連鎖
一番初めは、体の弱い、女の子。
体が弱くて、二十歳までは生きられないといわれたよ。
食べたいものを食べさせられて、学校も休みがち。
掃除洗濯料理に掃除、全部お姉ちゃんがやってくれた。
すき放題に生きてきた。
現代医学の力があってか、25歳で結婚したよ。
一人娘が生まれたよ。
だけどその年旦那が死んで、一人実家に戻ったよ。
お姉ちゃんは結婚してもういない。
お母さんと一緒に暮らしてはいたけれど。
ある日一人娘のことを思い出した。
無理やり連れてこられた一人娘は、いきなり変わった環境で自分の言葉を失った。
自分の意見がいえない子供。
体の弱かった人は、思い通りに一人娘を動かし続ける。
学校はここへ。
就職先はここへ。
結婚相手はこの人。
一人娘は25歳で結婚したよ。
10も上のはじめて見る人。
仲の良い人がいたのに言えず、結婚したよ。
何もいえない一人娘に、一人娘が生まれたよ。
何もいえない一人娘の一人娘は、たいそうおしゃべりでね。
何もいえない一人娘の代わりに、色々とはなしてくれた。
けれど体の弱かった人は、それを許さない。
私の言うことだけ聞いていたらいい。
口を開くのはお世辞を言うときと、悪口を言うときだけで結構。
だんだん一人娘の一人娘は、言葉を失ってきたけれど、それを一人娘は許さない。
私がいえないのだからお前が言えと、一人娘の一人娘は追い込まれていく。
続く連鎖はとめられない。
続く連鎖を断ち切りたいと、願う一人娘の一人娘は、手を伸ばす。
手を伸ばした先にいる友達にも、体の弱い人の攻撃が襲い掛かって、いつの間にやら一人娘の一人娘は孤立した。
寂しい時代が過ぎて、一人社会に出た一人娘の一人娘は自分の力で旦那を見つけた。
体の弱い人の用意した、怪しい人から逃れるために、世間知らずの旦那を見つけた。
一人娘の一人娘に、一人娘が生まれたけれど、この子は自由気ままに生きている。
連鎖はここで終わったよ。
終わったのだから、好きに生きていいのだと、自分に言い聞かせている一人娘の一人娘はなんだかんだで、言いたいことが言えない人になってしまったよ。
連鎖は断ち切れているはず。
大丈夫。
毎日確認しながら、言えない言葉を文字で書き始めたら、意外とどうして気分がすっきり晴れてきた。
言葉には出せないけれど、ずいぶん文字は、おしゃべりになって、最近とっても騒がしい。
そろそろ言葉も、出てくるかもしれないね。
それがとっても、待ち遠しいよ。