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ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 春編 運命に翻弄される春
39/133

39 大変なことに気づいてしまいました。

「そう。実技試験の対策をしたいのね」

「はい! お願いしますミーナ様!」


 テストまであと三日。

 今日の昼休憩はミーナ様に魔法を使うコツを教えてもらいます。

 何かあったときのため、玄関前にある噴水そばで練習です。


「一年の最初の試験なら、実技は燭台のロウソクに魔法で火を灯すもの、それから使い魔を操るものね。アタシを頼ってくれて嬉しいわ」

「ミーナ様が一番信用できます」

「そうね。教えを請うなら同性のアタシにしておくといいわ。セシリオはもってのほか」


 ミーナ様の日記から引用しますと“セシリオはアラセリスに恋人がいる状態でも、文字通り手取り足取り教えるし、略奪しようとする。”

 幼馴染の恋人だと知った上で略奪するのはまずいと思います、セシリオ様。


「純愛ルートでも、横槍を入れる輩は必ず現れるから気をつけなさい。他にも何か思い出したらすぐ情報提供するから」

「はい」


 頼もしく言ったあと、ミーナ様は燭台をトン、と噴水前の台座に置きます。三又の燭台にはロウソクがさしてあります。


「詠唱は覚えているわね」

「バッチリ暗記しました!」

「まずアタシが実演するから、見ていなさい」


 ミーナ様は人差し指と中指を立てて燭台を見据え、唱えます。


『火の神よ、ひとときのともしびを分け与えたまえ』


 構えていた指を燭台に向けると、ポッとオレンジ色の火が三本同時に灯りました。

 見事すぎる手際に拍手です。ミーナ様素敵です。


「慣れないうちだと一本しか点かないなんてことも多いから、集中して。大事なのは燭台、ロウソクから目をそらさないことよ。火がつく様子をイメージしながら。さぁ、やってみて」


 フッと息で吹き消して、ミーナ様は私を促します。


 ミーナ様がやったように指を構えて、じっと燭台を見る。このロウソクに火が揺れている姿を想像して、詠唱します。


『火の神よ、ひとときのともしびを分け与えたまえ!』


 右から順にポツポツと火が灯りました。三本、ちゃんと。


「どうですか!」


 ミーナ様のように同時点火ではなかったですが、点きました。私はやれば出来る子ですね。


「上手よ。セリスさんは飲み込みが早いわ」

「えへへ。ミーナ様に褒められるの嬉しいです」


 お姉ちゃんがいなかったので、きっと私に姉がいたらこんな風に優しい人かな。


「あとは使い魔召喚ね。貴女の使い魔は水生だから、きっと水中に沈められた指定品を取ってくることになると思うの。使い魔の目を借りて、きちんと場所を把握すれば難しいことではないわ」

「目を借りて……」


 ん、んんんと。使い魔は術者の手足であり目となり声を飛ばすこともできる。何か頭の中で引っかかりました。


「ミーナ様、例えばミーナ様の猫ちゃんをあの木の上に登らせたら、ミーナ様にはあの高さからの景色が見えますか」

「ええ、もちろん。それがどうかした?」


 ……とんでもないことに気づいちゃいました。

 私、前にイワンの小鳥ちゃんを借りたとき、ずぶ濡れになったので小鳥ちゃんを連れたまま着替えました。

 イワンにも見えていたってことですか。

 私の着替え一部始終。



「ど、どうしたのセリスさん。頭を抱えて。具合でも悪いの?」

「なんでもないです」




 放課後イワンの教室に直行しました。

 先輩がたが驚いて私を見ていますが知ったこっちゃないです。


「イワンのばかー! どうして言ってくれなかったんですか! 私、使い魔と視界が共有できるなんて知りませんでしたよ!」

「いまさら気づいたんですか」


 イワンは猫かぶりの涼しい顔です。

 恋人になったから良かったものの、いや、あんまりよくないですが、着替えを見せていたなんて乙女の恥です。

 クラスメートさんが遠慮がちにイワンに声をかけます。


「だ、大丈夫かイワン。喧嘩?」

「問題ありません。アラセリス、中庭で話しましょう」


 教室で騒ぎ立てるなや、と金の瞳が言っています。

 引きずられながら中庭に行きました。


「結婚式を終えたら毎日見ることになるんだから、そこまで怒らなくても」

「それはそうですけど! 恥ずかしいじゃないですか!」

「理不尽極まりないな。お前がオレの使い魔を連れたまま着替えたんだろうが。視界を繋いだままだったからこっちのほうが驚いた。離れている間使い魔は命令に従い続けるし……魔法士の女なら普通やらない」


 みんな家族の誰かが魔法士だからとっくに知ってたんですね。知らなかったのは私だけ。自分のお馬鹿さに泣きそうです。


「次の休みにでも使い魔を扱うコツ教えてやるから、機嫌直せ」

「むむ……それなら許してあげます」

 

 私がこの笑顔に弱いの知っててやってるんでしょうか。本当にずるい人です。

明日は

40 ペンちゃんと視界を共有する訓練です。

デートのようでデートじゃない、休日に召喚の練習です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、気がついてましたよー♪ 絶対に小鳥ちゃん通して見られてるなーって。 下着まで取っちゃって、こりゃ悩殺だなーと笑! イワン、ラッキースケベでした♡
[一言] うぁー!!(〃ノωノ) なんという事故!!(〃ノωノ) でもって使い魔との感覚共有はロマンですね!!
[良い点] あっちは低浮上ですがこっちはふつーに登場! 毎度おなじみお騒がせ野郎ですよー。 セリスたん、すぐに覚えてやればできる子! 羨ましいぞっ! 姉ようだと慕うミーナ様とのやりとりは本当に微笑ま…
2022/07/21 19:50 退会済み
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