第20話 シケリア統治と周辺地域の平定
毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。
とりあえず、シケリアに行って、統治をおこなわなければなりません。
その前に、お爺様と相談して、テルミヤさん、メリッサさん、リーニャさんの教会の階位を上げるようにしました。
僕とお爺様、そしてエトルリア王の依頼であれば、教会も断れないようです。
テルミヤさんとメリッサさんは大司祭から司教に、リーニャさんは司祭から大司祭に上がりました。
テルミヤさんは北部州全体を仕切る教会の長になりました。「大司祭が長かったからね~。まあ、いいんじゃない」と言ってあっさりと階位を受け取っていました。
メリッサさんはびっくりして、「えっ司教だって!いきなり2階級特進なんて」と言って驚いていました。シケリアは国なので、最高位は大司教なのですが、さすがに3階級特進は協会から難色を示されたようです。
リーニャさんは大司祭になりました。
「テルミヤさんの代 わりにプルターク領の最高司祭になることになったの。まあ、かなり昇進が早いけど、ジェームズと結婚したからね。一生をプルターク領で過ごすつもりだからまあ、これで打ち止めでしょう」とリーニャさんはニコニコしながら言いました。
ジェームズとは仲良くやっているようです。リーニャさんはこの結婚がすごくうれしそうです。好きな男と一緒になれたのもありますが、リーニャさんは19歳なので、結婚適齢期ぎりぎりだということもあるのかもしれません。
プリシラさんがベッドの中で僕にそんなことを言っていました。
教会の階位昇任式が終わった後、シケリアに向かいました。
僕の臣下はアッピア家出身者とプルターク領出身者、プリンディジ伯爵家出身者にターラント準伯爵家に仕えていた者で構成されています。
更にシケリア王に仕えていたものの中で使えそうなもの達を採用して臣下にしています。
そういうわけで、僕の臣下はある意味ばらばらの地域出身になっています。
アッピア、ブリンディジ並びターラント出身者は財務、軍務についてもらっています。
シケリア出身者には、内政とシケリア内での交渉事をお願いしています。
プルターク出身者は王宮内の奥向きの仕事や直属の近衛などをお願いしています。
一番信用できるからね。
シケリアとプリンディシ海軍は統一としてシケリア公国海軍に編成しなおしています。
シケリア支配のための組織化は順調に進んでいますが、問題は南部に多い土豪たちの扱いです。
シケリアで貴族だったものは、シケリアに残る者、エトルリアで貴族として王宮に仕える者と選択肢を与えたのですが、全員貴族の地位を捨て、その土地に生きることを希望しています。
貴族としての地位より生まれ育った土地が大切だそうです。
あと、僕に直接仕えることも拒否されました。エリトリア王には従ったが、あなたを王とは認めてない。あなたの領分では自由にやっていいが、我々には手を出すなということだそうです。
彼らをどう扱うか、悩みどころです。
下手に対応すると反乱を起こしそうです。土地に密着しているので反乱が起きれば、住民も巻き込んでかなりてこずる可能性があります。ゲリラ戦でもやられたらかなりまずいです。
いろいろ考えた挙句に、一人で悩んでいても仕方がない。ここは年長のプリシラさんに相談しようと考えました。えっ、お前幾つだって?確かに前世も入れれば70歳近いですが、この世界のことはまだよくわかっていないことが多いです。
それに一人で悩むより他人に相談した方が、考えがまとまり、良いアイディアが浮かびやすいものです。
そういうわけで、プリシラさんのところに行くと、メリッサさんと一緒にお茶を飲んでいました。二人はりとも仲がいいです。
「フィンどうしたの」とプリシラさんが聞いてきました。
「ちょっと相談事があって」
「私席を外したほうがいいかしら」メリッサさんが言ったのですが、「いや、メリッサさんも聞いてもらって、何かいい考えがあれば教えて欲しい」と僕は言いました。
三人寄れば文殊の知恵と言いますしね。
それで、シケリアの土豪たちをどう対応すべきか相談しました。
プリシラさんとメリッサさんは僕の相談を受けてきょとんとした顔をしていました。
そして、ニコッと笑うと「私たちに任せてよ」と二人が口をそろえて言いました。
どうするの?と聞いたら「秘密」と言われてしまいました。
よくわかりませんが、二人に任せることにしました。
僕は先に自分で出来ることから始めました。まず海軍を使って、周辺の島々を制圧することとしました。
訓練も兼ねてですが、次々と周りの島々を制圧していきました。
特に手痛い抵抗にあうこともなく、島の領主たちは降伏し、僕に仕えることを約束しました。とりあえず人質として領主の子供を預かりました。
最後に南のカルタゴに寄りました。カルタゴ領主カリレローニ・シケリアの歓待を受け、その子供たちを預かって、帰路につきました。
プリシラとメリッサ
プリシラとメリッサはとても仲がいい友達になっていた。最初に会った時男の趣味の問題でケンカになったが、お互いの実力を認め合い、友人となった。
そしていろいろな話をしているうちに、「えっ、プリシラってシケリアの出身なの!」とメリッサは驚いてプリシラに聞いた。
「私自身はシケリア出身ではない。父がここの出身。父の兄がサルソという場所にいる」
「プリシラ、もしかして伯父さんの名前はカルパット・サルソと言わない?」
「その通り、父は商人だから名字は名乗っていない」
「その人、実家の親戚だわ」メリッサは驚いていった。
「ということは私はメリッサは親戚?」
「まあ、シケリアの土豪は皆どこかで血がつながっているからね」と苦笑しました。
そんな会話をしていて、ますます仲良くなったのですが、そんな時にフィリップから相談を受けた。
「私はフィルの助けになりたい。伯父さんに相談に行く」
「私も司教にしてもらった恩義があるし、母のことも許してもらっている。まあ、手助けする義理はあるよね」そう言って、二人は各々動き始めまた。
プリシラとサルソ
プリシラはサルソの村までやってきました。
「すみません、プリシラと言いますが、カルパット伯父さんに会いたいのですが」と村の入り口で警備の村人に尋ねました。
「あれまあ、ブラトの娘のプリシラでねえか。久しぶりだなあ。いまサルソ様呼ぶから待っとれ」と村人は言って、カルパット・サルソを探しに行きました。
しばらくすると、「プリシラか。久しぶりだな、5年ぶりか」とカルパット伯父がやってきて、笑顔でいいました。
「冒険者になってすぐの時、仕事でシケリアを訪ねた時以来。伯父さんお久しぶり。この前は勝手に名前を使ってごめんなさい」
「ああ、この前の戦の時か。プリシラが説得した相手から問い合わせが来ていたぞ。確かに家の姪だと答えておいた。とりあえず立ち話もなんだ、中へ入れ」とプリシラを村の中に導き入れました。
プリシラが家に行くと、いとこたちがいました。
「プリシラ久しぶりだなあ」と伯父の長男のボルケーノが言いました。
「プリシラ姉ちゃん、久しぶり」次女のカリシラが抱き着いてきました。
「あれ、長女のアミラは?」プリシラが訪ねると、カルパット伯父さんは、「あいつは嫁に行って、向こうのカルタ村にいるぞ」と言いました。そして「お前はまだ結婚せんのか。そろそろ年齢的に……」
「あなた!女の子に何言っているの!」と伯父さんの奥さんのカミラが言いました。
「アッ伯父さん、私結婚した」とプリシラは照れたように言いました。
「そうか、それはおめでとう。相手は誰なんだ」おじさんは興味深げに聞いてきました。
「フィリップ・プリンディジ。今度このシケリアを治めることになった人、私はその人の側室として嫁いでいる」そう言って「叔父さんに相談。旦那様、土豪たちの扱いに苦慮しているらしい。手助けしてほしい」と頼んだ。
カルパット伯父さんと長男のボルケーノは顔を見合わせて相談しました。
「我々はエトルリアに降伏したが、フィリップ・プリンディジに支配されるいわれはないが……」
「だけどプリシラの婿だぜ。うちの親戚だぞ」
「血縁は重視するのが我々の掟だ。とりあえず親戚たちに相談してみるか」
「それがいい、親父、今度の会合は何時だっけ」
「5日後だ。プリシラも参加して、皆にお願いしてみろ」
「そうする。伯父さんありがとう」
「姪っ子の頼みじゃ仕方がない。それまでここでゆっくりしていけ」
「私魔法使える。何か役に立つ」
「魔法はやめろ。この前来た時、お前の魔法でしばらく鶏が卵を産まなくなった」ボルケーノは言った。
「5年前よりうまくなった。大丈夫」プリシラは胸を張っていった。
「5年前も同じようなこと言ってなかったか?」と伯父さんはぼやいた。
メリッサとカッティ
メリッサはカッティ村を訪ねた。村の入り口で警備をしている村人に声をかけた。
「お久しぶりです。ブレロさん」
「あれまあ、メリッサじゃねえか。久しぶりだなあ。母親に会いに来たのか」
「母にもだけど、伯父さんにお願いがあってきたの」
「まあ、へいれ。いま領主様呼んでくるでな」
しばらくすると、アルマーニ・カッティ伯父さんと母親のメアリーがやってきた。
「メリッサ!」と母親が抱き着いてきた。「お母さん!」と抱き返した。
しばらく二人は固く抱擁しあった。
「メリッサほんと何年ぶりだ。元気にしていたか」おじさんは涙ぐんで尋ねた。
「いま、フィリップ・プリンディジの奥さんのもとで働いているわ。ついでにこのシケリアの司教になったの」
「なんと、司教様になったのか。すごい出世だ。それでプリンディジの奥さんのもとで働いているって?」
「うん、まあ形は侍女なんだけど事実上は友人かな」
「そうか、まあ楽しくやっているならいいが」
「伯父さん、実はお願いがあってきたの」
「なんだい?」
「フィリップの力になりたいの。司教に慣れたのもあいつのおかげだし、お母さんの件も了解してくれたの。恩義があるのよ」
「恩義か」と伯父さんはじっとメリッサの顔を見て、「お前惚れたな?」と突然言った。
「ちょっと、惚れたなんて!私子供は趣味じゃないし、でも優しいし、話していて気が合うし、奥さんとも友人になったし、どうしてもと言われたら考えなくもないかも……何を言わせるの!」とメリッサは顔を真っ赤にして怒った。
「あらあらまあまあ」メアリー母さんはニコニコして聞いているし、「うんうん」と納得しているカッティ伯父さんがいた。
「とにかく、フィルの助けになりたいの。お願い協力して」とメリッサは言った。
「5日後に親戚たちと会合があるからそこで訴えてはどうか。皆が賛成ならば我々はフィリップ・プリンディジの支配下に入ろう」と言った。
「ありがとう、伯父さん」そう言って、さてどう説得しようかと頭を悩ませた。
シケリア親族会議にて
シケリアの土豪たちは何百年もこの地にあって、土地を守ってきた。
そしてその中で、土豪たちは婚姻や養子を通して血のつながりを強めてきた。
この親族会議はシケリアの土豪と呼ばれる者達が月に一度集まり、お互いのいさかいや村々で共通する問題の解決のため話し合いを行っていた。
そしてその場には、プリシラとメリッサもいた。
「メリッサどうだった?」プリシラが訪ねると「伯父さんは了解してくれたわ。あなたの方はどうなの?」とメリッサは答えた。
「うちも大丈夫」プリシラは答えた。
「とりあえず、作戦としては賛同者を増やすしかないわ。一応親戚何人かには話を通しておいたわ。「メリッサが言うならまあいいか」と了承してくれたわ。プリシラの方はどうなの?」とメリッサはプリシラに尋ねた。
「とりあえずいとこの嫁ぎ先にはお願いしておいた。でも私はこの会議にかける」とプリシラは胸を張っていった。
「作戦はあるの?」
「ない!」
「はあ、あんたね~」
「真摯に訴えかけるだけ。大丈夫、ここの人達は情にもろい」
「そうだけど……」
「とりあえず、私が訴える。あとはメリッサがホローして」
「あんた面倒なところ私に押し付けるつもりでしょう!」
「おい、そろそろ始めるぞ。うん?君は誰だい?」カッティ伯父さんが訪ねた。
「私はプリシラ、カルパット・サルソの弟の娘」
「なんだ、サルソのところのブラトの娘か。ブラトとは幼馴染だからな。あいつは元気にしているか?」
「うん、トリノという町で商売している」
「あいつは次男だし、広い世界に出たいと言っていたからな。元気にしているなら何よりだ」と言って、「さあ、プリシラも会議が始まるぞ。お前も何かみんなに言いたいことがあるんだろ。早く来い」と言って、会議場に入れてくれた。
会議が始まった。土地と水の問題が最初に議題だった。
「土地と水が足らんよ。だから次男以下は村を出て行かねばならん。なんとかならんかな」
「そうはいっても、川の水も限界があるし、畑を作ろうにも土地がないからな」
「山を切り開いてはどうか」
「山だと水の問題がある。それに下手に切り開くと土砂崩れを起こす可能性がある。何にしろ難しいな」
「フィルに尋ねてみる!」突然プリシラが言った。
「娘さん、あんたは……」
「ああ、俺の弟の娘だ」カルパット・サルソは言った。
「なんだ、あんたの姪か、それでフィルって誰だい」土豪の一人が聞いた。
「私の旦那さん、そしてシケリア公国の公王」
「えっ、公王の妻か!」皆が驚いた。
「フィルはかなりの魔法の使い手で、フローリア大学で学位も持っている天才、絶対にいいアイディアを出してくれる」プリシラは一生懸命にしゃべった。
「その問題を解決するから公王として認めて、従属しろというわけか?」
「そう、フィルは良い奴。絶対にいい領主になる」
みんながやがやと話し始めた。
「ごめんなさい、聞いてください」今度はメリッサが話し始めた。
「あんたはアルマーニ・カッティのところの姪じゃないか!」
「カッティのところの姪って」
「ほら、シケリア王のお手付きになった妹の娘だ」
「そうすると、王の血筋か」
「私からもお願いです。私もフィルの関係者です。どうかフィルを認めて上げてください。皆さんが抱える問題もフィルなら解決できると思います」
みんながやがやと話し始めた。
「うちの妹も王の側室から戻ってきたぞ」
「うちの娘もだ」
「あの王は女好きだったからな。姉妹や娘を召し上げられたものが多かったからな」
「正直不満はあった。しかし、あの王はシケリア人だったからな。外国人の王は認められないだろう」
「しかし、我らが血族の娘を二人も妻にしているのだぞ。我らが掟では、婿は一族に組み入れることとなっている」
シケリアの土豪には旅人を娘婿にとって、新しい知識を得て発展したという歴史があり、婿を取ったり、養子にした場合、血族の一員として認めることになっていた。
「わしらカッティの縁者は公王を血縁として認める」十人以上の土豪たちが立ち上がり言った。
「サルソの縁者も公王を血縁として認める」同様にかなりの数の土豪たちが立ち上がっていった。
「カッティとサルソが認めたんだ。皆はどうか」
「我々の掟の乗っ取って、血族と認めるのか妥当だろう。しかし、公王はこの水と土地の問題を本当に解決できるのか」
「この問題を解決出来たら従ってもいい」
「皆も同じ意見か」
土豪たちは皆うなずいた。
「わかった。フィルに言って、何とかする」プリシラは言った。
そのあと、いくつかの議題をこなして、宴会が行われた。
「サルソのところの娘が公王の妻とはな。確か公王って12歳だよな」親戚の土豪から質問された。
「そう、好きになって関係をもって、結婚した」
「こりゃ熱いな、カッティのところもそうなのか」
「いえ、私は……」
その時プリシラが肩をつかんで、「フィルの奥さんになるの嫌?」
「嫌じゃないけど……」
「私メリッサと一緒がいい」
「ええと……」
「おいおい、お前たちの旦那モテモテだな。こりゃ参った」とその土豪は離れていった。
「こんど、フィルのところに戻ったら、一緒にしよう。やってしまえばフィルは絶対に責任取る」
「そんな、脅かす真似は……」
「正室のマリアもいい子、3人でフィルを支えよう」
「うー、わかった。私も腹を決める」
女たちの会話はまとまった。
僕、フィリップ・プリンディジは船の上で、ブルっと震えが来ました。風邪かなと思いましたが、そんな感じではありません。さて、何だったのだろうと、首をかしげました。
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