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ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 秋編 交換留学生が来る秋、イワンのいない秋
93/133

92 交換留学の結果報告と、少しの雑談。 feat.イワン

 交換留学が終わり、まずセシリオに報告する。

 あちらの国での待遇や生活の様子、学校で学べることなど。

 この二ヶ月でまとめた報告書の束はかなり分厚い。


 セシリオは城の執務室で報告書を一枚ずつめくっていく。


「そうか。ルシールに悪印象を持っている者は半々といったところか」

「こちらも同じようなものだろう。魔族と聞いただけで警戒する人間は少なくない。でも同時に、知りたいと思っている者もそれなりの数いる」


 留学中、ルシールでの生活の様子もよく聞かれた。

 終戦後から今日こんにちまで国交は手探り状態でごく僅かなものだったから、互いの国を知りたくても知るすべは少なかった。


「人間ばかりの国ってどんな感じ? 空を飛べる人がいないって本当? って質問攻め。この分なら今後の交換留学もうまく行くんじゃないか。人選は慎重にするべきだとは思うが」

「報告ご苦労さま。君が行ってくれて、本当に助かったよイワン。これだけのことがわかったのはかなりの収穫だった」

「別に、かまわない」


 他の誰も行きたがらなかったから、オレが行くしかなかった。

 留学打診を断った生徒たちを責める気にはならない。

 アウグストを恐れる気持ちがあるというのは、まだ二国間に禍根が残っているという証拠でもある。


 国交が正常化するのは何年先になるだろう。

 報告書から顔を上げて、セシリオはフッと笑う。


「そうそう。イワンが国を離れている間、アラセリスくんがかなり寂しがっていたよ。生徒会の仕事をしているときだって、空席になっているイワンの席を気にしていたり、心ここにあらずでぼんやりしてたり。愛されてるねぇイワン」

「……それを聞かされてオレはどう反応すればいいんだ」

「その反応を見たかったんだ。イワンも照れることがあるんだね」


 警護としてセシリオの隣に立っていたウィルフレドが吹き出した。

 慌ててなんでもない顔を取り繕う。

 

「笑うなウィルフレド」

「失敬。イワンはあんなにひねくれていたのに、変われば変わるものなのだなと」


 昔からセシリオの護衛だったこともあり、ウィルフレドはオレたちの兄貴分のような立ち位置にある。

 コメントが保護者目線なのがなんとも腹立たしい。


「そうやって笑うけれど、ウィルも婚約者ができれば変わるんじゃないかな。恋は人を変えると言うし」

「まさか。私は職務の事以外……」

「例えば会長……ギジェルミーナ嬢から婚約打診されても? 君はとりわけ彼女に優しいように見えるから」

「は? え、いや、あの、そんなことは……、ギジェルミーナ様は確かに可愛らしい方ですが、公爵家の令嬢ですし、下位の私が釣り合うわけが」


 少しでも気持ちがあるのか、あからさまにうろたえている。


「本人の気持ち次第じゃないのか。オレとアラセリスなんて家格が違うどころか貴族と庶民だ」

「そ、それは……と、とにかく。私と婚約云々の話を出すなんて、ギジェルミーナ様に失礼でしょう。彼女にも想う人がいるかもしれませんし」


 海で合宿したとき、会長はかなりわかりやすくアプローチしていたのにな。気づいてないのはとうのウィルフレドだけとは哀れな。


 セシリオもとっくに気づいているみたいな顔をしている。

 オレはセシリオと視線を合わせ、鈍すぎる兄貴分の様子に肩をすくめた。

秋編は95話で終幕。

明日も19:00頃更新です。お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] アカン!ウィルフレド様に伝わってないぞ! ミーナ様、もっとガンガンアプローチしなくては!٩(* ゜Д゜)و
[良い点] 二国を隔てる壁は確かに残る、そこにある。 でも、互いに興味や理解したいという気持ちも少なからずある人達もいる。 少しずつ、交流することで理解を深め合えたらいいですね。 そして、ウィルフレ…
2022/09/12 19:46 退会済み
管理
[一言] やれやれだぜ。 こうもニブチンだと先が思いやられるぜε- (´ー`*)フッ
感想一覧
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