」

 二人はそう言って、軍を引き上げさせた。


 両軍の衝突は激しく、パランク王国軍はその半数が死傷していた。

 負傷した兵士を治療のためパランク市内に入れようとしたら、それも貴族たちに拒否された。

 曰く、負傷した兵士たちを町に入れたら、市民たちが混乱するし、彼らが騒ぎ出せば、事実を王妃に知られてしまうかもしれないので入れることができない、とのことだった。

 「すでに目の前が戦場となっているのに、市民の動揺も何もないだろう。すでに逃げ出すものが多く出ているのに、貴族たちは何を考えているのだ」とゴール将軍はうめいた。

 将軍はやむなく、町の城壁の外にテントを張りそこを野戦病院とした。せめて町から回復のための神官を派遣してほしいと言ったら、それすらも拒否された。

 ゴール将軍は怒りに震えたが、何とか抑えて軍の立て直しに邁進した。

 兵たちには、「味方が駆けつけてくれるまで頑張るんだ。アリア王国軍が来れば敵軍に勝てる。それまで我慢だ」と言って回り、士気の維持に勤めた。

 しかし、3倍以上の敵に対して何日持つか、まして遅れているシケリア軍4個軍団が来たら万事休すだ、ゴール将軍は胃を痛めつつ、表面上は何事もないようつくろっていた。


 宮廷貴族たち逃亡の準備を始めていた。すでに逃げ出したものも多数いた。逃亡先はベネルクス王国だ。そして王妃には何も知らせていなかった。当然アリア王国にも何も伝えていなかった。ゴール将軍たちは彼らが逃げ出すまでの捨て石だった。


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