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最強のギルド職員は平和に暮らしたい  作者: 月輪林檎
第一章 ギルド職員になった

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応急処置

 ライネル率いる第四部隊は、森の中を走っていた。自分達が急がなければ、アイリスが死ぬ可能性があるからだ。その中で、一番焦っているのは、サリアだった。


「アイリス……」


 サリア達が走っていると、進行方向から、眩い光が上がった。突然上がった光の柱に動揺して、部隊の全員が、その場で立ち止まる。


「あれは……」

「アイリスです!」


 サリアが駆け出す。


「待て! まだ、魔物が残っているかもしれん!」


 先走ってしまうサリアを、ライネルが呼び止めようとするが、サリアは止まらない。ようやく見つけたアイリスの痕跡だからだ。


「俺達も行くぞ!」


 ライネルが走り出すと、部隊の全員が後ろについて行く。


 サリアが、木々の間を抜けていくと、不意に、木のない真っ直ぐな道が現れた。


「この先にアイリスが……」


 木がなくなっているのは、アイリスの『グランドクロス』は、ちゃんとした制御が出来ていないので、最大限の範囲を無差別に飲んでいった。その結果、森の一角に十字の空白地帯が出来上がっているのだ。


 サリアは、やがて十字の中央部分に到達する。木のない場所の中心地には、雪白が突き刺さっており、その傍らで、アイリスが横たわっていた。


「アイリス!」


 サリアは、アイリスに駆け寄って身体を抱き起こす。


「アイリス! アイリス!!」


 サリアは、アイリスに呼び掛けるが、全く返事をしない。すぐに胸に耳を当てて心音を確認する。


 とくん……とくん……


 弱いながらも、鼓動はしている。


「良かった……」


 アイリスが生きている事に安堵したサリアに、茂みから現れたゴブリンが襲い掛かってきた。『グランドクロス』から、ギリギリで生き残った残党だろう。


「……!」


 サリアは、すぐに剣を抜き放とうとした。しかし、その前に、サリアとアイリスの頭上を大きな斧が通過し、ゴブリンを両断した。


「無事か!?」


 斧の持ち主は、ライネルだ。ライネルは、両手斧を更に振り回して、接近してきたゴブリンを薙ぎ倒す。


「はい! アイリスも心臓は動いています」

「ミリー!」

「はい!」


 ライネルが後ろに声を掛けると、シスターのような格好をした金髪の女性が駆け寄ってきた。ミリーは、ライネルのパーティーメンバーの一人だ。ヒーラーを担当している。


「治療を頼む」

「分かりました」


 ミリーは、サリアが抱き起こしているアイリスに近づく。


「骨も折れていてますが、内蔵も傷付いているようですね」


 ミリーは、軽い診察と近くにあった吐瀉物に混じる血からそう判断した。


「ここでは、応急処置しか出来ませんが、病院まで保たせる事は出来そうです」

「お願いします!」

「俺達は、残党の処理だ! 行くぞ!!」

『おう!!』


 ライネル達は、アイリスが倒し損ねた魔物を倒しに向かう。


 その間に、ミリーは、アイリスを後方に運び、治療を始めた。背負っている鞄から、複数の薬と薬草を取り出す。まず、既に精製されている回復薬を、静脈注射で注入していく。


「こちらを押さえておいて下さい」


 ミリーは、サリアに消毒綿を渡して、注射した部分を圧迫止血してもらう。その間に、複数の薬草をすり潰していく。それを、ガーゼに塗って、打ち身になっている部分に貼り付けていく。


 そして、地面にアイリスの身長より少し大きめの布を広げる。そこには、布いっぱいに魔法陣が描かれている。そこに、アイリスを横たわらせた。魔法陣に手を付き、魔力を流していく。魔法陣が輝くと同時に、アイリスの身体とそこに貼ったガーゼが光り出す。


「これで大丈夫なんですか?」

「いえ、まだ油断は出来ません。体内に注射した薬と塗った薬で、傷付いた箇所を修復している最中です。完全に治るには、本格的な治療が必要です。切り傷などでしたら、五分もあれば治せるのですが、内臓のダメージは、直ぐにとはいきません」


 ミリーの言うとおり、内臓のダメージは、すぐに癒えるようなものではなかった。ただ、骨折の方は、不完全ながらも治ってきている。本格的な治療には、病院の設備が必要不可欠だ。


 ミリーのようなヒーラーの仕事は、切り傷や打ち身などの完全なる治療と重傷の応急処置だ。死に瀕している状態からの延命はお手の物だった。今回は、少しでも遅れていたら、アイリスが死んでいた可能性もある。ミリーの治療の腕と、アイリスの並外れた生命力のおかげで、間に合うことが出来たといえる。


「よし、内臓と骨折の応急処置は終わりました。これで、後遺症などは残らないでしょう」

「よ、良かった……」


 サリアが、アイリスの治療が済んだことに安堵する。その最中、


「そっちに行ったぞ!」


 残党の一部が、襲い掛かってきた。サリアは、すぐに剣を抜いて、迫り来るゴブリン達を斬り伏せていく。サリアが一人でも対応出来ているのを見て、ライネルは、目の前のゴブリン達に集中した。


「後、ほんの少しだ! これが終わったら、他の援護に向かう!」

『『おう!!』』


 アイリスが、ほとんど倒したこともあって、ライネル達が優勢のまま、戦いが進んで行った。

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