第13話 南エリトリアでの戦い
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僕は突貫で僕たちが乗ってきた鉄の車を改造し、5両ほど車両を繋げました。一両に100名が乗れる仕様で、アッピア領軍を乗せてまず、指揮権を与えられた軍団に赴き、南のブリンディジに向かうよう命じました。
急ぐかどうか尋ねられたので、通常の進軍で構わないことを伝えました。
ジェームズから「急がせなくていいのか」と尋ねられたので、「作戦があるんだ」と言って、ジェームズに説明しました。
ジェームズは訝し気な顔をして、「それうまくいくのか」と言って怪しんでいました。
実は僕には女神から与えられた権能の最後の一つは、未来予知なのです。そんな遠くの未来まではわかりませんが、僕がこの行動をとった時の相手の行動というのが、何十パターンも一瞬でシミュレートとでき、最適解を求めることができます。何でしょう、すごいチートな能力だと思います。
この能力を使って、この方法が一番良いと判断しました。
さて、出発です。一路ターラントに向かいます。ブリンディジではありません。
鉄の車は魔法でどんどん進んでいき、朝出発して、昼にはターラントに着きました。
そのまま町の門を突き破り、街中に突入します。
唖然とする敵の守備兵を、僕らは次々と倒していきます。まずは指揮官らしき軍人を狙います。これは気配察知で見つけました。町の政庁に彼らはいたので、僕とジェームズで乗り込み、一部を除いて全員やっつけました。
プリシラさん達は率いていた兵士とともに市内にいる敵兵に対処してもらいました。そのあと僕らも合流し、混乱する守備兵たちを次々と倒していきました。2000あまりの守備兵はあっという間に死ぬか捕虜になるかしました。
ターラントの港にいた敵の艦艇も拿捕し、船員たちを捕虜にしました。
捕虜になっていたターラント準伯爵の兵士たちを解放し、しばしの休息を与えました。
そのうちに、先にターラントに向かうよう命じておいた、南部に駐屯しているアッピア陸軍と合流しました。
その後、旧ターラント準伯爵軍とアッピア軍を戦力に加え、町に守備兵として500あまりの兵を残して、再び鉄の車で進撃です。今度は街道上を進むことにしました。
ブリンディジ包囲軍幕舎にて
シケリア軍指揮官のペルモテ・タッタートは悩んでいた。
ターラントから逃げてきた兵からターラントが襲撃され、あっという間に陥落したことを知らせてきたからだ。さらに偵察隊から敵一個軍団が南に向かって進撃中との情報が上がっていた。
おそらくあと一週間もあればブリンディジは陥落するだろう。しかしそれまでに、新手の軍団がやってくるのは確実だ。更にターラントを落とした敵も北上してくるのは間違いない。
味方の情報だと、ターラントを落とした敵軍の兵力は1万人を下らないということなので、このままだと南北とブリンディジの街の三方から包囲攻撃されることは確実だ。
わが軍の兵力は2万程度、対する相手はブリンディジにこもる兵が2、3千ばかり、北からやってくる軍団が1万以上、ターラントからは守備兵を置いても8千は来るだろう。
兵力的には互角でも包囲されてしまえば、こちらがかなり不利だ。
兵たちの動揺も激しい。なんせ帰路をふさがれてしまったのだから。
このままでは負ける可能性が高い。ならばどうするか。
私は決断を下した。とりあえず、惜しいがブリンディジはあきらめる。急遽南下し、ターラントの奪還を目指す。ターラントの敵軍だけならこちらが倍以上の兵力がある。
おそらく攻城戦で、城壁もボロボロだ。敵兵力も半分程度だし勝てる可能性が高い。そしてターラントの壁を住民を使ってと掴んでなおさせれば互角の戦いが可能だ。何なら住民を壁にしばりつけるのもいいかもしれない。そうすれば敵もひるむだろう。最悪、ターラントから母国に引き揚げればよい。
私はそう決断すると、兵たちに余分な荷物は捨てさせ、街道に沿って大至急ターラントに向かうことを命じた。
ブリンディジ行鉄の車内にて
鉄の車はすごいスピードで進みます。街道ですから整地する必要もありません。
とにかく飛ばします。新幹線並みのスピードが出ているのではないでしょうか。
「すごい音だな」とジェームズは言います。まあ、風魔法でいろいろ制御しているので、そんなには揺れないのですが、空気抵抗がすごくて音が出ているのでしょう。
僕はわずかに見える細い窓から正面を見ながら言いました。
「もうすぐブリンディジだ。体はしっかり壁に固定しているか確認して」兵たちは衝撃に備えて壁にあるロープで体を固定するよう命じていましたが、再度確認を命じました。その命令を出してほんの数分後、すごい衝撃が僕らを襲いました。僕は風魔法と火魔法の制御に必死で取り組み、障害物によって車が横転したり、道を外れたりしないようにしました。
障害物がなくなると、その場で車を停止し、周りの様子を見ました。
そこは地獄でした。あたり一面に肉片が飛び散り、運良く生きている者も体の一部か欠けていたり、吹き飛ばされた衝撃で地面にたたきつけられ、骨折か内臓破裂で虫の息です。
兵たちを周りに散開させ、残存している敵兵に攻撃を仕掛けました。
敵は茫然自失していて、抵抗する気がないのか、次々と打ち取られていきました。
敵兵のうち、意識を取り戻したものは降伏し、戦闘はあっさりと終了しました。
シケリア軍指揮官のペルモテ・タッタートの最後
私は兵たちを取りまとめて、街道を急いでいた。2万の兵たちが駆け足で、街道を進んでいった。我々幹部は接収した馬車に乗って先を急いでいた。
すると、すごい音ともに、鉄の槍のようなものが我々を襲ってきた。すごい速さで次々と我々を粉砕し、吹き飛ばしたりして進んできた。逃げようと思った時には、もう眼前に迫っていた。
こんな戦い方など貴族のやり方ではない、こんなことは認めない、と思いながら私は衝撃を受け、意識を失った。
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