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閉話3 パランクでの両派閥

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

パランク王国王宮にて

 「南部の奴ら、私に逆らうなんて何て身の程知らずなのかしら!」第1王妃であるエレナ王妃は美しい顔をゆがめて、イライラしながらヒステリックに叫んだ。

 宮廷貴族である彼女の側近たちはまあ、そうだろうなと思いながら「御意」と言った。

 「王妃様、いっそのこと南部の奴らを成敗してはいかがでしょうか」アリア王国伯爵の娘で、エレナ王妃のお世話役兼相談役を務めているエルザ・リヒトシュタットはにこやかに進言した。

 お前余計なことを、と側近たちは思いながら何も言えなかった。余計なことを言って勘気を被り、側近から外されることを彼らは恐れていた。


 実際のところ、宮廷貴族も一枚岩ではなかった。

 宮廷貴族は国の諸政策を司る役人であり、領地貴族は地方の領地を支配し、兵役や労役などで王に仕えるのが任務とされていた。

 そのため、宮廷貴族は領地貴族たちの、国より領地という思想により宮廷に従わなかったり、理由をつけて仕事を拒否したりする不服従に悩み、領地貴族を嫌っていた。

 領地貴族は無理難題ばかり押し付けようとする宮廷貴族に反感を持っていた。

 そのため、宮廷貴族と領地貴族と仲が悪いことになっていた。しかし、その中でも強弱があった。


 なぜならば、宮廷貴族の中には領地貴族から妻をもらったり、姉妹や娘を妻にやったりして、比較的友好な関係を築いている者もいた。特に能力の高いと認められた者には、上級の領地貴族からいろいろなアプローチがあり、妻を斡旋されたり、役職の面でサポートがあったりした。

 更には領地貴族の親を持ち、能力を認められたり、また婿養子などで宮廷に出仕している者もおり、総じて領地貴族と緊密な関係を築いていた。

 なぜこのようなことが行われたかというと、領地貴族としては宮廷の情報を手に入れたり、何かあった不都合があった時の手助けが期待できるし、宮廷貴族は領地貴族と縁組すれば業務の円滑な執行が可能であるし、また物質的にも領地貴族からの援助が期待できるからだ。


 宮廷貴族は俸給にて生活をしており、その俸給は家禄と業務給にて構成されているが家禄はパランク王国が成立してから変わっていない。

 業務給はごくまれに見直しが入るが、上級の職以外ほとんど上げられることはない。

 経済の発展で物価は徐々に上昇しており、それだけ宮廷貴族の給与は目減りしていっていることになる。

 更に宮廷貴族は、宮廷に出仕する関係で服装にも気を遣わなければならないし、社交も行わなければならない。

 必要なものはすべて買い求めなくてはならないためすべてお金が必要である。

よって宮廷貴族の生活は下級になればなるほど貧しいものであった。


 領地貴族の収入はよっぽど馬鹿なことをしなければ基本生活に困らないだけの収益が挙げられた。なぜなら、年貢となる農作物は商品経済の発展とともに商品価値が上がっていくので、物価が上がってもかえって農作物の値段が上がり、収益が増すことになる。更に領地にいれば普段着にこだわる必要もない。

 社交も必要ないし、食べるものは自活できる。つまりほとんどお金のかからない生活が可能なうえに収入も期待できるので、かなり豊かであった。


 領地貴族と関係のある宮廷貴族には、地元の農作物や商品が度々送られて、更には金銭的な援助までもらえる場合もあり、貧しい宮廷貴族にとっては、生きていく上での生命線となっている場合もあった。


 しかしながら王妃の側近として出仕している者は、そのような縁がなく、能力的にも疑問符がつけられるような者達で、何とか起死回生を図りたいと王妃に近づいた者が多く、ここで王妃に捨てられては、生きていけないものが多くいた。


 「そうね、でも軍を起こすには王の命令が必要よね。あいつ第二王子討伐の軍を起こせと言った時も、頑なに拒否するのよね」王妃はイライラしながら言葉強めに言った。

 「第三王子に王位を譲らせましょう。そうすれば王妃様の思うがまま」エルザは言った。

 「あいつ、いくら言っても王位を譲ろうとしないのよね。いっそ処分しようかと思ったのだけど側近たちが反対するのよ。まあ、確かに宮廷貴族の中には第二王子派に内通している者もいるし、処分がばれたら良い攻撃理由になってしまうものね」とため息をついた。


 王妃は決して優秀ではなかったが、そのぐらいは理解できた。

 処分して子供を王位につけたところで、もし暗殺の証拠を握られそれを公表された場合、王位の正統性が失われてしまう。そうすれば、外国からも非難され、母国であるアリア王国の協力も難しくなり、領地貴族たちの勢いも増して、最悪国から追い出されてしまうかもしれない。

 アリア王国に帰っても、肩身の狭い思いで、ひっそりと生きなくてはならない。

 そんなのは嫌だ、あんな男に抱かれて子供まで生んだんだ、せめてこれからは好きに生きなくては人生大損だ、と王妃は思っていた。

 

 実際、彼女は自分の配下の能力を信用していなかった。

 第二王子派の黙認があったのに、たった5歳の第一皇子を殺しそこなった上、母親の側妃とともに伯爵の領地に逃してしまった。かなりの金を使ったにもかかわらずだ。

 まあ、第一皇子は国外に逃げてしまったので、これ以上はこの国と関わることは難しいだろうし、とりあえず良しとしよう、しかし本当に役立たずだ、と王妃は考えていた。


 ちなみにフィリップがシケリアに公国を築いたことは秘密にされていた。王妃の勘気に触れることが間違いないからだ。

 アリア王国も王妃の性格が分かっているのだろう、情報を流さないにしているようだ。下手に知らせると暴発して、取り返しのつかないことをやりかねないと思われていたからだ。アリア王国としてもそれはまずいと思っているようだ。

 

 「王妃様、焦っても仕方がありません。気晴らしにパーティでも開きましょう。そうすれば何かいい案が浮かぶかもしれませんよ」とエルザが言った。

 「そうね、それがいいわ」

 おいおいまたパーティか、金がかかって仕方がない、しかし出ないわけにはいかないよなと側近たちは心の中でため息をつきながら、「それで気早速準備をいたしましょう」と言った。


リオン侯爵領屋敷にて

 リオン侯爵はため息をついていた。

なぜなら自分たちの旗頭である第二王子が寝たきりになってしまっていたからだ。多くの医者を呼び寄せて容体を見せたが改善せず、筆頭医師からは万全の医療体制を引いている現在の状況でも、もって数年だろうと言われていた。

 このままでは、第三王子派に負けてしまう。そんなことになれば宮廷貴族たちに好き勝手されてしまうだけでなく、リオン侯爵家を筆頭に派閥の領地貴族たちも取り潰しや領地を削られることになるだろう。それだけは避けねばならない、そう考えた侯爵は、頭を悩ましていた。

 第一皇子を取り込めれば一番なのだが、王妃の暗殺計画を黙認したばかりか、領地貴族の中には加担している者もいるから、プルターク伯爵もかなり警戒していて一切の勧誘に対して拒否している。

 

 そういえば、プルターク伯爵には息子がいたはず。たしか、隣国エリトリア王の養女を妻にしていると聞いた。きっと伯爵領が攻撃を受けた時にエリトリアの援助を期待して婚姻を結んだのだろう。

 ならば、わしも娘か孫を第一皇子とプルターク伯爵の息子に妻として与えて、同盟を結んではどうだろうか、こちらが頭を下げるようで癪ではあるが、背に腹は代えられない。

 とりあえず第一皇子に王位を継がせ、わしの娘か孫との間の子を皇太子にしてもらえば、とりあえず我々の地位は保証される。

 プルタークも辺境伯の地位と中央での利権や官職を分けてやればいいだろう。ライバルを作るようだが、亡ぶよりはましだ。

 とりあえず、その方向で計画を練ることにした。



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