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最強のギルド職員は平和に暮らしたい  作者: 月輪林檎
第一章 ギルド職員になった

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同居

 私が目を開けると、窓から差し込む光が赤くなっていた。いつの間にか、夕方になっていたみたいだ。


「あれ? 私、悪夢を見なかった?」


 悪夢を見た記憶がない。いつもかいていた寝汗もないので、間違いないことだと思う。だから、久しぶりにしっかりと眠ることが出来たみたいだ。若干寝ぼけながらそう考えていると、私の左手に温もりがあることに気が付く。


「リリアさん?」


 私の手を握っていたのは、リリアさんだ。そういえば、寝る前にリリアさんにお願いして、手を握ってもらったんだった。寝る前と違うのは、リリアさんもベットに身体を預けて眠っていることだ。


「そりゃ、私がこれだけ眠ってたら、リリアさんも眠くなるよね」


 私が倒れたのが、お昼近くだったから、それから今まで、私の傍にいてくれたんだ。でも、ずっと寝てもらっているわけにもいかない。この時間なら、もう終業時間になるはずだから、家に帰らないといけないからだ。私は、右手を伸ばしてリリアさんの肩に手を掛け、揺らした。


「リリアさん、リリアさん」


 名前を呼びながら揺すると、リリアさんがうめきながら目を覚ました。


「うぅ……ん? アイリスちゃん?」

「はい。すみません、ご迷惑をお掛けして」

「ううん……ちゃんと眠れた……?」

「おかげさまで、ぐっすりと寝られました」

「よかった……」


 リリアさんは、会話をしている内に、段々と意識が覚醒していった。


「あっ! アイリスちゃんが起きたら、呼んでって言われてたんだった! ちょっと待っててね!」


 左手からリリアさんの温もりが消える。


「あっ……」


 思わず手を伸ばしてしまうけど、リリアさんは気が付かずに、部屋を出て行ってしまった。いきなり温もりが消えた事で、少し寂しさがあった。でも、ずっと握っていてもらうわけにもいかないんだから、我慢しないと。


 ベッドの上で身体を起こして待っていると、リリアさんが、カルメアさんを連れてきた。


「起きたみたいね。体調は大丈夫?」

「少しマシになりました。ご迷惑お掛けして、すみません……」

「よかったわ。そんなに気にしなくて良いわよ。元々、疲れたら休んでいいって伝えてあったでしょ?」


 カルメアさんは、椅子に座りながらそう言った。


「今回は、二人に少し話があるの」

「話、ですか?」


 私とリリアさんに話っていうことは、新しい業務とかかな。そんな事を考えていると、カルメアさんが口を開く。


「二人とも、同居しなさい」

「「…………」」


 カルメアさんは、いきなりすごい事を言い出した。私の頭の中は真っ白になっている。多分だけど、リリアさんも同じだと思う。


「ちゃんと理由はあるわよ」


 カルメアさんは、混乱している私達に構わずに話を続ける。


「理由は、アイリスよ」

「え?」


 何を言っているんだろうと思ったけど、すぐにどういうことか分かった。


「私の睡眠ですか?」

「そういうことよ。リリアの手を握っている間、アイリスは快眠出来ていたでしょ? 逆にリリアの手を握っていないときは、すごく魘されていたわ。このままだと、これからの仕事に差し障るでしょ? こちらとしても、二人が一緒にいれば大丈夫だっていうのなら、その方が助かるのよ」


 カルメアさんの言っている事は正しいと思う。もしも、リリアさんが一緒に寝てくれるなら、快眠出来ると思う。でも、それには、リリアさんの同意が必要になる。必然的に、私達の視線がリリアさんに注がれた。


「あっ、良いですよ」


 リリアさんは、あっさり承諾した。


「えっ!? いいんですか!?」

「うん、いいよ。困ったときはお互い様だよ」

「じゃあ、アイリスをお願いね。明日からの業務は、今日と同じ資料室整理を二人にやってもらうから、そのつもりでいて」

「「はい!」」


 伝えたいことが無くなったからか、カルメアさんは、部屋から出て行った。つまり、私達二人だけになったって事だ。


「じゃあ、勤務時間も終わったみたいだし、帰ろうか」

「はい」

「一度家に寄ってから、アイリスちゃんの家に向かうって感じでいい?」

「はい。大丈夫です。でも、本当にいいんですか?」


 やっぱり迷惑じゃ無いかと思って何度も確認してしまう。


「大丈夫だって。私もアイリスちゃんのこと心配なんだよ。私が一緒に寝るだけでも楽になるなら、いくらでも寝てあげるよ!」


 リリアさんは胸を張ってそう言った。


「私は、アイリスちゃんよりもお姉さんなんだから、もっと甘えていいんだからね!」


 優しく微笑みながらそう言ってくれた。


「じゃあ、行こう」

「はい」


 私とリリアさんは、一度リリアさんの家に寄って、着替えなどの生活必需品を取ってきてから、私の家に向かった。


「ここが、アイリスちゃんの家なんだ」

「はい。どうぞ」

「お邪魔します」


 家に入ると、リリアさんは、キョロキョロと見回していた。


「家の中は何も無いですよ?」

「あっ、ごめんね」

「大丈夫ですよ。えっと、そっちが洗面所で、その奥がお風呂です。こっちが、トイレで、そっちが寝室です」


 リリアさんに部屋割りを説明しながらリビングに進んで行く。


「ここがリビングです」

「広い家だね」

「そうですね。元々、一世帯で住む用の家なので。じゃあ、夜ご飯作るので、ゆっくりしていてください」

「私も手伝うよ」

「いえ、リリアさんは、お客さんなので、ゆっくりしていてください」


 私はエプロンを着けて、夜ご飯を作り始める。今日作るのは、簡単にトマトソースのパスタだ。


「わぁ、美味しそう!」

「簡単なもので、申し訳ないですけど」

「ううん、全然大丈夫だよ。じゃあ、いただきます!」

「いただきます」


 夜ご飯を食べ終わった後は、私が洗い物をしている内に、リリアさんにお風呂に入ってもらった。


「ふぅ、気持ちよかったよ」

「よかったです。じゃあ、私も入ってきますね」

「うん」


 手早く、でも丁寧に身体を洗ってから、リビングに戻る。


「もう寝る? 昼間に寝てたから、まだ大丈夫?」

「いえ、実は、もう既に眠いです」


 正直な話、目が覚めてからもずっと眠い状態は続いてた。だから、今すぐにでも寝れるはず。一人じゃ無ければ……


「じゃあ、寝ようか」

「はい」


 私達は、一緒に寝室に入った。


「このベッドでかいね」

「元々両親が使っていたものです。私のベットは小さくなってしまったので、こっちを使ってるんです」

「そうなんだ。でも、こっちの方が都合が良いよね」

「はい」


 私達は、同じベッドに入った。


「手を繋げば大丈夫なんだよね?」

「多分……」

「じゃあ、繋いで寝てみよう」

「はい」


 リリアさんの指が私の指に絡まる。


「大丈夫。私が一緒にいるから。安心して寝ていいよ」

「ありがとう……ございます……」


 昼間と同じように、すぐに睡魔に襲われて、意識を手放した。

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