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最強のギルド職員は平和に暮らしたい  作者: 月輪林檎
第一章 ギルド職員になった

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重要な情報(1)

 あれから、四日が過ぎていった。リリアさんとの同居生活の中で、一つの決まり事みたいな事が出来た。それは、朝ご飯、昼ご飯はリリアさんが、夜ご飯は私が作るということだ。朝の時間は、私が洗濯などをするので、リリアさんが朝ご飯を作るついでにお昼のお弁当を作る事になっている。少し申し訳ないとも思うけど、リリアさんから言ってくれた事だから、甘えることにした。


「最近の気分はどう?」


 朝ご飯を食べながら、リリアさんが訊いてきた。


「リリアさんのおかげで、前よりもマシになっています。少なくとも、眠れないということ、今のところ無くなりました」

「良かった。隈も少し取れてきてるもんね。この調子で、悪夢を見なくなるといいんだけど」

「今は見ていないですよ?」


 ここ最近で、悪夢を見た記憶はない。だから、ちゃんと寝られているわけだし。


「極たまにだけど、少し魘されている時があるんだよ」

「そうなんですか!?」

「うん。ぎゅっと抱きしめてあげたら、魘されなくなるけど、まだ、悪夢を完全に見なくなるってわけじゃ無いみたいだよ」


 いつも一緒に寝てくれているリリアさんが言うことだから、そうなんだろう。でも、本格的に悪夢を見ているわけじゃ無いから、前兆みたいなものなのかもしれない。


「まだ、悪夢が治ったわけではないようですね」

「ちゃんとした原因が分からないもんね。今は、私がいるから大丈夫だけどね」

「ご迷惑お掛けします……」

「それ!」

「!!」


 やっぱり、迷惑に思われていたのかな。


「私は、一度も迷惑だなんて思った事はないよ。寧ろ、役に立てて嬉しいって思ってるんだから。これからは、そうやって謝ったりするのは禁止だよ!」

「は、はい。分かりました」

「よし! じゃあ、出勤の準備しちゃおう」


 そんな風に話している間に、ご飯を食べ終わったので、協力して洗い物を終わらせ、ギルドに向かう準備をする。


「ふふ」


 さっきのリリアさんの言葉を思い出して、少し頬が緩む。お母さん達が亡くなってから、誰かに甘えるって事が無かったから、甘えられる相手がいるというのが、ちょっと嬉しいかもしれない。


 ────────────────────────


 ギルドに来た私達は、今日も今日とて、ギルドの資料室を片付けていた。私が資料を別紙にまとめて、リリアさんが資料を仕分けるという分担でやっているからか、進みは今までよりも少し遅い。


「あれ?」

「ん?」


 重要そうな資料をまとめていたところで、気になるものを見つけた。


『冒険者からの報告

 街周辺にモンスターが大量に発生している報告有り。

 モンスターのランクは、低ランクの模様。

 新人でも対応出来る範囲内の模様。

 尚、他の冒険者からは、同じ報告はなし。

 後日、職員による調査をする必要あり。』


 資料と資料の間に挟まってたメモ用紙に書いてあった。これが、上に報告されて、私とキティさんが調査に向かったのだろう。気になる文面がある。


『新人でも対応出来る範囲内の模様』


 態々これを書く必要があったのだろうか。書いた理由はただ一つ。報告した冒険者が、そう口にしたということ。このギルドで、周辺調査に赴く新人は、私しかいない。つまり……


「あれは……私を狙ったって事……?」


 この文面じゃ、実際のところは何とも言えない。でも、私の考えが事実なら、キティさんは、ただ()()()()()()()()ということになる。


「アイリスちゃん?」


 リリアさんが、作業を止めた私を不思議に思い、メモを覗き込む。


「!!」


 その文面を見て驚く。


「やっぱり、キティさんは……」

「違う!」


 私の言葉を遮ってそう言った。


「これだけじゃ、アイリスちゃんのせいかなんて分からないよ! それに、そもそもアイリスちゃんを狙う理由がないでしょ!?」

「それは……そうですけど……」

「じゃあ、アイリスちゃんのせいじゃない!」


 リリアさんは、私の顔を両手で挟んで、眼を見ながらそう言った。


「だから、自分を責めちゃダメ!」

「……はい」


 少し落ち着いた。リリアさんは、尚も心配そうにしていたけど、多分もう大丈夫なはず。


「私、カルメアさんやガルシアさんに話を聞いてくるから、アイリスちゃんは、作業を進めておいてくれる?」

「分かりました」


 リリアさんは、私に気を遣って、話を聞いてきてくれると言う。正直ありがたい。このことを自分で聞きに行く勇気なんてなかったから。だって、これで、私のせいということが判明したら、正気を保てる自信がないから……


 ────────────────────────


 資料室から出たリリアは、まずカルメアを探した。手には、アイリスが持っていたメモがある。


「はぁ……とは言ったものの。本当に、アイリスちゃんを狙ったものだったら、どうしよう……」

「どうかしたの?」

「ひゃっ!?」


 リリアの背後に、探していたカルメアが立っていた。


「カルメアさん、いつの間に後ろに……?」

「つい今し方よ。ここで何をしてるの?」

「カルメアさんを探していたんです」

「私を?」


 カルメアは、意外という顔をしない。二人の教育係なので、質問があれば必然的に自分のところに来ると思っていたからだ。


「はい。これなんですけど」


 リリアは、件のメモをカルメアに見せる。


「!!」


 メモを見たカルメアの表情が強張る。


「資料室に行っていたのね。それで、これがどうかしたのかしら?」

「これを見つけたアイリスちゃんが、自分が狙われたんじゃないかと言っていました。実際のところ、どうなのかを確かめたいんです」

「……ギルドマスターの部屋まで、行くわよ。ここら辺の話は、ギルドマスターの方が詳しいだろうから」

「分かりました」


 リリアを連れたカルメアは、ギルドマスターの部屋まで向かった。カルメアがノックをすると、すぐに返事が来たので、中に入っていく。


「どうしたんだ?」

「リリアが、このメモのことで質問があるそうです」

「ん? これは……」


 メモを見たガルシアは、眉を寄せた。


「もしかして、これをアイリスが見たのか?」

「はい。自分が狙われたものなのではないかと言っていました。実際、そんな事はあり得るんですか?」

「…………」


 ガルシアは、難しい顔をする。リリアは、ここでガルシアが、何かを知っている事を確信する。


「アイリスちゃんが狙われる理由を知ってるんですね?」

「……ああ。心当たりがある。だが、本当に狙われたものかどうかは分からないぞ」

「教えてください。なんで、アイリスちゃんが狙われているんですか?」


 ガルシアは意を決したように、口を開く。

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