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第7話 専門組織「OSMAUD」(オズマウド)機密施設での戦闘

 10年前に国が、次元の歪みと、ディメンションゲートから現れる。未知の生命体(アンノウン)の存在を正式に認めた。

 それを機に、内閣に、担当の省庁、次元省と次元対策庁が新設された。

 さらに、国の行政機関として設立した専門の組織が「未知次元対策専門組織」略称は、「OSMAUD(オズマウド)」。

 未知の次元への対策を専門とする組織。また、そこには、未知の次元から現れる未知の生命体(アンノウン)への対策も含まれている。


 OSMAUD(オズマウド)が所有する、ある機密施設で、1ヶ月半前に事件が起きていた。

 場所さえも機密になるこの施設は、厳重なセキュリティーに守られている。

 しかし、何者かの侵入を許してしまっていた。


 施設内で、警報音が鳴り響いている。

 館内放送が、流れる。


「戦闘員は、侵入者を確保せよ。現在、侵入者2人は、B2通路を南へ逃走中。侵入者は、研究員に変装している。服装は、1人は、青い服に白衣を着用、ズボンは黒。もう1人は、黒い服に白衣を着用、ズボンは紺。武器を所持しているもよう。戦闘員は、侵入者を追跡し、確保せよ。なお、非戦闘員は、退避してください。繰り返します……」


 武装した戦闘員が、1班6名で侵入者を追い詰めていた。

 1経路以外の経路はシャッターを下ろし、ドアはロックを掛け、侵入者を1つの部屋へ誘導していった。

 侵入者2人が、部屋に入る。

 天井が高く、広い部屋だった。


 戦闘員が、侵入者に叫ぶ。


「武器を捨てろ!! 手を上げて、膝をつけ!!」


 侵入者2人を、銃を構えた6名の戦闘員が壁際へ追い詰める。戦闘員が、侵入者2人を反円をえがくように取り囲んだ。


 侵入者に従う様子はなく、銃を構え戦闘員を牽制している。

 次の瞬間、追い詰められた侵入者2人は、戦闘員に銃を撃ちながら、部屋の入口に向かって強行突破を試み、走り出す。

 戦闘員に向かって撃たれた銃弾は、戦闘員の前に広がった見えない壁のようなシールドで止まりぽとりと床に落ちた。

 戦闘員がゴム弾を打ち侵入者を阻む。


 侵入者は、再び壁際へ追い詰められた。


「抵抗すれば、実弾を使用する準備がある! 抵抗せずに、投降しろ!!」


 戦闘員は、全員が撃ったわけではなかった、6名の内、3名がゴム弾を3名が実弾を装填した銃を構えている。


 OSMAUD(オズマウド)は、人間への殺傷は、原則認められていない。

 OSMAUD(オズマウド)の戦闘は、原則、未知の生命体(アンノウン)にのみ認められているからだ。

 だが、あくまでも原則であり、相手の人間に攻撃の意志があり危険な状況、止むを得ず必要だと判断される状況、非常時などには、例外的に殺傷が認められる場合がある。


 そのため、人間の制圧の際は、殺傷性の少ないゴム弾や警棒などで制圧を試みるが、非常時に対応できるように実弾やナイフも準備されていた。


 侵入者2人は、投降する様子も見せず、一言も言葉を発しない。

 銃を撃とうとする様子が見られたため、再び戦闘員がゴム弾を撃ち込んだ。

 その時、ゴム弾が何か硬いものに当たった音がし、弾かれた。と同時に、侵入者の顔が変わる。

 真っ黒くのっぺりとした目も鼻も口もないおうとつがない顔に変わった。仮面をつけているのか、本当にそのような顔なのかは、戦闘員の距離からは判別できなかった。

 戦闘員達に緊張が走る。


 その時、侵入者の動きが止まった。

 戦闘員達からは気づけない事が起きていた。

 侵入者の耳にはめたイヤホン式の無線から男性の声がした。


「失敗したらだめじゃないか」


 次の瞬間、侵入者がいる位置から、室内にパリンと何かが割れるような音が響いた。

 床を見ても何もない、侵入者が持っている何かが、割れたのだろうか。そう、戦闘員が思った瞬間、侵入者の背後の空間が急激に歪み始めた。


 次元の歪みだった。

 戦闘員達に衝撃が走る。

 次元の歪みは、瞬く間にポッカリと真っ黒な穴になった。ディメンションゲートだ。


「ディメンションゲート発生!! 総員! 対未知の生命体(アンノウン)戦闘準備!! ディメンションゲート閉鎖準備もだ!! 急げ!!」


 戦闘員の班長が他戦闘員とイヤホン式の無線に向かって叫んだ。


 ありえない出来事に場が騒然となる。

 通常、次元の歪みは、自然発生的に時間をかけて発生する。ディメンションゲートが開くまでには、数日もしくは最短でも数時間はかかるものだ。


 それが今、目の前で一瞬にも近い速さで次元の歪みが発生し、ディメンションゲートが開いた。ありえないことだった。


 混乱する思考の中、”侵入者”の単語が戦闘員の頭に浮かぶ。

 侵入者を確保しなければと、戦闘員は、2人の侵入者を見た。


 その時、ディメンションゲートから出た何かが侵入者1人を頭から包んだ。咄嗟に逃げられると思ったが、それは間違いだと次の瞬間に気づいた。


 ディメンションゲートから現れた未知の生命体(アンノウン)に喰われたのだ。


 シルバー色の金属のようなゴツゴツとした頭、赤いガラス玉のような目がふたつ見えた。1匹の未知の生命体(アンノウン)が1人の侵入者に喰らい付いていた。

 戦闘員達の目の前で、侵入者1人が咀嚼され、飲み込まれる。そして、逃げようとするもう1人の侵入者も、同じように喰われた。

 後には、血溜まりだけが残った。


 ディメンションゲートから、頭しか出ていなかった未知の生命体(アンノウン)が金属音を立てながら出てこようとしている。


 戦闘員の班長が、叫んだ。


「シールドだ!! シールドを張れ!! 部屋の外に絶対に出すな!!」


 絶対に出したら駄目だ、確実に死者がでると班長は思った。


 部屋全体にシールドが張られる。

 シールドは、未知の生命体(アンノウン)を閉じ込める際や未知の生命体(アンノウン)から身を守る際などに使われる。


 今回は、侵入者を誘導した部屋がよかった。       

 非常時の避難場所に指定された部屋だったため、部屋全体にシールドを張る設備が設置されていた。でなければ、移動式の大型シールドが必要になり、間に合わなかっただろう。


 戦闘員達のイヤホン式の無線から指示が聞こえてくる。


「室内の戦闘員は、室外へ退避してください!! 対未知の生命体(アンノウン)装備の戦闘員がもうすぐ到着します!」


 室内の6名の戦闘員達は、未知の生命体(アンノウン)に向かって銃を構えたまま、入口に向かって後退する。

 対人用のゴム弾や実弾では、ほとんど役には立たないが、無いよりはマシだ。


 未知の生命体(アンノウン)が1匹、ディメンションゲートから出てきた。

 頭が大きく、胴体は短く、足は6本足で昆虫のような歩き方だ。高さは、4メートルほどだろうか。天井にも届きそうな大きさだった。

 カツンカツンと嫌な金属音が室内に響く。


 部屋の入口までの距離が異様に遠く感じる。

 ジリジリと後ろに後退しながら、戦闘員の額に嫌な汗が滲む。


 次の瞬間、未知の生命体(アンノウン)が突進してきた。


「撃て!!」


 班長が叫ぶと同時に、戦闘員6名全員で撃つ。


 無駄だとわかっていながら、ゴム弾と実弾で攻撃するが、ダンダン! カンカン! と金属のような体にむなしく弾かれてしまう。全く効いていない。

 未知の生命体(アンノウン)が迫る!


 その時、部屋の入口のドアが勢いよく開き、8名の戦闘員がなだれ込む。同時に、未知の生命体(アンノウン)に向けて、未知の生命体(アンノウン)用の銃での攻撃が始まる。威力が格段に違う。


 未知の生命体(アンノウン)が後退した。


 突入してきた戦闘員の1人が叫ぶ。

「部屋の外に、対未知の生命体(アンノウン)用の装備がある!」


 それを聞いた1班の6名が部屋の入口に向かって、未知の生命体(アンノウン)を警戒しながら走る。


 残った8名の攻撃に未知の生命体(アンノウン)の体のいたるところが吹き飛ぶ。


「体のコアを狙え!!」


 未知の生命体(アンノウン)の体には、赤く光るコアがあり、コアが急所だ。コアを壊せば倒せる。

 ある場所は個体差があるが、目の前の未知の生命体(アンノウン)のコアはすでに露出していた。


 1班の6名も装備を替え合流し攻撃に加わる。

 その時、未知の生命体(アンノウン)のコアにヒビが入り割れて吹き飛んだ。


 ズン!! と大きな音を立てて未知の生命体(アンノウン)が沈むように倒れるて動かなくなった。


 戦闘員の間に安堵の空気が流れる。

 班長が叫んだ。


「ディメンションゲートを閉鎖するまで気を抜くな!! 新しい未知の生命体(アンノウン)が現れないか警戒を怠るな!!」


 ディメンションゲートは専用の装置で閉鎖するが、動作させてから閉鎖完了するまで、時間がかかる。

 ディメンションゲートのサイズにもよるが、少なくとも30分〜1時間は最低時間がかかるのだ。

 その間、ディメンションゲートから出現する未知の生命体(アンノウン)を倒し続けなければならない。


 この後、無事にディメンションゲートは閉鎖された。


ーーーーーー


 ある部隊の部隊長に報告が届いていた。

 OSMAUD(オズマウド)には、特殊部隊が存在する。

 特殊部隊は、さまざまな専門分野に特化した技術と知識を持ち、各分野によって適切な任務にあたっている。


 部屋の中にノックの音が響く。

 室内にいる人物が返事をする。


「どうぞ」


「失礼します」


 男性隊員が挨拶をして部屋に入り、椅子に座り机に置かれたパソコンで仕事をしている人物の前に歩み寄り、敬礼をして話しかける。


「お忙しいところ失礼します。峰村(みねむら)部隊長ご報告があります。お時間頂いてよろしいでしょうか?」


「はい。どうぞ」


 峰村と呼ばれた男性は、仕事の手を止めて答えた。


 峰村みねむら 英知えいちは、ある部隊の部隊長だ。

 年齢は、30歳。サラサラの黒髪を真ん中分けにしている。形の良い小さな頭が印象的だ。

 瞳は黒く、右目の下に泣きぼくろがあり、眼鏡をかけている。

 身長は、170センチ代で、体格は細くもしっかりとした無駄の無い筋肉がしっかりついている。計画的で効率的な的確なトレーニングが行われたことがよくわかる。


 男性隊員が滑舌良く、はきはきと報告する。


「機密施設で不審者の侵入事件とディメンションゲートが発生し対処しました。後ほどデータもお渡し致しますが、取り急ぎご報告したほうが良いと判断しご報告に参りました。こちらがその資料です」


 隊員が、資料を峰村部隊長に手渡した。


「ご報告は、二つ。一つ目は、短時間で次元の歪みが発生しディメンションゲートが開きました。現在、詳細が分かるまでは、箝口令を敷いています。原因が不明な上、次元の歪みとディメンションゲートが自然発生的に時間をかけて発生することを前提にしてさまざまな体制を組んでいますので、混乱を避けるための対応です。正規ルートで然るべき方へ報告をし、対策を練ってから情報は解禁するべきと判断しました」


 報告に合わせ、峰村が資料に目を通す。

 その様子を見ながら、隊員が報告を続ける。


「二つ目は、侵入者の目的とアクセスしたと思われるものを調べていたところ、侵入者の目的の対象が、こちらの部隊の進行中の任務に関わることでしたので、取り急ぎご報告に上がりました。」


 報告を受け、受け取った資料に峰村が目を通し終わり、隊員に言った。


「わかりました。適切な対応、ありがとうございます。助かりました。こちらも取り急ぎ対処します」


 男性隊員は、一礼して部屋を出て行った。

 峰村は、すぐに対処のために必要な電話をかけ始めた。

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