第5話 配達完了
喫茶店マリス・ステラに到着したグレイは、指令室に居るルージュに、少女からサインを貰った受領書を渡す。
これで、封書を届ける依頼は完了となる。
「確かに、受領書確認しました。 お仕事が早くて助かったわ」
「依頼は完了した。 これでもう俺には関わらないでもらうぞ」
「そう……それは残念ね」
指令室から去ろうとするグレイに、ルージュは質問を投げ掛けてくる。
「そうそう、あの子達に封書を届けても、疑問に思われなかったのかしら?」
「俺はただ、『この封書を届けるように頼まれた』としか言っていない」
「そう。 後はあの子達がうまく討伐できる事を祈るだけね」
ルージュは、透かした目でグレイを見ながら話しを続ける。
「今回は少し厳しい討伐になるかもしれないけれど……」
「……用は済んだ。 失礼する」
グレイは喫茶店を後にし、スクーターで配送業者の勤務先に戻る。
その道中、脳裏に彼女達と届けた討伐指令書の事が浮かんでくる。
彼女達が、見た目からまだ幼さない年頃だった事も気にはしていた。
ルージュは、いったい彼女達にどんな魔物の討伐指令を出したのか。
本当に彼女達は魔物と対等に闘う事ができるのか。
グレイにとっては、依頼が完了し、もう討伐組織に関わらなくてもいいはずなのだが、何故か気になっていた。
「そうか、腹が減っているんだ。 さっさと勤務先に戻ろう」
グレイは、昼食を取ることで、今日の依頼仕事を忘れ、気持ちを切り替えることができると思い、勤務先までスクーターを飛ばしていくのだった。