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ヤンデレゲーの主人公は普通の恋を望む。(完結)  作者: ちはやれいめい
一年生 冬編 花嫁修業と、優しい国を作るための一歩
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103 アタシたちの選びとった道 feat.ギジェルミーナ

 夕食と入浴を終えてあとは寝るだけ、という時刻になって来客があった。


 しんしんと雪が降り積もる中、夜に外出するなんて凍死したい人くらいじゃないかしら。

 メイドから聞いて耳を疑った。

 訪ねてきた相手がウィルフレドだというからなおのこと。


 アタシはギジェルミーナの父、つまり今世のお父さんに話していた。

 ウィルフレドに惹かれていること。

 魔法はないけれど、彼も貴族。そして次男なのでアレスター家に婿入りすることが可能。


 お父さんも納得してくれて、カリストス家に婚約打診した。

 もしも婚約に同意してくれるなら、星夜祭でダンスのパートナーをつとめてほしい、というアタシの手紙も添えた。



 そのウィルフレドが訪ねてきた。


「どうしても今日中に話をしたいのだそうです。どうなさいますか、お嬢様。時間が時間ですし、日を改めてもらいますか」

「いえ、会います。今、彼はどこに?」

「外で待つと」

「わかったわ」

 

 すぐに身支度を整えて、アタシは玄関に向かった。

 雪がひらひらと降ってくる中、空を見て佇むウィルフレド。


「おまたせしました、ウィルフレド様」


 何があったのか、右の頬がやや腫れているように見える。なんだか、その怪我の理由について聞くのははばかられた。

 声をかけると、じっとアタシの顔を見つめる。


「ギジェルミーナ様、夜分遅くにすみません。どうしても、今、話をしたかった」

「はい」


 彼が訪ねてくる理由があるとしたら、ただ一つ。婚約打診の返事。

 アタシはただ静かにウィルフレドの言葉を待つ。



「貴女は公爵家の娘で、魔法士。わたしは兄弟の中で唯一魔法を生まれ持つことができなかった、凡人。立場が違いすぎて、想いを寄せてはいけないと思っていました」


 ウィルフレドの言葉は、懺悔のよう。

 ひとことひとこと、噛みしめるように言う。


「貴女のそばには、同じ魔法士で、公爵家と同等かそれ以上の人間が立つべきなのではと。殿下も、貴方の事を思っていたから、わたしの出番なんてないのだと」


 ウィルフレドは、ずっとそうやって言い訳を作ってきた。自分なんかが釣り合うはずがないと自分に言い聞かせて。

 諦めるのに慣れてしまっていたのだと、言葉の端々から感じられた。



 まるで、前世のアタシのよう。


 恋人を作る時間なんてない。

 仕事が忙しいから、もし作れたって頻繁に会えなくて寂しい思いをさせるだけだから。

 独りが寂しくても、相手を傷つけるくらいなら恋なんてしないほうがいいって。


 言い訳して、壁を作って、逃げて。

 同じだったのね。ウィルフレドも。


「こんなふうに考えたこと、殿下からひどく叱られました。自分にも貴女にも失礼だと。だから、どうしても貴女に話さなければと思いました」


 そう言って、ウィルフレドは右頬の痕にそっと手を添える。セシリオに殴られたのね。

 振られてなおアタシのために怒ってくれるなんて、どこまで優しいんだろう。


 深く息を吸って、ウィルフレドはまっすぐアタシを見つめる。



「ウィルフレド様。わたくしは貴方が好きです。貴方だからこそ、伴侶になりたいと思いました」

「真面目なことしか取り柄がない、面白みのない男だと、まわりから揶揄されています。こんな男で、いいんですか」

「ええ。誰にどう言われようと、いつでも真剣に職務を全うしているでしょう。そういうところが好きです」

「ギジェルミーナ様……」


 ウィルフレドの目尻から涙が一筋溢れる。

 服が濡れるのも気にせず、その場に片ひざをついてアタシの右手を取った。


「ギジェルミーナ様。求婚をお受けします。わたしも、貴女のことをお慕いしています。貴女の夫として隣に立つ権利を、わたしにください」


 不器用ながらも、精一杯の気持ちがこもった告白に、アタシも涙が出た。


「ありがとう、ウィルフレド様。嬉しいです」


 涙をぬぐって、微笑み合う。

 こうして、アタシとウィルフレドの婚約は成立した。

 

次の更新は明日の19:00頃。

セシリオの婚約者候補のお話です。

国王がセシリオのために約束を取り付けた相手は……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 回復役「申し訳ありません、我々全員の魔力を以てしてもこれ以上は……ッ」 ウィルフレド「いえ、喋れるくらいには回復できたので、充分です」 こんな裏話があったら面白い(ォィ [一言] ご…
[良い点] ミーナ様もウィルフレドも良かった……。これからの二人はいい仲になること間違いなしですね♪
[一言] ミーナ様、誰でも得られるようで得られるとは限らないしあわせです。おめでとうございます。 アラセリスちゃんの恋も可愛らしいけれど、ミーナ様も傍観者のままではいけません。 ああ、盛り上がってます…
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