第3話 伯爵領での生活
毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。
お爺様は王宮と色々交渉しているようです。
ある時、お爺様が「お前この国の王になりたいか?」と聞いてきたので、「別にいい。この国王となるとかなり面倒くさそうだもの。それなら自分で国を作るよ」と言ったら、お爺様はきょとんとした後、破顔一笑して、「そうか自分で国を作るか。お前すごいな。わかった、その方向で話しをすすめるぞ」と言って、肩をたたきました。正直肩が痛かったです。
王宮との話の結果、僕は王位継承権を放棄することとなりました。
15歳までは王子としての身分を持ち、15歳で公爵の爵位を与えられることとなりました。
この国では、王位を継承できなかった王子のたどる道は3つあります。
一つ目は他の貴族の養子になること、これが一番成功者の道です。養子に行った先の貴族としてその家に代々任されている仕事に励み、場合によっては出世も可能ですし、妻も迎えられ子供も儲けることができます。
二つ目は王子としてそのまま残ること。王族として地位と王位継承権が維持されますが、何かの奇跡がない限り、ずっと与えられた王宮の一室で暮らし、仕事もなく、妻帯もできず、老いて死ぬまでそのまま飼い殺しにされます。
気晴らしに外に遊びに行くことも身分上ままならず、王宮の隅で忘れられていく、ある意味一番悲惨な道です。
三つ目は公爵の地位をもらい、臣下に下ること。これが一番いいように思われますが、公爵の地位は三代まで、四代目からは貴族の地位は認められなくなります。
俸給も無役の法衣男爵並みの年1万ブッシュ(前世の価値で言うと1ブッシュ500円ぐらい)で、小さな屋敷が王都郊外に貸し与えられ、貴族の地位がある間はそこで暮らすことになります。
役職は与えられず、登城することもなく、基本放置され、行動は自由です。
1万ブッシュもあれば、余裕に暮らせるだろうって?
平民ならば余裕どころかそこそこぜいたくな暮らしができますが、なんといっても貴族ですから、最低限の体面は守らないとなりません。
まず、最低執事とメイドは雇わなくてはなりません。
屋敷の維持管理も自分持ちです。
そうすると、必要経費だけで、収入の半分以上が飛んでしまいます。
着る物も、家の中だけならともかく、外に出るときはそれなりにいいものを着なくてはなりません。とにかく経費が掛かるのです。
貴族同士の付き合いがある場合は、そこでもお金がかかります。
ただ、付き合っても何の得もない公爵などに当然他の貴族たちには見向きもされず、娘を結婚させて縁を結ぼうという話も出ないため、成り上がりの富裕な平民が、自身の拍付のために娘を嫁に出すことがあるぐらいです。
中には、そんな生活に嫌気がさし、酒や女、博打におぼれて、借金を作ることもありますが、当然方位男爵並みの給与では支払えません。
貸主は王宮に訴えることとなりますが、幾分かは王宮が出してくれますが、あとは泣き寝入りです。
でも悲惨なのは借金をこさえた公爵です。彼は王宮の塔に隔離され、一生をそこで過ごすことになります。ただ、だいたい隔離されて1年かからず亡くなります。おそらく餓死か毒殺されるのでしょう。
僕はこの最後の公爵になる道を選びました。
なんせ行動が自由なので、問題さえ起こさなければ問題ありません。自分のやりたいことができると思い、この道を選びました。
しばらくはこの伯爵領でお世話になることにしました。母は勝手知ったとばかり、自由に過ごしています。母上はかなりおてんばだったらしく、馬に乗って遠乗りをしたり、剣を振り回して、狩りを楽しんでいました。
僕はいとこたちと仲良くなりました。
いとこたちのうち、姉は7歳でマリアと言います。弟はジェームズと言い、僕と同じ5歳です。
僕たちは3人でよく遊びました。木登り、魚釣り、屋敷の側の林の探検などしました。林には、秘密の小屋を作って遊びました。
ピクニックにも行きました。馬車で大きな湖のある場所に行き、3人で泳いだりして遊んだ後、メイドか用意してくれたサンドイッチを食べたりしました。
僕はまるで子供の様に、いや子供なのですが前世の記憶があるので精神年齢はおじいさんなのですが、楽しみました。
勉強もしました。
女神からもらった能力の一つで、知識、技能を身に着けるスピードが人より1000倍速くなる特典です。
伯爵家にある蔵書は片っ端から読み、覚えていきました。お爺様は喜んでいろいろ本を買い与えてくれました。
前世で得た知識もあり、女神の権能もあってかどんどん知識を吸収していきました。前世でこんなに物覚えが良かったらなと少し悔しい思いをしました。
武術の鍛錬もしました。スミス隊長が相手をしてくれました。
彼は、肉体を使って攻撃する武闘術と鎗術の使い手で、領内だけでなく、この国でも有数の使い手であるそうです。
僕は彼からどんどん技術を吸収していきました。
前世で柔道をやっていたこともあり、すぐに近接戦ではスミス隊長に勝るとも劣らないレベルに達しました。
槍術もどんどん習熟していき、その速さはスミス隊長も舌を巻くほどで、「王家はとんでもない英才を手放したものですな」と祖父に言っていました。
魔法は、伯爵領軍の魔法部隊長、テルミヤさんに教えてもらいました。テルミヤさんは若くて美しい女性ですが、実はサキュバスで、なんとお爺様と一緒にパーティを組んで冒険者をしていたそうです。年は100歳を超えていて、お爺様の愛人でもあるそうです。
「私とジョンとミーア、カノンとカーヤは5人でパーティを組んでいて、いろいろな冒険をしたんだよ」とテルミヤさんは言います。
ジョンはお爺様で、ミーアはおばあ様、カノンは伯爵家の家宰で、カーヤさんは伯爵領の教区長を務める大司祭です。ちなみに全員がお爺様と深い仲で、形式上はおばあ様以外は側室になるそうです。
男性であるカノンさんも例外ではなく、昔はかなりの美男子だったらしく、今でもたまに二人で書斎にこもって何かしています。極秘の仕事の要件だということで、他者を遠ざけていますが、僕が木にのぼって、自作の望遠鏡で部屋をのぞくと、二人で何かをしていました。お爺様そっちの方もいけたのですね、と感心半分、呆れ半分です。
母上の兄の伯父はこの伯爵家の跡取りで、伯爵領を切り盛りしていました。
伯父上はとても僕にやさしく、いろいろと気を使ってくれました。
冗談なのか、気まぐれなのかわかりませんが、領内の書類を見せてもらったことがありました。その時に、数字の間違いを指摘したら、急に真顔になって、いろいろ書類を持ってきてみてくれと言ってきました。
数字のチェックをして、間違いを指摘していきました。伯父上はそれに気をよくしたらしく更にいろいろ相談するようになりました。
ある時は、水路をある場所に通したいが、広い道路をまたがなくてはならないらしく、道を切って橋を作るとお金がかなり掛かるうえ、道幅を維持することが技術的に難しいことが問題となっていることについて、土地の傾斜具合と土地の状況を見て、地下に水道を掘り、道の下を通した後、荒れ地に水道からの水を貯める池を作り、そこに水をためた後、再び水路に流す方法を提案しました。
工事について、技術的困難ではないかと聞かれたので、水魔法使いと土魔法使いを使って、ため池と水道を作ってから、水をそちらに流したらうまくいくのではないと言ったら、伯父は何やら考え込んで、しばらくしてから「うん、何とかなりそうだ」と言って、部屋を飛び出していきました。
後で、「フィル、うまくいったよ。すごいな君は」とほめられました。ちなみにフィルとは僕のことです。
伯母は近隣の子爵家の娘で母の幼馴染らしく、僕のことを子供たち同様可愛がってくれました。「アリスは昔からおてんばでね。私もあちこち連れまわされた者よ」と言って、昔を思い出すような目で僕に言いました。アリスというのは母のことです。
「一度なんか、夜中に私の部屋の窓をたたく音が聞こえて、こわごわとそちらを見るとアリスがニコニコしながら立っているの。急いで窓を開けると、星がきれいだから一緒に見に行こうと、無理やり着替えさせられ、山の上に連れていかれたわ。最初は山の木々が襲ってきそうで怖かったのだけど、山の上に出ると一面の星空で感動したわ。そこで甘く焼いたクッキーと冷めたお茶をいただいたのだけど、余りのおいしさに一生忘れられない味になったわ」と昔話をしてくれました。
そんな楽しい毎日を過ごしていたら、たちまち7年の月日がたち僕は12歳になりました。
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ご覧いただける方があまりいないようです。正直残念ですが、私のレベルではこんなものかなと感じています。そんな文才の無い私ですが、お読みいただけている読者の方には、本当に感謝です。