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ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 春編 運命に翻弄される春
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8 内なる魔力を感じましょう。

 今日は担任のステイシー先生の授業、魔法実技です。

 実技が得意な先輩が一人、補助として同席しています。


「それでは皆さん、隣の人と二人一組になって、先ほど説明したように魔力の存在を確かめてください」


 私はクララさんと向かい合います。


「まず、わたしから送りますね。魔力を感じると触れた部分があたたかく感じるはず」

「はい、お願いしますクララさん」


 クララさんが私の手に手のひらを重ねます。

 体温のあたたかみとは別の、ほんのり熱い熱が手のひらを通して私の手に宿るのを感じました。


 血液が循環するように、指先を通じて熱い何かが私の中を巡る。


「これが魔力……? なんて熱い」

「初めてで感じ取れるなんて、アラセリスさんはセンスがあるのね」

「そういうものなんです?」

「ええ。何年訓練してもうまく扱えない人もいれば、数日でコツを会得する人もいる。それに、貴族であっても必ず魔法士が生まれるわけではないの。五人兄弟がいて一人も魔法を使えない、という家もあれば、兄弟二人とも魔法士という家もある」


 魔法の適性というものが、そんなにも貴重なものだなんて知りませんでした。貴族の皆さんは誰もが魔法を使えると思っていました。

 それは私の思い込みでした。


「さぁ、アラセリスさん、次はあなたの番です」

「はい」


 ステイシー先生の教えを頭の中で念じます。

 体の中に眠る魔力を感じ取ったら、それを手先に動かす。意識を集中させる。


「うまく、できているでしょうか」

「大丈夫、きちんとわたしの手に届いているわ。アラセリスさん」


 うまくいったようで良かったです。

 私たちの隣では、一人唸っている人がいました。


「ふんぬぅーー! どうりゃあああ!! どっせええい!!」


 補助に来ていたセシリオ様がローレンツ様と組んでいます。

 先ほどからローレンツ様が目一杯叫んでいるのですが、セシリオ様は眉一つ動かしません。


「ローレンツ。なにも伝わってこない。うるさいだけだ」

「そんなはずねぇ。これでうまくいかないなんてことになったら親父にどやされる」

「魔法士団長は怒りはしないと思うが」

「いんや、親父なら『恥をかかせるな』って言うに決まってる!」


 魔法士団は、魔法の才に優れた者のみが就ける王国守護職です。その団長ともなるとルシール王国随一の秀才。

 クララさんが教えてくれたことから考えて、秀才の息子だからといって魔法が得意とは限らないのですね。


「初心者のアラセリスが初日で魔力を感じ取れるようになったのに、オレができないなんてカッコ悪いだろ」

「かっこいい悪いの問題ではないだろう、ローレンツ。わたしがやったように魔力の流れをだね……」

「わからねー」


 セシリオ様が説明しても、ローレンツ様の眉間のシワが深くなっていくばかり。


わたし相手だからだめなのかな。セリスくん、少し手を貸してくれないか」

「はい、でも、あの。私でお役に立てるのでしょうか」

「君がいいんだ」


 これは、不幸になるイベントとは関係ない。

 そばに行くと、セシリオ様は私の手を握りました。

 男の人と手を繋ぐなんて初めてのことで、少しびっくりしました。幼い頃に父を亡くしているので、お父さんと手を繋いだ記憶は思い出の彼方。


「あ、おいセシリ……殿下!」

「セリスくん。ローレンツと反対側の手を」

「はい」


 セシリオ様、私、ローレンツ様で円になるように手を繋ぎました。


「わたしがセリスくんに魔力を流す。セリスくんはそれをローレンツに流す。ローレンツはわたしに返す。わかったね?」

「わかりました」


 私は仲介すればいいようです。クララさんと手を重ねた時のように、魔力が私の手のひらを介して流れてくる。

 私は水の流れを意識して、ローレンツ様と繋いでいる手に渡します。


「熱っ」

「ふむ。うまく行ったようだね。ローレンツ、そのままわたしに返して」

「あ、あぁ」


 戸惑うローレンツ様の手からセシリオ様へと魔力は循環したようです。


「ステイシー先生、こちらは問題ないです」

「ありがとう、セシリオさん。それでは次の実技に移りましょう」


 学院内にいる間、セシリオ様は学生。先生は特別扱いしていません。

 先生のところに戻るのかと思ったら、セシリオ様は私の手を握ったまま。


「あ、あの。セシリオ様?」

「君は素直で良い子だね。そういう子は好きだよ」


 私の手の甲に唇を落として、颯爽と教壇に戻っていきました。


「アラセリス。手を洗え。今すぐに」

「え、でも授業中ですし」

「いいから」


 ローレンツ様がポケットからクシャクシャのハンカチを出して、私の手の甲を乱暴に拭います。


「油断し過ぎなんだよお前!」


 ……私はなぜ怒られたのですか。

面白い、続きが気になる、と思ったら、ブックマークと下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして投げてください。

執筆の気力になります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] うおっ!! イワンのズキューン攻撃。 これは予想外でした(゜Д゜ノ)ノ でも確かにこれは合意じゃないのでノーカンですね。 しかし出て来るキャラが良い意味で濃いキャラばかりですね♪
[一言] バッドエンド回避できるのか、ちょっと不安なくらい拗れてますねぇ( ̄▽ ̄;)
[良い点] ローレンツ、かわいい、好き(*´ω`) でも彼もヤンデレに。。 そして、すでにヤキモチの気配が‥‥。
2022/07/03 21:43 退会済み
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