表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 秋編 交換留学生が来る秋、イワンのいない秋
96/133

95 新しい時代を作るために成すべきこと feat.エルネスト

 イワンとアラセリスさんの婚姻届を提出して、わたしはその足でラウレール領に滞在している両親のもとを訪ねた。


 屋敷に出向いてもらうのも手だが、見た目が若い二人がわたしの両親だと言っても、信じてもらえない。

 イワン相手にすら怯える使用人がいるから、得策ではない。


 魔族とつがい(・・・)とはそういうものだと、時間をかけてわかってもらうしかないのだ。


 父上と母上は、王族が住むにはあまりにも小さな借家で暮らしている。

 数年おきに住まいを変えるから、借家のほうが都合がいいとは母上談。


 見た目の若い二人が十年経っても老いないことを、人間は不気味だと捉えるから。


 本人が楽しんでいるなら構わないのだが、わたしとしてはひとところに長くいられないという現実が切なくなる。




「アラセリスさんが正式にイワンのところに嫁入りしてくれたけれど、これからが大変だろう。庶民だったからマナーを一から学ばないといけない」


 母上はハーブティーに口をつけて言う。


「そうね。貴族社会のイロハは、ワタクシがセリスちゃんに教えましょう。魔法学院に通っている生徒だけが貴族の子女というわけではありませんから、そういう子たちとの関わりも増えていくことでしょうし。ワタクシのことは外部から招いた講師、という体で構わないから」


 家族なのに外部講師と教え子、なんて。

 言ってもどうにもならないけれど、やはり悔しくなる。


「エルネスト。そういう顔をするな。少しでも魔族と人間の理解を深めるために、あの子たちはセシリオ殿下に交換留学を望んでくれたのだろう。なら、あと十年もしたら俺たちが家族として屋敷を訪問することもできるかもしれないだろう」

「父上……」

「お前が俺たちを恐れないのは家族だからだ。使用人たちのほうが、むしろ一般的な人間の反応。人間は老いる者、魔族は老いない者。この差を理解できるようになるには時間がかかる」


 そう。そもそも、根本的に互いの常識が違う。

 食事だって、魔族の多くは魔力だったり光だったり、人間が口にする食べ物とはかなり異なる。


「ワタクシは期待しているわ。イワンとセリスちゃんなら、魔族と人が共に生きられるルシールを作ってくれるように思うの。いつかひ孫が生まれたら、その子たちが偏見に怯えず生きていけるような、そんな国になるように思うの」


 わたしよりずっと長く世界を見てきているからか、父上と母上の顔に憂いはない。


「父親だろう。胸を張ってイワンとアラセリスの背中を押せ。転んでも立ち上がれるよう盾になれ。権力はそのためにあるんだ」

「そうですね。憂いてばかりではいけない。わたしが後ろ盾にならなければ、他の誰があの子たちを守れるというんだ」


 魔族と人が分かり合える国を作りたい。それがイワンたちの望みなら、反対派が現れても守りぬこう。


 新しい時代が根付いたなら、いつか父上と母上も、転々とせずひとところで落ち着いて暮らせるようになるかもしれない。

 そういう未来が訪れることを、わたしも心から願っている。


 

これにて秋編は終幕です。

読んでいただきありがとうございます。


繁忙期につき、冬編からは更新ペースがややゆっくりめになります。

きちんと完結まで書きますので、続きも追っていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 秋篇お疲れ様です! 大人のサポートも期待してまっせ( ´∀` ) 頑張って魔族も気兼ねなく暮らせる世界にしないとね!
[良い点] 秋編、お疲れ様でした! 2人のこれからの未来が輝きにあふれていますように、 そしてそんな2人や人間と魔族の「つがい」が普通に受け入れられるそんな未来、拠点を転々と移さなくてもどうどうと生…
2022/09/15 19:48 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ