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最強のギルド職員は平和に暮らしたい  作者: 月輪林檎
第一章 ギルド職員になった
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待ち合わせ

 家にある時計を見て、八時の前だと確認してから、雪白を持って家を出た。昔は、鐘の音で時間を知らせていたみたいだけど、時計が普及してからは、お昼の十二時くらいにしか鳴らなくなった。


 ギルドまで小走りで走っていくと、入り口にマイラさんが立っていた。腕を組んで壁に寄りかかってる。まずい、少し待たせてしまったのかも。


「すみません! 遅くなりました!」


 私は慌てて駆け寄って頭を下げた。すると、マイラさんは、安心させるようにニコッと笑った。


「全然大丈夫だよ、アイリスちゃん。多分、時間ぴったりだし」


 時計がどこにでもあるわけじゃないから、実際に遅れてきたのかは、よく分からない。でも、外に出て待たせているのは変わらないから、取りあえず謝るのは重要な事だ。


「それに、ここで待っていたというより、目覚ましのために、日を浴びてるだけだしね」


 よくよく見てみると、マイラさんの目の下に隈ができていた。


「もしかして、徹夜をしてくれたんですか?」

「まぁね。他の仕事も平行してたらこんな時間だったよ」

「すみません。忙しかったのに、私の防具の調整まで」

「全然、構わないよ。早速、着てもらおうかな。最終調整もあるし」

「わかりました」


 マニラさんと一緒に、防具屋カラメルまで向かう。中に入った後、マニラさんが用意してくれた防具に袖を通していく。マニラさんが用意してくれたのは、見た感じ普通の服でしかない。違いと言えば身体の要所要所に、金属のプレートがあるだけだった。


「これが防具ですか?」

「そうだよ。見た感じ、頼りないかもだけど、特殊な繊維で出来ていてね。そんじょそこらの魔物の攻撃なら防いでくれるよ。アイリスちゃんは速さを活かした戦い方でしょ? だから、そこまで防御を固める必要がないかなって。まぁ、支給品が元々そんな感じだから、それにしただけなんだけど」


 ギルド支給の防具は、防御型と速度型の二つがあるみたい。私が支給されたのは、その内の速度型だ。

 軽く身体を動かして、防具が動きの邪魔にならないかを確認する。速度型なだけあって、動きを阻害するような感じではない。


「すごく動きやすいです。これなら、邪魔にはなりませんね」

「そう? 腕回りがきついとか胸の辺りがきついとかもない?」

「はい。大丈夫です」


 マニラさんは、私の身体を隅々まで見て、防具がきちんと着けられているかを確認している。私が気が付いてないだけで、ちゃんと着ることが出来ていない可能性もあるからね。


「うん。大丈夫そうだね」

「調整してくれて、ありがとうございます」

「それが仕事だからね。そういえば、アイリスちゃんは、自分の防具を作らないの?」


 マニラさんが首を傾げて訊いてくる。


「正直、こんなに急に調査の仕事が来ると思っていなかったので、考えていなかったです」

「そうなんだ。確かに、急に周辺調査をしないといけなくなったって聞いたなぁ」

「そうなんですか?」


 私が聞いていない話なので、少し驚いた。


「アイリスちゃんは、聞いていないんだね。じゃあ、今日組むペアの人に聞かされるかもしれないよ」

「だといいんですけど」


 そういえば、今日ペアを組む人も教えてもらっていない。情報漏洩を防ぐためとかなのかな。でも、マニラさんは知ってるし、違うのかもしれない。


「もし良かったら、アイリスちゃんの防具作ってあげようか? お代はもらうけど」

「いいんですか?」


 私は、防具屋に知り合いがいるわけではないので、マニラさんが防具を作ってくれるというのは魅力的だ。


「じゃあ、今度どんなのが良いか話し合おうっか」

「はい」

「ところで、もうそろそろ行かなくても大丈夫?」


 マニラさんは、壁に掛けられている時計を指さしてそう言った。私が、そちらを見ると、時計の針が九時を刺そうとしていた。


「本当だ。また手が空いたら来ます!」

「いってらっしゃい」


 私は、カラメルを出て、ギルドの入り口に向かう。そこで、私とペアになる人と合流することになっている。


「えっと……」


 入り口をキョロキョロとしてもそれらしい人が見当たらない。というか、冒険者が多いので、どの人がその人なのかが分からない。


「ねぇ」


 いきなり背後から声を掛けられた。本当に突然だったので、びっくりしてビクッと肩を跳ね上げてしまった。


「は、はい!」


 さっと後ろを向くと、すごく綺麗な人が立っていた。白く光って見える髪を肩口まで伸ばし、翡翠色の眼を眠たげに伏せている。そして、最大の特徴が……


「猫耳?」


 その人の頭頂部付近に、髪と同じ白色をした猫のような耳が付いていた。ピクピク動いているから、本物なんだと思う。


「猫人族は嫌い?」


 眠たげなのは変わらないんだけど、どこか悲しげにしているようにも見える。


「い、いえ! 獣人の方は、初めて見たので、少し驚いてしまっただけです。私は、全然嫌いではないですよ」


 私がそう言うと、嬉しそうに耳を動かす。それに、さっきは気が付かなかったけど、白い尻尾も揺らしていた。


「私は、白猫人族のキティ・ガッタ。キティって呼んで」

「わ、私は、アイリス・ミリアーゼです。アイリスと呼んでください」

「ん、アイリス。じゃあ、行くよ」

「へ? あっ、はい!」


 多分だけど、キティさんが、私とペアを組む人なんだと思う。悪い人ではなさそう。とても可愛い人だし、仲良くなれるといいな。


 私とキティさんは、街の外を目指して歩き始めた。

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