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テスト

『殺してやる』


「行ってきます!」


『殺してやる』


「あぁ、晩飯までには帰って来いよ」


『殺してやる』


親父(オヤジ)こそ、晩飯までには帰って来いよ!」


『殺してやる』


 チリン。

 自宅の扉から元気よく飛び出す息子の背中を見送りながら、沢村サワムラ 択取タクトは盛大に溜息をつく。


「はぁ、もう少し俺の仕事に興味もってくんねぇかなぁ」


 択取タクトは13歳になる息子が、今も趣味で合成獣モンスターの育成をしていると勘違いしている節があるのではと疑っている。


 年号が令和と呼ばれる時代、人は超人へと進化していた。最初は魔法使いが産まれたやら、超能力者やらエスパーと呼んだり、魔術師やらヒーローやら様々な呼び方が飛び交っていたが、今ではSLOT(スロット)と呼ばれるようになっている。


 なぜこんな話をするか? そりゃ、合成獣の事を語りたいからである。

 合成獣モンスター

 人がSLOTを手に入れ、光速通信ネットやら仮想世界、現実世界で不自由をする事が無くなり、自ら人類の敵を用意するという暴挙に出た事から生まれたのが合成獣モンスターである。


 人は生まれながらに3つのSLOTを持っており、知識の塊、通称スクリプトをセットする事で無敵になる事が可能となった。高速通信や仮想世界はSLOTの発見により、停滞した代わりに現実世界での娯楽がより一層求められることとなった。


 例えば、水に関する知識をSLOTにセットする事で、【【水】:【Lv1】】というような状態となる。するとどうだろう、軟水だろうが硬水だろうが自在に生み出す事が出来るようになるのだ。勿論、自然にある水を操作することなども出来、SLOTにセットされたスクリプトを起動すればするほど、レベルが上がり操作性や自由度が上がっていく。


 知識の塊は高速通信ネットのおかげで一瞬で世界に広がり、人は無敵となった。


 今では必須と呼ばれるSLOTが二種類。


 その一つが【蘇生(リヴァイブ)】。

 セーブした場所に一日に一度だけ死に戻れるSLOTである。不意の事故で大怪我をした時や、即死しようがセーブポイントに死に戻れる為、人が本当に死ぬ事は滅多に無くなった。


 そしてもう一つが【体力増加(スタミナアップ)】。

 読んで字の如く、体力を増やしてくれるSLOTである。

 これが必須と呼ばれるのは、とにかく遊び続ける体力が増えるというのが一番デカイ。後は健康面も補ってくれ、これをセットしていない人はまずいないとされている。


 初期SLOTは3つあり、3つ目に関しては個人の自由で個性を求められるところである。

 また、SLOTは不思議な飴を舐める事で増やす事が出来るが、不思議な飴はどこで誰が造っているのか誰も知らず、その存在自体謎に包まれた飴が存在する。


 さて、話が長くなったが合成獣の話だ。

 人はSLOTの恩恵で衣食住に困らなくなり、高速通信や仮想世界に頼らなくても十二分に世界を満喫できる存在となった。それと同時に現実世界では自分の力を示す場所を欲し、人と人とが個と個で争う時代があったという。


 そこで登場したのが合成獣という訳だ。

 人類の敵を創造し、人と合成獣を争わせるPvEを行わせる事を考え付いた。

 人は磨き上げた自らのSLOTを信じ、合成獣を屠り己の力を誇示した。また、それを観戦する事が流行り、今ではコロシアムでのPvEが日々行われていた。


 相手に合わせて、SLOTの入れ替えをするという判断も可能だが、SLOTには一つだけ欠点があった。

 SLOTから一度外した知識は、再びセットするとLv1からの状態でセットされてしまうのだ。


 そのため、3つ目のSLOTは十歳になる時にある程度決めるのが世間一般の認識なのだ。


 それなのに、うちの息子と言えば……。


 日々、楽しむために13歳になるにも関わらず、日々3つ目のSLOTを入れ替えては試しに遊びに行ってしまう。合成獣を作る俺のように器用さ増加やら、獣言語やら取得して合成獣を作る道に進んで欲しいと思うものだと思ってしまう。


 ちなみに俺は【蘇生】【体力増加】【Lv3】】【【器用さ増加】【Lv6】】【獣言語】の四つのSLOTがある。一般的にも、不思議な飴は一人一個は一生の内に一個は口にする機会があるが、買おうとすれば非常に高価なので必須の二つさえあれば、後は自由だと俺は考えている。


「器用さ増加、早めに取った方が良いのになぁ」


 寝癖が残った黒髪をクシャクシャとしながら、ふと玄関の靴箱上に包みが置かれている事に気が付く。


「ん、何か宅配物でもあったか? どれ」


 包帯でグルグル巻きにされたそれを開封すると、中からはミイラ化した片腕が一本入っていた。


「んー。ミイラ化した腕、だな。合成用に頼んだっけかなぁ、まぁ倉庫に入れておくか」


 何事もなかったかのように包帯を巻きつけると、択取タクトは合成獣を育成している地下室へと足を運んだ。




「ギィ……ギィ」

「やる気満々だな、イレギュレイよ」

「ギィ」


 広大な地下室の一室に居た、宙に浮く巨体。

 名前はイレギュレイ、黒色の光沢フォルムに包まれた昆虫系の合成獣だ。

 身長3.4メートル。

 体重3トン。

 細い長腕二本に、同じように細い足が二本。

 羽は無いが、宙に浮き高度100メートルまで飛び上がる事が可能だ。


 ちと、繊維質的な体面が気持ち悪くも無いが、合成獣だからしょうがないと割り切っている。

 口から吐き出す鋼の杭が、高度100メートル上空から吐き出され、それで対象を貫き殺すのがこのイレギュレイなのだ。


「くぅ、いつ見てもお前はカッコいいぜ!」

「ギィ」


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