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最強のギルド職員は平和に暮らしたい  作者: 月輪林檎
第一章 ギルド職員になった

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原因

 アンジュさんを呼んで、キティさんの様子を見てもらうと、まだ目覚めていないみたいだった。私が握った手に、少し反応したみたいだけど、完全に無意識下での反応だったよう。でも、これは、良い兆候みたい。


「後、もう少しね。近い内に、目が覚めると思う」

「本当ですか!?」

「うん。明日からも話しかけてくれる? キティさんの事を少しでも知っている人の方が、呼び掛けに効果があると思うから」

「分かりました!」


 キティさんがもうすぐ目覚める。それを聞けただけで、少し嬉しくなった。


「じゃあ、アイリスちゃんも病室に戻ろうか」

「え? ここにいたらダメですか?」

「ダメ。動き回ってもいいって言ったけど、まだ本調子じゃないんだから」


 アンジュさんの言うとおり、少し疲れが出てはいるけど、すぐに戻らないとヤバいという感じではない。私は、ジッとアンジュさんを見る。


「そんな眼で見ても無駄。さっ、早く戻る!」


 私は、アンジュさんに追い出されて、自分の病室に戻った。そして、ベッドに横になる。正直、やることがないので、ぼーっとするしかない。そう思ってたら、お見舞いに来てくれたリリアさんが、いくつか小説を持ってきてくれた。


「入院中暇だと思って持ってきたんだけど、私の趣味だから、アイリスちゃんは、楽しめるか分からないけど、大丈夫?」

「全然、大丈夫です。暇の方が嫌なので」


 リリアさんが、持ってきた小説は、恋愛小説が多かった。小説は基本的に二種類ある。それは、恋愛小説か推理小説だ。私は、どちらかというと、推理小説の方が好きだけど、たまには恋愛小説をヨムのも良いよね。


 ────────────────────────


 翌日、翌々日とキティさんの手に、自分の手を重ねて色々と話しかけた。キティさんの反応は少しずつ大きくなってくる。


 最初は、指がピクッと動くくらいだったのが、手を軽く握るまでいった。それでも覚醒するには至っていない。それどころか、半覚醒にもなっていないらしい。アンジュさん曰く、あまり焦っても仕方ないとの事。今は、ただ自分で眼を覚ますのを待つしかない。


 キティさんが、目覚めるのを待っている間、私は、まだ病室にいて診察を受けていた。診察も終わると、リリアさんが持ってきてくれた小説を読んで、暇を潰した。傷とかは、完治しているから、もう退院しても良いと思うんだけど。私は、アンジュさんに、そのことを訊いてみた。


「そういえば、私、この前退院したくらいまで回復してますけど、まだ退院にはならないんですか?」

「実は、ギルドの方から、しばらく病院にいさせて欲しいって言われてるんだよね。今の状態が、この前退院したときと同じくらいだから、これからは、精密検査の毎日になるから、よろしくね」

「精密検査ですか?」


 この前は、精密検査はやっていないので、どんなことをやるのか、何故やるのかが分からない。


「うん。この前退院したときに倒れたって聞いたからね。同じような状態で検査を受けてもらうの。それで、せっかくだから、精密検査で、しっかり調べるって事になったの。お代はギルドから貰ってるから、気にしないで良いよ」

「何か、入院する度にギルドにお金を払って貰ってる気がします」

「まぁ、ギルドの仕事で怪我を負っているわけだから、当然でしょ。アイリスちゃんは、気にしないで良いんじゃない?」

「それは、そうですけど」

「そこら辺の相談は、ギルドに戻った後にやること。じゃあ、私は、もう行くね」


 アンジュさんは、そう言って診察を終えて病室を去って行った。


「はぁ、まだ検査続きか。ついでに、不眠症の原因も探ってくれないかな」


 淡い思いを抱きながら、私は、小説を読み始めた。


 ────────────────────────


 そうして、早くも一週間の時が過ぎていった。


「精密検査の結果が出たよ」


 一週間の間に、行った精密検査の結果が出た。だけど、アンジュさんは、少し難しい顔をしていた。


「何か、ダメな事でもありましたか?」


 ちょっと不安になって、訊いてしまう。


「うん……まぁ、正直、これは私達、病院がやっちゃいけないことなんだけどね。アイリスちゃんの身体は……呪いに蝕まれてる」

「!!」


 サリアと話していた事が本当になった。本来、協会の仕事であるはずの呪いの特定。それを、秘密裏にやってくれたみたい。バレたら、すごく揉めることになるはずなのに、そこまでやって貰えるとは思わなかった。


「いつからかも分かれば良いんだけど、それは分からないんだ。ごめんね。ただ、呪いの種類は、特定出来たよ。アイリスちゃんも分かっていると思うけど、呪いの種類は、悪夢。その人が、抱えている事を責めるようなものを見るみたい。それがなくなると、普通の悪夢になるね。そして、問題は、その呪いの強さだね」


 呪いには、種類の他に強さもある。強くなればなるほど、解呪が困難になる。


「どのくらいの強さなんですか?」

「一番上だよ。おまけに隠蔽力もかなり高いから、本当に少しの違和感だった。これを解呪するのは、ほぼほぼ、無理かもしれない。ぼったくりの教会で、最上級の解呪ってなったら、借金しないと足りないから」

「ああ……」


 今の私の給料では、何十年も掛けないと足りない金額らしい。本当、あの教会は、こんな金額で、どうやって成り立っているんだろう。


「幸い、アイリスちゃんは、リリアさんがいるから、呪いの効果が薄い。そこまで切羽詰まってないから、借金をする必要はないよ。もし、症状が悪化したら、病院に来ること」

「分かりました」

「じゃあ、後、二日は病室にいてもらうから。それと、その二日間は、リリアさんが一緒に寝ることになるから、そのつもりでね」

「え? でも……」

「呪いの効果が、どこまで薄れるかを確認するためにも必要なことなの。リリアさんからも理解してもらったから」


 そう言って、アンジュさんは、病室を出て行った。他にも診ないといけない患者さんもいるので仕方ない。


「というわけで、来ちゃった」


 入れ替わりに、リリアさんが病室に入ってくる。


「こんにちは。すみません。この前は断ったのに……」

「いいよ。アイリスちゃんが、なんでそう言ったのか知ってるから。それに、何のために呼ばれたかも分かってるし」


 リリアさんは、ニコッと笑ってそう言ってくれた。その日の夜は、久しぶりに悪夢を見ないで寝ることが出来た。


 そして、リリアさんがギルドに行った後、私の元にある知らせが届く。

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