表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 春編 運命に翻弄される春
34/133

34 強欲で傲慢で貪欲で、純粋で愛しい人。☆

 いたたまれなくて、つい逃げてしまいました。

 だって、だって、告白したも同然なんですよ。


 私がこんなにいっぱいいっぱいなのに、イワン様は余裕な態度を崩さないのがまた悔しいです。


 走って走って、中庭まで来てしまいました。会場から離れているから人はいません。

 ちょっと気持ちが落ち着くまで一人反省会しようと思います。


 なれないヒールで走ったから足がガクガクです。ヒールをぬいで裸足になったら、芝生の感触が気持ちいいです。


 告白するなら、あんな言い合いみたいな形でなく、もう少しロマンチックな感じがよかったのに。顔を見るとつい喧嘩腰になってしまうんです。


 大樹に寄りかかって座っていると、イワン様の声がしました。


「アラセリス」


 

 鳥よりも大きな羽音がして、夢魔のイワン様が降りてきました。

 仮面を外していて、金色の瞳は怒りを含んでいます。


「なんで逃げる」

「だって」


 イワン様の腕が私を閉じ込める。

 抱き上げられて、大樹の上の大きな枝に降ろされました。


「高いです……」

「これなら逃げられないだろ。さ、続きを聞こうか。意地悪すると嫌いになるとかなんとか言っていたな」


 いい笑顔で言うのやめてほしいです。

 私の気持ちを察したうえで言ってるのがたち悪いです。


「ずるいです。イワン様は私のことどう思っているのか何も言わないのに、私にばかり言わせるんですか」

「ほう。不公平だって言いたいのか」

「そうです。私に気持ちを言わせたいなら、イワン様も言ってください」

 

 私が訴えると、イワン様は私の背後、木の幹に手をつきました。

 ここは木の上だから、視界が夜空とイワン様だけになる。

 月よりも明るい光を持つ金色の瞳が、まっすぐに私をとらえる。


「オレのつがいになれ、アラセリス」


 ストレートな言葉に、胸が締め付けられます。


「他の誰にも渡さない。セシリオにも、ローレンツにも。お前はオレのものだ」


 悪魔の名に恥じぬ強欲さと傲慢さ、貪欲さです。


 出会った日に無理やりキスされて大嫌いだったのに。

 人に弱みを見せない矜持、危険を犯しても私を助けに来てくれた心、泣いていた私を抱きしめてくれた優しさ。


 イワン様のことを知るたびに、惹かれる気持ちを抑えられなくなりました。

 どんなにイワン様から逃げても、私はまた惹かれている。

 この気持ちを伝えてしまったら、もう学院で顔を合わせるたび口喧嘩するような、気安い関係には戻れないでしょう。


 でも、心に抗えません。


「好きです。イワン様のことが好きで、欲しくて、どうしようもなくて、苦しいんです。おかしくなってしまいそうなんです」

「呼び捨てでいい」

「……イワン。私をつがいにしてください」

「いいのか? ……オレは見ての通り化物だ」


 手を重ね合わせて、指を絡ませ、イワンは確かめるように聞いてきます。いつもの強気な言動とは違い、儚さすら感じる声音で。


 この儚さが本来のイワンなら、小さくて白いあの子が使い魔(本質)なこと納得できます。

 繋いだ手は汗ばんでいて、イワンが緊張しているのがわかります。

 関係の形が変わることが怖いと思う気持ちは、同じなんですね。


「……はい。悪魔の姿のイワンも、全部、まとめて好きです」


 イワンの瞳から、一筋涙がこぼれる。

 耳元に、首筋に、イワンの口づけが降る。

 私もイワンに手を伸ばして、目元に、唇に、口づけを返します。


挿絵(By みてみん)


 イワンの胸に耳を当てると、私と同じ心音が聞こえます。魔族であっても、心は人と変わらないんですね。


 空が明るくなって、花火が上がる。地上で見るより近くて大きな花。木の上って、これ以上ないくらいの特等席ですね。

 イワンと過ごしたこの夜を、この花火を、私は生涯忘れないと思います。

 

面白い、続きが気になると思ったら、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援してください!

続きを書く原動力になります!


感想、レビューもお待ちしてます!



34話はムーンライト版より描写が軽めになっております。

Rシーンはムーンライトノベル版ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。でお楽しみくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] え、イワンカッコいい&可愛くて惚れそうなんですけど笑 涙を見せたの、初めてですね……イワンの本質が垣間見れて驚きました。 そしてつがいにーッ!おめでとうーーー!
[良い点] おぉーっ!イワン様と番に!!(*'ω'*) ラブラブ純愛ルートおめでとー!
[良い点] とても、とても愛しいのです。 強欲で、傲慢で‥‥求めるものに貪欲で。 でも反面求めることに怯えてもいて。 夢魔であっても、心は変らない。 そんなイワンの熱い想いと、そんな彼にどこまでも惹…
2022/07/16 20:38 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ