表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のギルド職員は平和に暮らしたい  作者: 月輪林檎
第二章 ダンジョン調査

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/127

予想外の場所

改稿しました(2021年11月15日)

 最初の落下の時に、減速の仕方を学んだので、今度は効率よく減速することが出来た。ゆっくりと、地面に降り立つ。


「はぁ……今度は、どこまで落ちたんだろう……」


 私は、すぐに周りを見回す。落ちた場所によっては、かなり危険な事になる。サハギンの群れならまだしも、さっきの上位種みたいなサハギンがいるかもしれない。


「嘘でしょ……あり得ないよ……」


 私の正面、その向こうに、大きめの影が存在した。それは、今まで見たサハギンを巨大化させたような存在だった。私の三倍程の身長がある。さらに、身の丈よりも長い三つ叉の槍を手にしていた。


「広い空間に、魔物が一匹……典型的なダンジョンのボス部屋……だっけ?」


 学校で習った気がする。学校では、本当に簡単なことしか習わないから、他の事は知らなかった。でも、そんな事は、今問題じゃない。一番の問題は……


『シャアアアアアアアアアア!!!!』


 このボスと戦わないといけない事。私は、ボス部屋の中心に落ちてきた。巨大なサハギンは、その少しだけ奥にいる。入口の反対側だけど、私は入口よりもサハギンに近い。


「何か、変な感じ」


 この場に降りてきてから、ボス部屋だと気付いて、少しだけ違和感を感じていた。それは、目の前にいるボスサハギンから、さっきまで追ってきていたサハギンの上位種よりも、威圧感を感じなかったからだ。もしかしたら、追ってきていたサハギンは、上位種では無く特殊個体だったのかもしれない。


『シャアアアアアアアアアア!!!!』


 ボスサハギンが、私に向けて槍を投げてくる。


「!!」


 すぐに、その場から飛び退いて避ける。その間に、ボスサハギンは、こっちとの距離を詰めてきていた。投げた槍を手にして、突き出すのでは無く、薙ぎ払ってきた。私は、雪白で受け止める。少しだけ押されたけど、耐えることが出来た。やっぱり、あのサハギンよりも弱い。つまり、ゴブリンキングより弱いってことだ。


「はぁっ!」


 雪白を力一杯上に跳ね上げる。当然、槍も上に弾かれる。上に弾かれた間に、ボスサハギンに接近していく。


「普段は、あまりやりたくないんだけど……『衝打(しょうだ)』!!」


 急接近した勢いを、そのままボスサハギンにぶつける。普通のサハギンと違って拳で貫通させることは出来ない。でも、【武闘術】の(アーツ)である『衝打』は、衝撃を内部に伝えて破壊する事が出来る。ボスサハギンの体内にも、私の攻撃の衝撃が伝わったようで、口の端から血が漏れている。


 そのまま追撃をするつもりだったけど、ボスサハギンが空いている手で、鬱陶しそうに薙いでくるので、一度後ろに下がる。おかげで、槍の間合いになってしまうけど、致し方ない。


「やっぱり、嫌な感じ……」


『衝打』の感覚は、少し苦手だった。相手の内臓を破壊している感じが伝わってくるからだ。それに、下手をすれば相手を破裂させてしまい、臓物が自分に降りかかってしまう。色々な意味で、あまり使いたくない(アーツ)だ。


『シャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』


 ボスサハギンは、怒り狂った形相で、槍を振り回している。むやみに近づけば、巻き込まれてしまう。間合いの外から、隙を窺うしかない。そう思っていると、突然こっちに突っ込んできた。そして、連続で高速の突きを繰り出してくる。


「すぅ~~……」


 肺に空気を溜め込み、槍の先端を正確に弾いて、身体に当たらないように防いでいく。でも、これがどのくらい続くのかが分からない。かれこれ、五分間も続いている。集中が切れなければ、問題ないけど、このまま続いてしまうと、こっちが不利な気がする。だから、出し惜しみはしていられない。


「『グロウ』!」


 雪白が、白く輝いていく。輝いた状態の白雪が、槍に当たると、明らかな変化が生まれた。


『シャアッ!?』


 ボスサハギンが、目を見開く。槍の先端の一部が斬り飛ばされているのだから当然だ。『グロウ』は、剣に光の熱を纏わせることで、切断力を上げる効果を持っている。ただ、短い名前とその単純な効果に反して、少し難易度が高い(アーツ)だ。常に魔力を流すことを意識していないと、光が霧散してしまう。


「一気に決める!」


 全速力で駆ける。ボスサハギンが、槍を繰り出してくるけど、今の私には意味のない攻撃だ。光を纏った雪白で、槍を斬り裂く。ボスサハギンの持つ槍は、もうその役割を果たせるだけの力はなくなっている。


「『グロウ・ピアース』!!」


 最後の踏み込みで【疾風】の効果を受ける事で、最大限の加速を得る。そして、その勢いのまま光輝く雪白を、ボスサハギンの胸に突き刺した。ボスサハギンは、最後まで抵抗しようとしていたけど、私の加速についてこれず、胸に穴を開けることになった。


「ズレた……!」


 胸の魔石を狙ったつもりが、ほんの少し狙いがズレてしまった。ボスサハギンは、すぐに後方に下がる。そして、胸を押さえながら私を睨んできた。でも、すぐに表情が恐怖に変わった。私の雪白に眩いばかりの光を纏っていたからだ。


「『グロウ・レイ』!」


 雪白から発せられた熱線が、真っ直ぐ、ボスサハギンの身体を焼いていった。本当は、魔石を狙ったけど、ギリギリのところで避けられて、お腹付近に命中した。結果、ボスサハギンの身体が千切れることになった。下半身と上半身が分断された。しかし、血が出るような事はなかった。熱線によって傷口が焼かれたからだ。そのボスサハギンの頭を雪白で斬った。


「ふぅ……これで、終わり」


 このダンジョンのボスということもあって、結構消耗してしまった。


「このボスのおかげで、色々と課題も見付かったなぁ。魔石を取り出して、少し休憩しておこう」


 ボスサハギンの魔石を取り出すと、身体が灰に変わった。そして、そのヒレだけが残った。


「これは、折り曲げれば、ポーチに入るかな」


 無理矢理ポーチに入れて、部屋の端っこに移動する。ボスとの戦いで消耗した体力を回復させるために、少しの間休むことにした。

読んで頂きありがとうございます

面白い

続きが気になる

と感じましたら、評価や感想をお願いします

評価や感想を頂けると励みになりますので何卒よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ