第4章 邪神③
「あの娘は西の白虎の花嫁だそうです。」
黒い霧に向かい、大鬼は報告する。
「そうか・・・」
黒い霧は「うむ」と唸ると大鬼に言った。
「あいつを西の地に向かわせろ。他にも優秀なものを向かわせておけ。」
「承知いたしました。」と言うと、黒い霧はゆらっと姿を消した。
黒い霧が去り、大鬼はかの者を向かわせる準備に取り掛かる。西の地はあの娘がいるため、結界は強固になっているだろう。南の地の結界も、あの娘の手により修復された。
「あぁ、そう言えば最近使っていないあそこがあったなぁ・・・そこから向かわせるとしよう。」
大鬼はニヤリと笑うと鋭い牙が光った。
その頃、平城の国では安堵が広がっていた。50年に一度の儀式が人身御供ではないと分かったからだ。この国の守りを強固にするためにも回復能力のある娘は積極的に四神の元へ嫁がせなければなるまい。白金家次女の茉莉のように回復能力のある娘が嫁げば、その土地の結界は強くなり、妖などの侵入に怯えることもない。
今は、茉莉が神の国で結界修復作業を完了させたことで結界が強固になったため、しばらくは戦になることもないだろう。守護神たちを守る一族も今までの警戒を緩めつつある。だが、北の黒水家だけは気を緩めることなく警戒を強めていた。
「闘吉様、他の一族は警戒を緩めていますが、我らも緩めて良いのではないでしょうか?」
黒水家の兵を取りまとめている隊長が闘吉に尋ねる。しかし闘吉はその言葉に首を横に振った。
「いくら結界を強めてもらっているとは言え、鉄壁の守りではなかろう。我らはこの国を守る武人であることを忘れるな。警戒を緩めるでないぞ。」
「はっ!」
隊長は跪き、踵を返した。闘吉は、ふうと息を吐いた。気を抜くと不意打ちを喰らった時に負けてしまう。いつ何時戦が怒ってもいいように備えるのが黒水家の役目だ。それに、気を張っていないと息子のことを思い出す。息子が邪神により命を奪われてからと言うもの、家族を失うことがこれほども辛いのかと言うことを思い知った。涙が枯れるのではないかと言うほど家族全員で泣いた。武家の一族なのに情けないと思う反面、二度とこんな思いはしたくないし、他の人にもさせたくない。そう言う気持ちが芽生えた。だからこそしばらくは戦がないと言われても警戒を緩めたくないのだ。
「結界の綻びがないか、確認しとくか・・・」
闘吉は屋敷を後にし、山に向かった。山の結界は神の国から補強されたのだろうか、どこも強固に固められ問題ないようだった。1カ所、他の場所に比べると多少薄くなっているように見えるが、小さな範囲なのでこれぐらいなら問題ない。
「よし、結界は良さそうだな。特に玄武様に報告するまでもなかろう。」
全ての結界を確認し終えると、山を後にした。




