表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 秋編 交換留学生が来る秋、イワンのいない秋
76/133

75 シナリオにない危機を越えるには。 feat.ギジェルミーナ

 ヴォルフラムが生徒会室に襲来し、現在セシリオが部屋の外に放り出して説教してくれている。


 アタシはセリスさんと一緒に緊急作戦会議を開くことになった。


「はぁ……。学院祭の準備も中途半端だっていうのに……面倒なことになったわ。ゲームだとヴォルフラムがギジェルミーナに興味を持つなんてことなかったのに。アタシが転生者だから?」

「お茶でも飲んで落ち着きましょう、ミーナ様」


 落ち着きましょう、なんて言うセリスさんもティーカップを持つ手が震えている。

 会議の前に淹れたものだから、とっくにぬるくなっていて、味わえる気分でもなくなっている。


「どうしましょう。私がミーナ様に助けられていることも、考えたとたん彼に伝わってしまうんですよね。何も考えないってどうすればいいんでしょう」

「そうね。考えないようにすればするほど、ヴォルフラムにわかるでしょうね」


 アタシがもとは日本人で、美生みなという名のOLだったこと。

 この世界ゲームの分岐する未来を知っていること。

 初対面のとき見透かされたらしい。

 もしも、もしもヴォルフラムの口から、アタシの素性をまわりに暴露されたら。未来がどう変わってしまうのか予想もつかない。


 最悪。

 声には出さず、またため息を吐く。

 

 ヴォルフラムはイワン純愛ルート中盤にのみ登場するキャラ。

 セリスさんに偽物の愛を植え付ける魔法をかけて、自分のつがいにしようとする。

 聖属性のセリスさんに精神操作魔法は効かないから、事なきを得る。それが正規のシナリオ。


 それはあくまでも正規シナリオの話。

 アタシが転生者という時点で正規シナリオから外れているのよね。

 だからヴォルフラムもシナリオにない行動をしているのかしら。


 アタシにアプローチしてきているなら、彼が偽の愛を植える相手もセリスさんでなく、アタシになるの?

 闇魔法の耐性はないから、アタシは操られるままヴォルフラムのつがいにされてしまう可能性もある?


 いつかはウィルフレドに告白しよう、なんて悠長なこと言っていられなくなってしまったわ。


 迷い、俯くアタシにセリスさんは言う。

 

「ミーナ様。私、思うのです。もしかしたら、ミーナ様が私にすべて打ち明けてくださったときのように、他の方もきちんと話せば信じて、力を貸してくれるのではないでしょうか」

「アタシが転生者だと話すってこと?」


 それは危険と隣り合わせの選択肢。セリスさんがアタシの言葉を信じてくれたのは奇跡のようなもの。


「すべてを全員にとはいいません。ミーナ様が信頼を置ける人にだけ。この世界に起こりえる不幸な未来を知っている、そのことだけでも。ヴォルフラムくんの行動が、未来にもたらす可能性のこと知っておいてもらえたら、一緒に止めてくれると思うんです」


 たしかに、セリスさんが誘拐されたとき、アタシの突拍子もない言葉をセシリオとイワンは信じてくれた。


 ならアタシもセシリオたちを信じないと、信じてもらえないわよね。


「……そうね。そのときはそばにいてくれる? 自分一人でうまく語れる自信がないの」

「もちろんです」


 セリスさんは心強い笑みで、アタシの手を握ってくれる。


 ゲームにない分岐ルートの行く末を知らない。

 だから大丈夫なんて根拠はどこにもない。

 それでも、信頼できる人にだけは起こり得る未来のことを話してみようと思った。



 

明日は76話。

アラセリスのもとに小さな客人がやってきます。


19:00ころ更新です。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[良い点] ミーナ様、大丈夫かなあ。 ウィルフレド様と無事に結ばれて欲しいーー。 でも、ヴォルフラムくんは悪い人じゃなさそう。上手く話せば、きっと分かってくれる気が! [気になる点] >イワン純愛ル…
[一言] フフフ( ´∀` ) とっくに予定調和な展開は崩れている。 ならばいっそもっと崩してしまえ理論ですね(ォィ
[良い点] 考えていることが全て伝わってしまう… 自分が転生者でこの世界がゲームの世界で‥‥ 自分はその世界の未来を知っている。 ヴォルフラムに現在の時点でどこまで知られてしまっているのか分からないで…
2022/08/26 19:31 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ