見たことのない生き物
友達と遊んだ帰りのことだ。水たまりで、見たことのない生き物を発見した。
たくさんいるうちの一匹を、ちょんと摘まんで観察してみる。
全体的に細長いシルエットだ。感触はちょっとやわらかい。表面には至るところに細かい毛が生えている。
前肢と後肢が宙をかきはじめた。肢の先端はいくつも枝分かれしていて、それぞれが生きているかのように、くねくねとうごめいている。
急に生き物が鳴きだした。キイキイ、ワオワオ、ギヤギヤ……鳴き声に合わせて顔がぐにゃぐにゃ曲がる。
次第に、生き物の表面がじっとり湿ってきた。外敵に対する毒だろうか。目や口からも液体をにじませている。
生意気な奴め。こらしめてやろうと思って頭部を軽くいじった。
あっ。
力加減を間違えて、頭部がもげてしまった。
けいれんする胴体から、体液がとろとろ垂れてくる。それに驚いた勢いで、摘まんでいた胴体をつぶしてしまった。水がはじけたような音だった。
生き物は、ぴくりとも動かなくなった。
死んでしまったようだ。
結局この生き物はなんだったのだろう。どうしても気になったので、もう一匹を捕まえて家に帰った。
お母さんに見せると、笑顔で名前を教えてくれた。
「それはね、ニンゲンっていうのよ」