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最強のギルド職員は平和に暮らしたい  作者: 月輪林檎
第二章 ダンジョン調査

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お迎え

改稿しました(2021年10月31日)

 頑張って定時で仕事を終わらせた私は、キティさんを迎えに病院に向かった。リリアさんは、家で退院と歓迎の記念パーティーを行うために、準備をしてくれている。キティさんが喜んでくれるか分からないけど、せっかくだからお祝いしたいって、リリアさんと話し合って決まった事だ。


「あっ、キティさん」


 病院の中に入ると、待ち合い場所にキティさんが座っていた。その傍には、アンジュさんもいる。


「もう、ここにいたんですね。まだ、病室かと思っていました」

「ん。アイリスが来る前に、手続きを終わらせてた。もう、すぐに出る事が出来る」


 キティさんは、入院時に使っていた荷物を手に立ち上がる。隣に座っていたアンジュさんも立ち上がった。


「一応、検査の結果は正常だけど、しばらくは普通に生活をして、様子見をしてね。最低でも、一週間は安静に生活すること。仕事なんてしちゃダメよ」

「分かってる」

「アイリスちゃんも、ちゃんと見張っておいてね」

「はい。ちゃんと見ておきます」


 キティさんに念押ししつつ、私にも監視を頼んだ。アンジュさんは、キティさんが言いつけを守りそうに無いと思っているのかも。まぁ、私もキティさんは、動き回りそうって思ったけど。


「じゃあ、そろそろ行きましょうか。アンジュさん、ありがとうございました」

「ありがとう」


 私とキティさんは、アンジュさんに頭を下げる。


「医者として当たり前の事をしただけだから。アイリスちゃんも、何かあったら、すぐに病院に来てね。特に悪夢関係なら尚更ね」

「はい、分かりました」


 アンジュさんに小さく手を振ってから、病院を出て行く。外に出て、少しするとキティさんが口を開いた。


「アイリスの家は、どこら辺にあるの?」

「そういえば、伝えていませんでしたね。東通りを進んだ途中を曲がったところです」

「そうなんだ。私の家の反対側だ」


 キティさんの家は、西側にあったっぽい。確かに、西側の開発問題は、街中でも噂が広まっていた気がする。


「そういえば、お金はどうすればいい?」

「お金?」


 私とキティさんは、同時に首を傾げる。


「家賃」

「要りませんよ?」


 私達の間で、沈黙が生まれた。


「お金欲しさに、キティさんと住もうなんていったんじゃないですよ。私が一緒に住みたいから、ガルシアさんの提案に乗ったんです」

「むぅ……それだと、私は、貰ってばかりになる。アイリスとリリアとは、対等でいたい」


 キティさんは、尻尾を一振りしながらそう言った。


「でも、リリアさんからもお金は頂いていませんし……どうしましょうか……?」


 キティさんの言っている事は分かると言えば分かる。でも、私はお金を取る気はない。何かいい考えはないものかと、周りを色々見回す。すると、ピコピコと動く、耳に眼がいく。


「じゃあ、キティさんの耳と尻尾を触らせてくれませんか?」

「えっ!?」


 キティさんは、一気に顔を赤く染めた。すごく驚いているみたいだ。目の前で動いていて、少しだけ気になっていたから、触ってみたかっただけなんだけど。もしかしたら、獣人族の人に対してそう言うのは、かなり失礼な事だったのかな。でも、それだと赤くなる理由が分からないよね。


「えっと、全然ダメならいいんですけど」

「ん。獣人族の中で、耳や尻尾を触らせてって言うのは、プロポーズになるらしい。親代わりが言ってた」

「うぇ!? そうなんですか!?」


 知らぬ間に、キティさんにプロポーズしていたみたい。思わず、こっちも顔が赤くなる。獣人族にそんな風習があるとは知らなかった。


「でも、アイリスになら触らせてあげても良いよ」

「本当ですか!?」

「ん。アイリスにそんな意図がない事は知っているし」


 キティさんの耳と尻尾を触らせて貰える事になった。少し恥ずかしいことを言ってしまったことになったけど、それは考えないようにしよう。そして、開き直って触らせてもらおう。


「ここが、私達の家ですよ」


 そんなこんなで、家まで辿りついた。


「意外と大きい」

「一応、世帯向けの家ですからね。じゃあ、中に入りましょう」


 扉を開けて、中に入る。


「ただいま」

「お邪魔します」

「違いますよ、キティさん。ここは、もうキティさんの家でもあるんですから」


 私がそう言うと、キティさんは、一瞬きょとんとした後に、気恥ずかしそうに、


「ただいま……」


 と言った。


「おかえりなさい、キティさん。こっちです」


 キティさんをリビングに案内する。リビングへの扉を開けて、中に入る。


「おかえり! 二人とも!」


 帰ってきた私達を、笑顔のリリアさんが迎えてくれた。


「料理も出来てるよ。手を洗ったら、早速食べよう!」

「はい」

「ん」


 私とキティさんは、洗面所で手を洗う。そして、リリアさんが用意してくれた食事を皆で囲む。


「明日は、私達二人揃って休みだから、キティさんの荷解きを手伝えるよ」


 キティさんの荷物を部屋に運んではいるけど、それを配置したりはしていない。キティさんの私物なので、私達が勝手にやるのはダメだと思ったからだ。


「ん。ありがとう。後、キティで良い。リリアとは、同い年みたいだから」

「そう? 分かった。じゃあ、そう呼ばせてもらうね。それで、明日は荷解きなんだけど、キティのベッドが用意出来てないんだ」

「そうなの?」


 キティさんが、私に確認をする。


「はい。キティさんが、どんなベッドを使うか分からないので、一緒に買いに行こうと思いまして」

「じゃあ、私は、床?」

「いいえ! さすがに、そんなこと言いませんよ! 一応、ベッドを買うまでは、私達と同じベッドで寝て貰おうって話になっています」

「三人で同じベッド?」

「はい。私達二人でもかなり余裕がありますから」


 私の両親のベッドは、リリアさんと二人で寝ていても、まだ余裕があった。なんで、こんなに大きなベッドにしたのか分からないけど、今、役に立っているから有り難いかな。


「私は、リリアさんと一緒に寝ないと、悪夢を見てしまうので、ずっと一緒に寝ないといけないんです」

「そういえば、そんなこと言ってた。でも、ダンジョンに行くときは、どうするの?」

「へ?」


 キティさんの言葉に、少し呆けた声が出てしまう。


「調査任務は、周辺調査の他に、ダンジョン調査もある。これは、新しいダンジョンが出来たときか、ダンジョンが変異してしまったとき、何かしらの異常があったときに、何層か調査するっていうのがある。時々、深くまで調査することもあるけど、それは極希。基本的には、浅い場所での調査になる。でも、その期間は、少し長めになってる。つまり、泊まりが普通って事」


 そういうことをするって話は聞いたことあるけど、完全に失念していた。


「そういえば、そういうのがありましたね……どうしましょう?」


 ちょっと困った事が出来てしまった。一日二日なら、もう慣れちゃったから、寝られなくても問題ないけど、それよりも長くなると、少し厳しいかもしれない。


「キティと一緒に寝るのは、ダメなのかな?」


 リリアさんが、そう提案した。その提案に、眼をぱちくりとする。正直、あまり考えていなかった。リリアさんと寝れば大丈夫だったから、他の人との検証はアンジュさんとしかやっていない。


「キティさんとですか? 寝てみないと分からないですね」

「じゃあ、ベッドを買ったら、検証してみないとだね」

「そうですね」

「ん」


 私達は、リリアさんの料理に舌鼓を打ちつつ、色々な話をした。そうして、私達は、十分に打ち解けることが出来た。


 それぞれで、お風呂に入った後、寝室に向かって三人で並ぶ。順番は、リリアさん、私、キティさんの順だ。いつも通りリリアさんのおかげで、すんなりと眠りにつくことが出来た。


 ────────────────────────


 アイリスが寝た後、リリアとキティは、まだ起きていた。


「アイリスは、いつもこんな感じ?」


 アイリスは、寝入る寸前に一瞬だけ魘されそうになっていた。すかさずリリアが抱きしめる事で、落ち着いて眠りについた。


「そうだね。とにかく抱きしめて上げる事が、効果的って感じかな。時々、発作的に起きる悪夢の蘇りも同じように抱きしめる事で、安心させられるよ」

「私がやっても効果があれば、アイリスも安心して仕事とかが出来るかもしれない」

「うん。私もそうだと、嬉しいかな。どんな時でも私が一緒にいられるわけじゃないから」


 リリアがいない場所で発作を起こされてしまうと、リリアが落ち着かせる事は出来なくなる。それは、キティがいても同じ事なのだが、一人と二人では、カバー出来る範囲が異なってくる。


「私がいる事でアイリスちゃんが落ち着くって効果も、いつまで続くか分からないし、早く治ると良いんだけど。呪いばかりはね……」

「呪い……」


 キティの顔が、少しだけ沈んだ表情になった。でも、すぐに元の無表情に戻る。そして、まっすぐリリアの眼を見る。


「私もアイリスを支えられるように、頑張る」

「うん。一緒に頑張って、アイリスちゃんを支えてあげよう」


 アイリスの知らないところで、二人の絆が少し深まった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 真相隠しは為になると抜かした癖に、モンスター引寄せからだけじゃなく、悪夢呪いからもアイリスさんを守れなかったギルマスなどの大人連中を責めたい。。。 しかし一方、口実として女の子と一緒に寝る事…
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