表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白虎様の妻になりました  作者: 海野雫
第3章 神の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/47

第3章 神の国⑤

雪は翔斗が都へ行くことになったと茉莉に伝えに行くと、茉莉から書物を貸してほしいと頼まれた。少しでもこの国のことを知りたいのだという。雪はいくつか書物を見繕い、茉莉に届けた。


「ありがとう、雪さん。これで時間が潰せそうだわ。」


茉莉は笑顔で感謝した。部屋から出てみたい気持ちはあったが、広い宮で迷子になるのが心配だったし、立ち入り禁止の場所があるかもしれないと思ったため、書物を借りて時間を潰そうと考えたのだ。


「いえいえ、何でもおっしゃってくださいね、茉莉様。」


雪は何かを思い出したように手を叩いた。


「そう言えば、白虎様から宮を案内するように言われていました!」

「本当ですか?」


茉莉は表情を明るくした。ちょうど部屋から出てみたいと思っていたところだったからだ。


「それでは夕食まで少し時間がありますから、今からご案内しましょうか?」

「ぜひお願いします!」


雪は茉莉を先導して宮を案内し始めた。中庭に面した長い廊下、鮮やかな丹塗りの虹梁が周囲を明るく照らしている。


茉莉がいる宮は、翔斗、先代白虎の凪と妻の葵の部屋、側近や護衛の仮眠室、侍女たちの個室、そして台所がある。まずは翔斗の部屋に案内された。


「こちらが白虎様のお部屋です。今は別々のお部屋でお過ごしですが、結婚の儀が終わったらこちらのお部屋に移っていただきます。」


雪はおほほ、と嬉しそうに笑った。茉莉はその言葉に顔を赤らめた。そんな茉莉を気にせず、雪は続けた。


「私は幼い頃から坊ちゃんのお世話をしていましたから、茉莉様が坊ちゃんのお嫁さんになると聞いて本当に嬉しいです。昔から茉莉様のことが好きでしたから・・・」


雪は目頭を抑えながら話した。翔斗が猫の姿で茉莉に会いに行っていたことを思い出し、茉莉は「ふふっ」微笑んだ。


部屋を一つずつ紹介してもらい、最後に台所に着いた。夕食の支度が進んでいるのか、いい香りが広がっていた。


「いい香り!私にも作り方を教えてもらえないかしら?」

「茉莉様は料理をされるのですか?」

「はい、家では私が家族の食事を作っていましたから。」


「それは素敵ですね。でもこちらでは料理担当の者がいるので、茉莉様に作っていただくことは難しいかもしれませんね。」

「そうですか・・・それは残念です。」


茉莉は少しでもお手伝いができたらと思ったが、郷に入っては郷に従えなので諦めるしかなかった。それでは、と茉莉は雪に聞いてみる。


「あの、雪さん。」

「なんでしょうか?」

「翔斗さん、いえ、白虎様と一緒に食事をとることはできますか?」


茉莉が尋ねると、雪は喜んで目を輝かせた。


「坊ちゃんはきっと喜ばれると思います。ただ、朝食は朝餐が多いので無理かもしれませんが、昼食と夕食は一緒に食べられるか聞いておきますね。」


朝餐とは朝食をとりながら役人達と政治の話をする時間である。日中の執務以外にも朝の時間も有効に使っているようだ。


茉莉は「ありがとうございます」と雪に礼を言った。翔斗のことをもっと知りたくなり、急にこんなことを思い立った。少し恥ずかしかったが、翔斗のそばにいるのだから知りたいと思うのも当然だった。


「それではそろそろ夕食の時間ですから、お部屋に戻りましょう。今日は坊ちゃんは中央に行かれていて帰りが遅いでしょうから。」


二人は茉莉の部屋へ戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ