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ディバインギフト ~漆黒の討伐者~  作者: モグラ
第一部 討伐組織結成編
7/21

第6話 戦いの予兆

 勤務先まで戻ってきたグレイに、髭のはえた同僚の中年男性が話し掛けてくる。


「なあグレイ、聞いたか?」


「何ですか急に? 今戻って来たところですが」


「あいつの事件だよ、あいつの。 ニュース聞いてないのか?」


「事件?」


 休憩室のラジオから、お昼のニュースが流れていた。


 グレイは、ラジオに近づき耳を傾ける。


 その内容はこうだ。


――――――


 数週間前、子供を殺害した犯人が、無残に引き裂かれた状態で、死体となって発見された。


 その被害者の子供は、数週間前から、無断欠勤をし始めた、同僚の男性の子供だったと判明された。


 現場からは、明らかに人間ではない、『()()()()()()()』、『()()()()()()()()()』を目撃した、と記者のインタビューに答えている目撃者の報道だった。


――――――


 中年男性は、側にあったパイプ椅子に深く座り、火の付いた煙草をくわえて、グレイに話し掛けてくる。


「『()()』か…… とうとうこの街にも、魔物(モンスター)っていうのが現れたのか」


魔物(モンスター)…… 俺には関係ないことだ)


 グレイは心の中で呟いた。


「あいつ、これで救われたかねぇ」


「どうでしょう。 お子さんが殺された悲しさは永遠に消えないかと」


「……何とも言えない結末だな」


「そうですね。 彼は今日も午前中出社せず?」


「それがさっき、あいつの奥さんから会社に連絡があったんだが、『行方不明』なのだとよ」


「行方不明?」


「家にも帰ってこない、何度連絡しても電話に出ないってことで、奥さんがとうとう捜索願を出したみたいさ」


 同僚の男性は、子供を殺されたショックで無断欠勤をしていると、グレイは思っていた。


 その後の調査でわかった事だが、子供が殺害された日の数日後には、既に家にはいなかったそうだ。


 同僚の男性は、妻を残して何処に行ったのだろうか?


――――――


 ブロロロロ……


 グレイは、午後の配達分を鞄に詰め込み、スクーターのエンジンをかける。


 その瞬間、ふと頭の中で、何かが繋がるような感覚を感じた。


 一つ、午前中に『喫茶店マリス・ステラ』でルージュに依頼された封書の配達が、『討伐指令書』であり、届け先の少女達に宛てたものであったこと。


 二つ、午後のラジオニュースで犯罪者の死体が無残に引き裂かれている状態で、現場では『怪奇な黒い物体』、『怪物に見える生き物』が目撃されていたと報道があったこと。


 三つ、そのタイミングで同僚の男性の捜索願が出されており、現在も行方不明なことが分かったこと。


 グレイの頭の中で起きた感覚は、何度も味わって知った感覚に変わっていく。


 その感覚は、二年前に討伐組織に所属し、魔物(モンスター)と闘っていた時の感覚。


 忘れることのもできないものだった。


 染み付いてしまっている感覚は、逃げることができない絶望感として押し寄せてくる。


 確証は無いが、グレイの直感は確信していた。


(……迷うなら、確かめるだけだ)


 グレイは、午後の配達途中に、ラジオニュースで犯罪者が殺されていた現場に立ち寄る。


 しかし、ニュースが報道されていただけに、警備が厳重にされている。


 現場周囲の確認はおろか、近づくことすら出来ない。


(この街の治安警備隊か。 やはり、彼らが動いていると言うことは……)


 彼らは『治安警備隊』、この世界でいうと討伐組織と協力体制にあたる組織だ。


 個々の能力は、討伐組織程持ってはいない為、主に討伐組織のバックアップを行っている。


 現状のこの現場で言うと、討伐組織の戦闘から民間人を守る為の現場整備、負傷者の保護など、戦闘に関わる以外の業務を活動している。


「おい! こっちの民間人の避難誘導に人手が足りないんだ! 数名来てくれ!」 


 警備隊の何人かが、現場から離れていき、警備が薄くなる。


(これは…… チャンス!)


 グレイは警備隊の隙を見て、シートで隠されていた、壁の傷跡を確認する。


 壁にはまるで、大きく鋭利な爪で、深く引き裂かれたような跡が残っていた。


(やはり、そうか)


 グレイは確信する。


 今までこの様な、多くの怪奇現場を見て、経験してきたからわかる。


 この世界の生き物で、こんなに大きな深い傷跡を残せるのは、一つしか考えられない。


ーードン! ガギィィィン!


 ここから近い場所で、鈍い大きな音が響き渡ってくる。


魔物(モンスター)!」


 グレイは音が聞こえてくる方角に向かっていった。

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