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ワタクシ。Ritaであります!  作者: リノキ ユキガヒ
第七章「ついに」①
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 極超短期とは言え、入隊するにあたっては宣誓がある。

 私は○月○日、ヒトマルマルマル時よりその身を陸上自衛隊に捧げる事となった。

 上官の命令は絶対であり、階級がものをいう世界へと突入したのだ。

 異世界への突入という事でここで私が、広義の意味における「軍事」についてなぜ興味を持ち、趣味にしたのか?という事を言っておいた方が良いような気がするので一応、語っておく。


 時は小学校三年の頃まで遡る。

 国語の教科書。何かの物語の欄外にこのような記述があった。



 ※Bー29・アメリカ軍の爆撃機。9トンの爆弾を搭載できる。



 幼心にこの記述は強烈な印象を与えた。そして私の脳裏には「Bー29」という言葉が深く刻まれた。

 正直、爆撃機という用語もトンという値も、小学生の自分には全然理解できなかったが、なにかとてつもないモノがあったという雰囲気はその文脈から感じとれた。

 そして、月日は過ぎ私は小学六年生へと進級した。

 運命の悪戯か?学級文庫にナゼか「戦艦武蔵の最後」

 があったのだ。

 小学校であれば、可愛らしいタイトルが並んでたであろうその中に、余りにも浮いて見えたので、思わず手にしたのでは?と自分なりに回想する。

 特に「戦艦」と「最後」という言葉に惹かれたようにも記憶する。

 何か、昆虫が街灯に吸い寄せられるような感じと言えばいいのだろうか?おもむろにそれを手にとり、適当なページを開いて読んでみた。

 そこには、阿鼻叫喚の地獄があり、戦争というものの恐ろしさを知ってしまった。

 爆弾で人の体は引き裂かれ、昨日何気に会話していた戦友達は次から次へと倒れていく。

 当時の私にはこの世にこんなに理不尽で恐ろしい事があったのか?とショックを受けた。

 しかし、それと同時に戦艦武蔵にも日常があり、厳しい訓練もあればささやかな楽しみもある事も知った。

 その極端な落差は私の心に戦争というものの見方にある種の角度を付けた。

 無論、戦争というものは悲惨極まる事であるのは大前提だ。

 しかし、その中に人間が関わっているのであればそこには確実にドラマはあるのだ。

 戦争の悲惨さにも心を痛めたが、それと同じ位、艦隊勤務の合間に垣間見る、ほのぼのした描写は当時の私には印象に残った。

 だが、それ以降に戦艦に対して調べるとか、戦争について調べるとかはしなかった。割かし平々凡々と日々を過ごした。

 時は過ぎ、戦艦武蔵のインパクトも薄れ、忘却の彼方になる頃だろうか?

 いつの時期か判らないが、多分中学に進級した頃合いか?

 雑誌か何か忘れたが、世界で一番売れた日本の書籍とは何か?という記事を見かけた。

 意外な事にそれは第二次世界大戦のパイロットが書いたもので、タイトルは。


「大空のサムライ」


 そう。ここで私の軍事に関する興味は開眼する。

 覚えやすいタイトルに、私は本屋に行った機会にこの著作を探した。

 予想に反して「大空のサムライ」は簡単に見つかった。正直、戦争に関する書物は見つかり難いとナゼか思っていたからだ。

 しかも、文庫本で値段も中学生のお小遣いで充分間に合う値段だった。

 だが、買ったはよかったがその内容が中学生の自分にはまだ、難しく、冒頭は著者である坂井三朗氏がどういう経緯で軍隊に入り、戦闘機のパイロットになるまでで、タイトルからは程遠い、話で飽きてしまい、読破できなかった。

 その為、大空のサムライは本棚の肥やしとあえなくなってしまった。


 あえなく本棚の肥やしになってしまった名著「大空のサムライ」だが、中学二年生の夏休みに再び手にする事になった。

 それは宿題である読書感想文の題材として読む事にしたのだ。

 理由は正直、不純なのだが…。

 その年の夏は記録的な猛暑日が続き、外に出る気がしなかったのと、夏休み位時間があると正直、もて甘し気味になるので、その時間をなんとかできないものかと本棚の肥やしになっていたこの著作を思い出した訳だ。

 ある程度月日が過ぎた事で、私の頭のデキが良くなったのか?夏休みからくる時間的余裕からか?

 案外すんなりと読む事ができた。

 が、しかし。文中に出てくる軍事用語が不明な事が多く、ネットでそれらを調べながら読み進めていった。

 中学生ともなれば、男子だとテッポウだの戦闘機だのに興味を持ちはじめている年頃で、仲間内でそういった話題もあろう。そういった事で改めて調べるという事は少ないかもしれない。

 しかし、当方女子である。序章の方で述べたが、背格好のせいで友人は皆無だ。

 と、いうか中学生女子ともなれば、それこそ見るものはティーン誌とかだろう。

 だが、私がいま見ているものはフレグランスの香り程遠い、硝煙たなびく零戦のコックピットでの物語だ。

 キラキラとした憧れの世界とはかけ離れた、究極の人間ドラマが展開される世界だ。

 しかし、読み進める事にある感覚が私の脳裏に蘇る。

 それはあの「戦艦武蔵の最後」の時に感じたものだった。

 厳しい生と死の狭間で垣間見る、ほのぼのした戦場のヒトコマだ。

 それは「大空のサムライ」でもあった。

 有名なのがポートモレスビー上空においての空中三回転だろう。

 このエピソードは太平洋戦線においては余りにも有名なので詳しいことは省くが、この物語の1つのハイライトであり、見せ場の1つだろう。

 現代戦において戦場にこのような風は吹くのだろうか?

 いや、不粋な推測だったかも知れない。現代戦においてもこのような風は吹く。

 それは、自衛隊のサマーワ派遣の時だ。

 戦闘の意思は無しを証明する為、砂漠でありながら森林用の迷彩服をあえて着込み、見事に地元住民の信頼を得たエピソードがあった。

 意外かも知れないが、人間がそこにいる以上、このような事は起こるのだろう。

 と、信じたい。

 先程も述べたが、戦争は悲惨極まる行為である。

 しかし、それが人間同士の戦いであれば、いかようなハイパーテクノロジーが介入しようがドラマは生まれるのだ。

 私は戦争というもの合間に垣間見えるこの様なエピソードに惹かれていったのかもしれない。

 しかし、それだけでは軍事にのめり込むにはマダマダ動機としては弱い。

 ほのぼのとした物語が好きなのであれば軍事から離れて、その様な作品を集中的に探すであろう。

 夏休みも終わり、その余韻も薄れ行く季節。私は近所の本屋でとあるタイトルが目についた。


「失敗の本質」


 恐ろしくネガティブなそのタイトルに私の目は、釘付けになってしまった。




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