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ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 秋編 交換留学生が来る秋、イワンのいない秋
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86 ゲームのイベントがアタシに起きた? feat.ギジェルミーナ

 生徒会のイベントが終わって早々に、セリスさんはイワンのところに走っていった。

 この一ヶ月寂しそうだったものね。飾りのネコ耳がピコピコ動いていて可愛らしい。


「あなたたちも自由行動にしていいわよ。幕を下ろしておくから、楽器の片付けは学院祭が終わってからにしましょう」


 ローレンツが待ってましたとばかりに飛び跳ねる。


「よっしゃ! うちのクラスの手伝いもしねーとな、行くぞクララ、ヴォルフ!」

「ええ〜。僕ギジェルミーナを誘いタイ」

「会長の親御さんも来てるってのに変なことすんな」

「変なことしないヨ。一緒に見たいだけナノに」

「いいから! 行くぞ!」


 舞台衣装のまま走り出すローレンツ。ヴォルフラムもアタシの方をチラチラ見ながら渋々ローレンツを追いかけた。

 心の中でローレンツに拍手喝采する。

 クララはアタシとセシリオに一礼をしてから、小走りで二人を追いかけていった。


「さて、わたしたちはどうしようか。せっかくの学院祭だ。二人で見てまわるかい?」

「遠慮しておきますわ」


 幕の隙間から客席を覗き見ると、国王陛下と王妃様、その護衛、そしてウィルフレドがいる。


 セシリオと二人きりで学院祭をまわったら、彼に変な誤解をされてしまうじゃない。


「そんなにウィルが気になるのかい」

「わたくし、そのようなことを言ったことはありません!」


 セシリオは訳知り顔でほくそ笑む。


「海であれだけアプローチしてたら、鈍感でない限り気づくよ。肝心のウィルは全く気づいてないみたいだったけれど」


 気づいて欲しい人は気づかないのに、セシリオには気づかれてしまった。恥ずかしくて顔が熱くなる。


「どうしようかな。わたしと行動を共にするなら、護衛のウィルも一緒に来ることになるんだけど。会長は一人でまわりたいんだろう?」

「卑怯ですわ」


 睨んでも効果は無し。

 セシリオはアタシの鼻先に指を当てて目を細める。


「わたしといるときは、素のまま君で話をしてくれないか。そうしたらウィルとお近づきになれるよう協力してあげる」


 なにこれ。こんなの聞いてない。

 これは本来セリスさんの、セシリオ純愛ルートでのみ起こるイベントなのに。

 セリスさんがウィルフレドに恋していると勘ぐって、セシリオが意地悪をする。


 しかも、勘違いでも何でもなく、アタシが好きなのはウィルフレド。

 ゲーム通りなら、ここで断るを選べば監禁フラグになる。

 アタシに残された選択肢は一つ。


「わかったわ。言えばいいんでしょう。そうよ。アタシはウィルフレドが好きなの。協力してくれるというのなら、手を借りようじゃない」

「うん。君は澄ましているよりそっちのほうが魅力的だ」




 セシリオの計らいで、ウィルフレドを加えた三人で学院祭をめぐることになったけれど……。


「会長、エスコートしようか。さぁ、わたしの腕に手を」

「必要ありません」


 ウィルフレドに変な勘違いされたくないわ。


「ウィルフレド様。貴方は、何か見てみたいものはありますか」

「ギジェルミーナ様。私は護衛。お二人の邪魔はいたしません。空気と思っていただければ」


 早速勘違いされてるじゃない!!

 セシリオ。わかっててやっているわね。ニヤニヤとアタシの様子を見ているし!


「貴方は空気ではないわ。れっきとした人間よ。希望がないなら手始めにそこに入りましょう」

「ですが」

「かまわないよウィル。会長と一緒に入ってくるといい」


 勢いのまま入ってしまったけれど、失敗したわ。ここ、イワンのクラスの幽霊屋敷じゃない!

 怖いのが苦手だから、ゲームだとスキップしちゃってたイベント。

 目の前を黒いものが横切りどこからか女性の悲鳴も聞こえてくる。顔になにか落ちてきて、息が止まった。


「きゃああ!!」

「ギジェルミーナ様」


 思いきり抱きついてしまって、ウィルフレドが硬直している。恋人でもない女に抱きつかれたら無理もないわよね。


「ご、ごめんな、さ」


 涙が止まらなくて、ウィルフレドに支えられながらなんとか外に出た。


「ううぅ、こわ、かった。ご、ごめんなさい、ウィルフレド様」

「いえ、こちらこそすみません。騎士なのになんのお役にも立てず」


 魔法で映し出されたお化け相手に剣なんか通用しない。謝る必要なんてないのに。本当に真面目な人。


「けれど、意外でした。ギジェルミーナ様は普段、毅然としているように見えましたので」

「わ、悪いですか? わたくしだって怖いものもあります」

「いいえ。女の子らしくていいんじゃないでしょうか」


 ウィルフレドは微笑む。

 かなり怖い思いをしたけれど、ウィルフレドの笑顔が見られたから、今日はいい日だったわ。

というわけで、今回は学院祭ミーナ様パートでした。

次回再びセリス視点に戻ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] うぅむ、色々と変化し始めてますねぇ。 世界そのものの修正力が変化球になって返ってきた感じ(;'∀') しかしお化け屋敷はナイスよ!! お化け屋敷とホラー映画は抱き付けるチャンスよ(ォィ
[良い点] なるほど。 セリスたんに起こるはずだったイベントが、ミーナ様に起こるとは!やはり美生が転生して介入したことにより、歪みが発生してるのですかねぇ。 こうなったら持てるかぎりのルート選択知識…
2022/09/06 19:45 退会済み
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