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64 私がベルナデッタ様を叩いて罵った? 身に覚えがありません。

 教員室の隣にある指導室に呼び出されました。

 教頭先生がかなりご立腹で、まともに私の話を聞いてくれません。

 二言目には「嘘を吐くな、ベルナデッタを叩いたんだろう!?」と怒鳴るのです。


 ステイシー先生が間に入ってくれているのですが、カンカンに怒っていて話し合いになりません。


「ですから、教頭先生。アラセリスはそんなことをできる子じゃありません!」

「うちのベルナデッタが嘘をついたとでも言うのか!? わしは孫をそんなふうに育てたことはない!」


 庶民なんか退学に追い込める、と豪語していたのは教頭先生のお孫さんだからですか。


 権力の使い方を間違えていません?


 なんて、先生に対してそんなことを言ったら、それこそ退学にされかねません。言いたいのを堪えます。


「私は叩いていませんし、むしろ被害者です。『退学にされたくなかったら、イワンとの婚約を解消しなさい』と脅されました」

「うちのベルナデッタがそんなことするものか」


 ポッと出の庶民より、家族のほうを信用する。

 しかも私は『悪いのはベルナデッタ様の方』と言っているのだから信じるわけありませんね。


「まわりで見ていた生徒がいたはずです。彼らが真実を知っています」

「聞き取りをしたら、彼らも口を揃えて、手を出したのはアラセリスの方だと言っていた。証言があるのにまだ知らぬというのか」


 階級社会の中、身分が上の人間に聞かれて、正しい証言する人はいないでしょう。

 先生が望む答えを言わないと退学にする、とでも言われたのかもしれません。


「ですから、この子は暴力をふるうような子ではありません。わたくし、自分の受け持つ子のことはきちんと理解しているつもりです」

「なら君の人を見る眼がくもっているんだ!」


 何がなんでも私殴ったことにしたいようです。

 どうしたらいいんですか。

 困り果てていると、指導室の扉がノックもなしに開きました。


 イワンとミーナ様、セシリオ様、ローレンツくんにクララさん、そして何名ものクラスメートがそこにいました。


「なんだ、お前たち」

「あまりにも横暴ですわ、教頭先生。セリスさんは生徒会の仕事も真面目にこなす模範生ですのよ。何もしてないセリスさんを謹慎処分にするのなら、わたくしたちにも考えがあります」

「考えだと」


 教頭先生の言葉にイワンが答えます。


「ぼくも絡まれた当事者なので、証言する権利がありますよね。貴方の孫は、友人二人を引き連れてアラセリスを脅した。ぼくはそれを止めに入りました」


 イワンの証言を引き継ぐように、クラスメートたちも口々に訴えます。

 ベルナデッタ様の方から喧嘩を売るのを見たと。


 セシリオ様が口を開きます。


「目撃者と被害者の証言が違うね。教頭は誰から、『暴力を振るったのはセリスくんだ』と聞いたんだい。王族であるわたしに、嘘をついたりはしないよね」 


 

 教頭先生は青ざめ、うなだれました。


 ベルナデッタ様のお友だち二人が、嘘の証言をした犯人だったようです。


 教頭先生を利用してまで私を陥れたいなんて、ベルナデッタ様の執念が怖いです。


 結果、謹慎処分を言い渡されたのはベルナデッタ様とお友だちの方。


 私を信じて助けてくれたステイシー先生やみんなに、心からお礼を言いました。




 帰りはイワンが送ってくれました。

 ラウレール家の馬車に揺られて家路をいきます。

 座席に深く腰掛けて、イワンは私のおでこを小突く。


「つくづく厄介事に巻き込まれるたちだな、お前は」

「逃げようにもあっちからふっかけてくるので……」


 ミーナ様に教わっていても、回避できない未来イベントというのもあるのです。

 何はともあれ、ニセ証言をくつがえせて良かったです。


 イワンの肩によりかかると、そっと抱きとめてくれました。

 居場所を守るためにも、頑張らなきゃです。

明日は65話

19:00ころ更新です。お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] こういうスカッとするお話はええですなぁ( ´∀` ) でもまた何か仕掛けてきそうでこわいのです(;'∀')
[良い点] ベルナデッタ嬢、教頭の孫娘でしたか。 孫娘が叩かれたとあったら信じてしまうのかなぁ…。 しかも、信じ切って「うちのベルナデッタがそんなことするものか」とセリスたんの言葉には聞き耳持たず。 …
2022/08/15 19:57 退会済み
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