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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編作品

椿

作者: 伊勢

短いです


椿の花が好きだ。

赤く大振りな花は馨しい香りと共に冬の訪れを報せる。


椿の花が最も美しいのは終りの瞬間。


枯れて惨めに散ることを嫌った花は己が1番美しく輝く時に潔くその命を落とす。


ボトリ…と地に落ちるその様が心底美しいと思う。


だが、一方でその様は不吉とされて“首切り花”なんて物騒な名前もある。


そんなことは無いのにな…なんて、思っていたけれどそれが

どういうことなのか漸く理解した。


ボトリ…


ボトリ…


私の目の前で、隣で、後ろで首が落ちる。


雪の上に落ちたそれはジワジワと真っ赤な花を広げていく。その姿は、椿のようだと思った。


ボトリ…


ボトリ…


いつの間にか辺り一面、真っ赤な椿の花が咲き乱れていた。

私を中心にするかのように咲き乱れる椿の花々は一つ、また一つとその数を増やしていく。


心底美しいその光景に目を奪われた。


首切り花…確かにそうだ。

なんて、なんてピッタリな名前か。


一面に真っ赤な椿を咲かせるその人は長く艶やかな黒檀の髪をたなびかせて振り返る。


その度にまた、ボトリ…ボトリ…と花が散る。


舞を舞うかのように軽やかにその身を翻せば美しい髪が宙を舞い、その後を赤い飛沫が踊る。


ボトリ…


最後の花が咲き、残るは私1人。


目の前には、大きな美しい人が居る。

その瞳も椿のように真っ赤で、その中心には金色の輝き。


あぁ、椿だ。

私の大好きな、椿の花がいる。


私も、この方の様に美しく咲けるだろうか?

咲きたい。咲かせて欲しい。


貴方の手で…


「どうか、私を咲かせてくださいませ」


私の声に応えるように、その方は()を振り下ろす。


ボトリ…


一輪の美しい、花が咲く。









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