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愛・そして恋のシリーズ

愛だけじゃ君を救えない

作者: リィズ・ブランディシュカ



 君が好きだ。


 どうしようもなく好きだ。


 庶民でも好きだ。


 親のために借金まみれでも好きだ。


 いつも働いて泥だらけでも好きだ。


 いつだって君のことを考えてる。


 でも、愛だけじゃ君を救えない。





「ーーさま、朝食に用意ができました」


 ありがとう。


 貴族の僕は、奴隷の君にそう言って、私室を出た。


 大好きな君は、僕に距離を置いている。


 当然だ。


 僕は奴隷の君を買った。


 主人と親しくする奴隷なんて、常識を考えたら存在できない。


 庶民だった君の環境は急激に悪化して、何もかもが不幸になった。


 命をつなぐには君は奴隷になるしかなかったんだ。


 しかたない、運命が残酷すぎた。





「ーー様、服によごれが」

「ああ、気付かなかった」


 君は決して僕に触れない。


「ーー様、本日の予定は」


 君は決して「様」をはずさない。


「ーー様、午後からお客様が来訪されます」


 君は決して、きやすく話しかけてはくれない。






 しかたない。


 しかたない。


 君は僕に命を買われている。


 僕は主人で、逆らったら命の危険があるのだから。


 それが世間の常識なんだから。


 僕の後ろに歩く君。


 その瞳には光が見えない。


 仕方ないとは分かってる。


 でも、こんな事がしたかったわけじゃない。


 でも、こうするしかなかった。


 でも、他にいい方法が思いつかなかった。


 奴隷になった君を、愛だけでは救えなかったから。





「奴隷を愛するなんて、お前がそんな奴だとは思わなかった! もう関わらないでくれ!」


 奴隷に反対する貴族。


 その立場をすててでも、かつての友人に絶交されてでも、君を守りたかったんだ。


 他の貴族に買われて、君がボロボロになっていくのなんて、どうしても嫌だったから。


「今日にご飯もおいしそうだな。毎日君が作ってくれて嬉しいよ」


 食卓にはついた僕は、心からのお礼を言う。


 けれど君は「ありがとうございます」抑揚のない声でそう述べる。


 泣き出したくなった。


 本当にこんな事がしたかったわけじゃないのに。


 君を愛する気持ちだけで、君が救えるほど世界が優しかったらよかったのに。



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