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白虎様の妻になりました  作者: 海野雫
第5章 絆

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第5章 絆②

「そうか、無事に事が済んだか。」


先日の邪神の抹消について報告するため、四神達が都に集まっていた。平城の国への邪神の襲撃を止めることができ、彪人は安心した様子だった。いつものように笏の奥では笑顔を作っている。


「どうやって刺客を見つけ出したのじゃ?」


彪人が翔斗に問う。


「彪人様から、茉莉が狙われていると聞き、彼女に伝えました。茉莉は自分が囮になると提案し、刺客を誘き出すことができました。」

「人質になるのも茉莉の提案か?」

「はい。ですが、私は彼女を人質にさせるつもりはありませんでした。結果的に刺客に奪われてしまいましたが・・・」


翔斗は俯き、拳を握りしめた。


「そうか。しかし結果的に、そなたの花嫁のおかげで邪神を抹消することができた。礼を言うぞ。」


彪人は頭を下げた。


「彪人陛下、おやめください。私達だけで成し得たことではありません。ここにいる皆が揃ったからこそ邪神を抹消できたのです。」


翔斗は隣に座る勇輝達を見る。


「この国、そして平城の国を守るのは我々四神の役目ですからね。」


勇輝は笑顔で彪人に言った。事がうまくいったのは、ここにいる4人の絆が強かったからだ。小さい頃から共に学び、稽古を積んできた仲間。同じ信念を共有し、お互いを信頼しているからこそできたのだ。


「邪神がいなくなったことで、しばらくは安寧が訪れるだろう。」


彪人は笏を口に添えて笑った。それを聞いて四神も安堵の表情を見せた。


「陛下、よろしいでしょうか。」


翔斗が口を挟んだ。


「私は常々、西の地の民が笑顔で平和に暮らせるよう尽力してまいりました。茉莉もその民の笑顔を守りたいと言い、今回の作戦を考えてくれました。夫婦共々、この国の安寧を守るためにさらに尽力してまいりたいと思っております。」


深々と頭を下げる。突然、笑い声が上がった。何事かと頭を上げると、全員が翔斗を見て笑っていた。


「え??」


翔斗はポカンと口を開けた。


「お前、今更何を言ってるんだ。我々は皆同じ気持ちで動いているだろう?」


勇輝が翔斗の背中を叩く。


「い、いや・・・改めて思ったのだが・・・」


照れくさそうに翔斗が答えると、彪人が「よいよい」と言いながら皆を沈めた。


「そなたの生真面目なところ、余は好きじゃよ。」


笑いながら続ける。


「皆の思いは同じで安堵した。これからもこの国、そして平城の国の平和のために尽くしてくれぬか?」

「「もちろんでございます!」」


四神は頭を下げ、国の平和を願った。その後、翔斗は4人からまだ結婚もしていないのに「夫婦共々」と言ったことでからかわれ続けたのだった。


都から戻ると、茉莉が翔斗の帰りを待っていた。


「おかえりなさいませ。」


小走りで翔斗に駆け寄ってくる。今までこんなことはなかったので、何かあったのかと心配になった。


「どうかしたのか?」


不安そうな顔で尋ねる翔斗に、茉莉は笑顔で「おやつを作ったので一緒に食べませんか?」と言った。


茉莉はここに来る前は家で食事を作るのが仕事だったので料理は得意だ。しかし、ここにきてからと言うもの、専属の料理人がいるので作る機会がなかった。最近、暇を持て余していたので、雪に頼んで材料を揃えてもらい、おやつを作ったのだ。


「これは何というおやつだ?」


目の前の黒紫のぶつぶつした塊を見て尋ねる。初めて見る食べ物に困惑した表情になった。それを見て茉莉はふふっと笑った。


「これはおはぎと言います。平城の国では彼岸に先祖にお供えするものなんですよ。」


平城の国にはそんな行事があるのかと真剣な表情で聞く。


「彼岸は春と秋の2回ありますが、春にお供えするのは牡丹餅、秋にお供えするのがおはぎなんです。今は秋なので、おはぎにしました。」

「何か違いはあるのか?」

「外のあんこの形状が違うくらいで使う材料は同じです。」


じっとおはぎを見て翔斗は尋ねた。


「なぜこれを作ったんだ?」

「特に深い意味はありませんが、ちょうど季節がら彼岸が近かったので。そして・・・」


少し言葉を詰まらせて茉莉は続けた。


「先日、冬夜様がきちんとあちらに行かれたと聞いたので、供養の意味も込めて作ってみました。」

「そうか・・・」

「気を悪くされましたか?」


上目遣いで申し訳なさそうに翔斗を見る。本当に茉莉は優しい。故意でないにしろ、自分を傷つけた相手にでもこうやって優しさを見せるのだ。


「いいや。そんなことはない。茉莉がこうやってすることであいつは成仏できるだろう。」


茉莉の頭を優しくポンポンと叩いた。温かい手。茉莉は翔斗が気を悪くしていないことにホッとした。


「じゃあ、いただくとするか。」


パクッと一口食べて、目を見開く。


「これ、うまいな!」

「お口に合って良かったです。」


茉莉はにっこりと微笑んだ。お茶との相性が抜群だ。甘すぎず、翔斗の口に合った。


「たくさん作ったので、もし良かったら、日向さん達にもお裾分けしてあげてください。」

「あいつらに茉莉の手作りのお菓子を食べさせたくないな・・・」


拗ねた口調で言う。まるで少年のような表情だ。最近、翔斗はよくこのような表情をする。茉莉はこの方が心地いいと思う。


「ところで、この材料はどうしたんだ?」

「雪さんに揃えてもらいました。平城の国と同じものが手に入ったようで。」

「そうか。また作ってくれないか?」

「はい!」


茉莉も嬉しそうにおはぎを口にした。他愛もない話をしながら、二人の時間はゆっくり過ぎて行ったのだった。

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