第1章 突然の別れ③
縁談が決まった茉莉は、母から衝撃的な事実を告げられる。なんと、自分には 驚異的な回復能力 があったというのだ。
半信半疑だった茉莉だが、過去の記憶を辿ると、確かに思い当たる節があった。母から折檻を受けた時のアザはすぐに消え、包丁で切った指もあっという間に治癒していた。さらに、体調を崩した使用人を世話したところ、みるみる元気を取り戻したことも。
「まさか、私が・・・!」
真実を知った茉莉は、これまで抱えてきた無力感と劣等感を悔やむ。もっと早く気付いていれば・・・
「まだ能力を使いこなせているわけではないのよ。婚約までにしっかりと術を身につけなさい。」
母の言葉を受け、茉莉は早速術の修行を始める。
茉莉が嫁ぐ黒水家は、代々続く武門の名家だ。彼らは多くの兵士を抱え、国を守るために戦ってきた。しかし、戦場では深い傷を負った兵士たちが命を落とすことも少なくなかった。
そんな状況を打開するのが、茉莉の能力だ。彼女の力があれば、重傷を負った兵士たちも助けることができるという希望が生まれる。
「私の力で、国を守り、人々の命を救うことができるのか・・・」
胸に熱い思いを抱きながら、茉莉は決意を新たにする。
修行の第一歩は、自身の能力を正しく認識すること。茉莉は、体の中に眠る力を体の表面へと引き上げ、毎日意識的に操る練習を積み重ねる。
次に、その力を手のひらに集中させる訓練だ。一点に力を集中させることで、より強力な回復能力を発揮できるという。
かつて体全体で無意識に能力を使っていたため、その力は弱かったのだという。
訓練を重ねるうちに、茉莉は手のひらに鞠を乗せているような感覚を覚えるようになる。そして、その「鞠」を傷に当てると、驚異的な速度で回復していく。
「なんて力・・・!信じられない・・・」
最初は小さな擦り傷や切り傷程度だったが、徐々に木の幹や岩など、より大きな対象にも挑戦していく。
自分の可能性に気づいた茉莉は、さらに修行に励む。
空を見上げ、大きく息を吸い込んだ茉莉は、両手で頬を打ち、気合いを入れ直す。
「よし、もっと強く、もっと多くの命を救えるように頑張るぞ!」
秘めた能力を覚醒させた茉莉は、未来への希望に胸を膨らませながら、新たな一歩を踏み出すのだった。




