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最強のギルド職員は平和に暮らしたい  作者: 月輪林檎
第三章 大規模調査

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大規模調査の書類

 私が職員の業務に戻ってから、三日が経った。いつも通りに職員の業務である依頼の複写をしていると、カルメアさんから大規模調査についての書類を渡された。


「取りあえず、今は仕事に集中して。これに関しては、家で目を通しておくようにね。リリア達にも話していい内容だから、そこは心配しないで」

「はい。分かりました」


 カルメアさんの言うとおり、仕事を終わらせて、リリアさんと一緒に家に帰った後、夕食とお風呂を済ませてゆっくりとしながら、書類に目を通していく。


「……なるほど」

「悪い事が書いてあったの?」


 リリアさんは、心配そうにそう訊いた。まぁ、真剣な顔で書類を見て、ため息をつきつつ納得していたら、心配してもおかしくないよね。ただ、別に悪い事が書いているわけではない。


「いえ、私の組み分けが書かれていました。アルビオ殿下、キティさん、サリア、ライネルさん達と同じ組だそうです。他にも何名か一緒に来るみたいですね」

「えっ? 殿下も参加されるの?」


 リリアさんは、アルビオ殿下が参加される事に驚いていた。普通、殿下は街に待機して、報告を待つって思うはず。でも、アルビオ殿下は、自分でも調査しないと気が済まないタイプだ。


「はい。そういうお方ですから。多分、この組み合わせは、私に気を遣っていくださっているんだと思います」


 メンバーは、私の事情を軽く知っている人ばかりだ。ガルシアさんかアルビオ殿下が気を利かせてくれているとしか考えられない。


「向かうダンジョンは、比較的近いところみたいですね。それに、中級者用だから、そこまでの危険は無さそうです。このメンバーなら、尚更ですね」

「まぁ、確かに、皆さん強いもんね。何か予想だにしない事が起こらない限りだけど」

「ああ、それはそうですけどね。でも、そう何度も起こらないと思いますけど」

「そうだね」


 リリアさんは、そうやって返事をしたけど、あまり感情は入っていなかった。まぁ、私もまた問題が起こるって思うしね。

 そうして読み進めていくと、最後に他の書類とは筆跡の違うものが混じっていた。


「明日、アルビオ殿下からお話があるみたいです」

「世間話?」


 キティさんが首を傾げてそう言う。


「多分、違うと思いますけど、殿下は読めないお方なので、可能性はありますね」

「アイリスは、殿下と仲良し」

「いえ、そんな恐れ多い。単に、私の戦闘力を評価していただいているだけですよ。そのせいか、何度も勧誘をうけていましたので、お話しする機会が多かったんです」


 実際に、私が学校に在籍している期間、アルビオ殿下はかなりの頻度で訪問してきた。その度に勧誘を受けていたので、他の生徒達よりも話す機会が多い。


「それだけ期待されていたって事なんだね」

「その期待には応えませんでしたけどね」

「アイリスちゃんの胆力って、本当に凄いよね。私だったら、拒否するなんて事出来ないと思うよ」


 アルビオ殿下がこの国の王子だということもあるけど、アルビオ殿下の誘いを断る人はほぼいない。それは、アルビオ殿下からの誘いは、武芸者にとっては誉れ高きことと言われているからだ。軍部の頂点にいる方からの誘いなので、当然と言える。


「まぁ、私は騎士団に興味がなかったですしね。流されないようにしていたってだけですよ。ただ、結局沢山戦っていますけどね……」


 私がそう言うと、リリアさんは苦笑いをした。キティさんは、私の横に座ると、ごろんと転がり頭を私の膝に乗せる。私は、キティさんの頭を優しく撫でる。多分、キティさんなりの慰めかな。実際、癒やされるんだけどね。


「調査の開始は明後日だっけ?」

「そうですね。奥まで調べに行くので、また泊まりになります」

「寂しいけど、仕方ないね。せめて、調査に行くまでは一緒にいてくれる?」


 リリアさんは、ちょっと恥ずかしそうにそう言った。多分、一緒に寝て欲しいって事だと思う。


「はい。良いですよ。キティさんも大丈夫ですよね?」

「ん……」


 キティさんは眠そうに返事をした。ずっと頭を撫でていたから、眠くなっちゃったんだと思う。


「キティさん、もう寝ますか? それだったら、きちんと自分の部屋で眠らないと、風邪を引いてしまいますよ」

「ん……分かった……」


 キティさんは、最後に私のお腹に顔を擦りつけてから、眠るために自分の部屋に戻っていった。


「私達も寝ますか?」

「う~ん、もう少しお話しよう。こっちに来て」

「? はい」


 リリアさんに呼ばれたので、リリアさんの横に座ると、すぐに横から抱きしめられた。


「リリアさん?」

「アイリスちゃんが、私達と寝て癒やされて要るみたいに、私もアイリスちゃんを抱きしめる事で癒やされるんだよ」

「ふふふ、持ちつ持たれつってことですね。私も抱きしめられると癒やされますよ」

「それは、私も嬉しいな。ずっとアイリスちゃんやキティと一緒にいたいよ」

「私もお二人とずっと一緒にいたいです」


 私がそう言うと、リリアさんもニコッと笑った。そして、少しの間お話をして、一緒にベッドで眠った。リリアさんは、幸せそうな表情で眠っていた。

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