88 夢の中でアウグストを巡ります。
気がつくと私は、見知らぬ街に立っていました。
空には虹色の雲がかかっていて、レンガ造りの街はなんだか不思議な雰囲気。
目線よりやや上を、ウィルオウィスプがいくつかふわふわと飛んでいます。
「アラセリス」
イワンが空から降りてきました。
「ここは?」
「アウグストの城下町だ。ここから西に行くと魔術学園がある」
「そうなんですね。ここが、アウグスト」
夢の中でならどこでも行けるって、言ってましたものね。
まさかこんな形で連れてきてもらえるなんて思いませんでした。
夢だから人はいませんが、現実ならいろんな種族の人が行き交っているんですね。
写真で見せてもらった町並みのように、たくさん人がいるんですね。
街の作りもルシールとはまるで違っています。
人間じゃ通れなさそうな小さな扉があったり、逆にすごく大きな家があったり。
大人の身長が五十センチに満たない小人族、子どもでも背丈三メートルの巨人族もいるんだそうです。
会ってみたいですね。
「他の場所も見てみるか?」
「わぁ。いいんですか!? お願いします!」
差し伸べられた手を取ると、イワンは私を抱き上げて空に舞い上がります。
虹色の雲がかかる青空をかける。
泣きたくなるくらいにきれいで、胸が踊ります。
私たちの横を、白銀の鷲や真っ青な長い尾を持つ鳥が飛んでいきます。
「すごいです。きれいです! これがアウグストなんですね。こんなにきれいな空と鳥は初めて見ました!」
陽光を浴びてキラキラと輝く鳥たち、感激です。
夢の中の幻でなく、いつか本物を見に行きたいです。
「白銀の鷲はフレスベルグ。風を象徴する幻獣だ」
「フレスベルグっていうんですね。なんてきれいなんでしょう」
夢の中だから、誰にも気兼ねしないで旅を楽しめます。
お城の周辺を飛んで、次は高台の上に立つお屋敷が視界に入りました。
「ここが、オレの滞在しているところ。昔、祖父さんが暮らしていたところだ」
「すごい。街があんなに遠い。こんな高いところに家が建つんですね」
お屋敷のテラスに降り立ちました。
麓が霞んで見えます。
こんな高い山の上に来たことなんてありません。
有翼の種族はだいたい高台の上だったり塔だったり、屋上から入れるようになっているんだそうです。
文化の違いを感じますね。
「いつかルシールも、いろんな種族の人が過ごせるといいですね」
「そうだな」
手を繋いでキスをして、誓います。
夢でなく、現実に二人でここに来れるように。
国際交流がうまく行きますように。
本日も読んでいただきありがとうございます。
明日も19:00頃更新ですー!




