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ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 春編 運命に翻弄される春
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26 悪魔でも優しい人。☆

 ようやく涙がとまって、イワン様に抱えられたまま屋根の上で話します。


「お前があのペンギンを外に出したのが見えたから、ここだとわかった」

「ペンちゃん有能すぎる」

「見つけたのはオレだ」


 ほっぺたをつねらないでください。


 地上を見ると、少しずつ人が集まってきています。


「会長が捜索隊を呼ぶよう、お前の弟に指示したからな」

「ありがとうございます。みんなにもお礼を言わないとですね」


 やっぱり、お母さんとレネにも心配をかけていたんだ。

 

 イワン様は地上を見下ろしたまま顔を曇らせます。


「この姿で出ていくと、オレが誘拐犯にされかねないな。どこか別のところに降りてから合流しないと」

「お手数おかけします」


 かつてルシール王国は、魔族の国と戦争していました。大抵の人は魔族を忌むべき存在として見ます。

 だから今出ていくと、イワン様が誘拐犯だと誤解されかねないです。


「……本当に怖がらないな」

「イワン様はどんな姿でもイワン様でしょう。翼、かっこいいです」


 思うまま口にすると、イワン様の表情に少し優しい色が混じりました。猫をかぶっているときとも、私をからかうときとも違う。

 すごく綺麗です。いつもそうやって笑っていたらいいのに。


「ここに来る前、近くに花畑が見えた。あそこなら警官の目もないだろう」

「はい」


 イワン様の後頭部に手を回すようにしてしがみつくと、イワン様は私を抱え上げて空を舞いました。


「わぁ。星が近くて綺麗ですね」

「そうか?」

「ええ。いつでもこんな星空を眺められるなんて、羨ましいです。気が向いたらでいいのでまた見せてください」

「化物と罵られたことは数あれど、そんなアホなこと言ったのは、お前が初めてだよ」


 私はアホじゃないです。やっぱりイワン様は失礼です。



 降りたのは、真っ白なプルメリアが咲き乱れる公園でした。

 甘い香りが辺り一帯に広がっています。

 イワン様が着地すると、翼は月明かりにとけて消えました。


「……くっ」


 膝から崩れ落ちるように、イワン様が座り込んでしまいます。顔色は月下でもわかるくらい真っ青。


「だ、大丈夫ですかイワン様」

「少し休めば……動けるようになるから、お前は、早くみんなのところに」

「そんなわけにはいきません。貴方が一緒でないとだめです」


 これがセシリオ様が言わずにいた事情・・なんですね。イワン様本人が口にしない限り言えない事情。

 空を飛ぶのも、さっきレスティ先輩に使った炎の魔法も、かなり魔力を使うのかもしれません。

 

 セシリオ様から聞いたことを思い出しました。

 イワン様が体調を崩したとき、魔力を渡せば回復すること、そして……手を繋ぐよりもずっと効率よく魔力を渡せる方法。


 イワン様は私を助けるために最善を尽してくれたのです。


 だから、迷いはありません。


「イワン様、嫌なら蹴飛ばすなりなんなりしてくださいね」

「は? なにを、言って……」


 両手でイワン様の頬にふれて、唇を重ねる。

 口づけで魔力を渡す。

 イワン様は蹴飛ばしてきたりはせず、黙って受け入れました。

 イワン様の手が私の背を抱き寄せる。


 心臓の音がうるさくて、胸が熱くて、何も考えられない。


「アラセリス」

「な、なんですか、イワン様」


 名前を呼ばれるだけで胸が締め付けられる。

 

 魔力が回復したイワン様は、いつもの顔色に戻っていました。瞳も普段の藍色に。

 イワン様は挑むように私を見ます。


「……嫌なら、蹴飛ばすなりなんなりしろよ」


 魔力の受け渡しではない、口づけをされました。

 出逢った日のような強引に奪うものではなくて、私が簡単に抵抗して逃げられるくらいのものです。

 わざと逃げる余地を与えるなんて、ずるいです。


 振り払うなんて、できるはずないじゃないですか。


 深く関わると身の破滅だとわかっています。

 惹かれちゃいけないと思うのに。

 どこにでも転がっているような、普通の恋をする予定だったのに。

 私は、どうしようもなくイワン様に惹かれている。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただいていますm(_ _)m ヤンデレってまあセリスにとってはアレですけど……可愛いですよね。続きが楽しみ。 イワンさまぁぁぁー!!!ヤンデレなのに可愛い&カッコいい! セリスもイ…
[良い点] おぉーっ!イワン様とラブラブ純愛ルート確定!?やったー!٩(*´ ꒳ `*)۶
[良い点] やーーーん!! 素敵な恋がーーー!! 床を転げ回って悶えたいっ!! 手で床をバンバンしちゃいたいっ!! あー、キュンキュンいいです。 いいですねーーー!!
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