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ワタクシ。Ritaであります!  作者: リノキ ユキガヒ
第七章「ついに」①
33/47

 キリリとした眼差し。ピンと伸びた背筋。切れそうな位にアイロンの効いた制服。ナチュラルメイクと思われるが、それがまた凜とした表情を際立たせる。

 私とマネージャーさんは、思わず口を開けたまま見とれてしまった。

 内から出てくる美しさとは正にこの事なのだろう。これはそう簡単に出せるものではない。

「あの~。彼女もモデルさんですか?」

 と、思わず間の抜けた質問を私はしてしまった。

「ブッ」

 思わず男性の広報官の方が吹き出す。

「申し訳ありません。自分は東部方面隊所属の現職の自衛官です」

 凜とした表情のまま彼女は答える。

「失礼しました!」

 私は思わず立ち上がり挙手の敬礼をした。

 彼女は目を丸くした。その表情を私は見つめ続けた。

「ぷっ」

 私達は同時に噴き出した。

「やっぱりモデルさんは何をしても絵になりますね」

 彼女は笑いながら話した。

「本来ならば挙手敬礼は着帽でやるべきですが、それだとインパクトにかけるのであえて」

「さすが。解ってますね」

 そう言い終えると、彼女は答礼の会釈をした。

「では本題に入りますか」

 そう男性の広報官の方が言うとプロットの書類が彼女の手によって配られた。

 大まかな説明が広報官の方々からなされた。

 どうやら都内のスタジオにて撮影は行われて、背景などを後で足す方法との事。

「これなら、問題ないですね」

 マネージャーさんはそう答える。

 しかし、私は合点がいかない。

「ぬるい」

 思わず口に出してしまった。

「と、もうされますと」

 女性の広報官の方が書類越しに私に視線を飛ばす。

「実際の装備、実際の演習場、実際の訓練で、撮影をしなければ。リアリティ…。いや人々の心には響かないでしょう。これでは只のコスプレです」

「成程」

「そうです」

「そうなるとそれ相応の覚悟をしてもらう事になりますが」

「望むところ」

「わかりました」

 男性二人はポカンとしている。

 後日改めて、撮影に関する資料がメールにて事務所に送られてきた。

 内容を見たマネージャーさんは恐る恐る内容を私に伝える。

 それを見た私は静かに一言。

「問題なし」

 と答えた。

 幾日か日にちは過ぎた。私とマネージャーさんは富士にいた。ここはそう。

 

「陸上自衛隊富士学校」

 

 この門をくぐる事がどういう事かという解釈は銘々にまかせるが、マネージャーさんにとっては地獄の門に見えるらしい。

 私は胸一杯に富士の空気を吸い込んだ。そして一歩歩み出た。

 正門には当然の如く出入りを監視する小屋みたいな物がある。そこで然るべき手続きを受けて入る訳だ。

「お待ちしておりました!」

 威勢のいい声が私たちの耳に入る。

 戦闘服に身を包み挙手敬礼をして私達を出迎える自衛官の方が二人いた。

 私達は歩み寄る。

 略帽でおでこから頭にかけて隠れてはいるがあの凜とした眼光は見覚えがあった。

「あぁ!市ヶ谷の」

「加藤であります!」

「中村です!」

 そして彼女の隣にいた女性自衛官は中村と名乗った。

「朝霞ではなくて富士とは大分本気ですね」

 私は加藤さんの目を見ていった。

「勿論です!」

 加藤さんは力強く答える。

 元来、女性が自衛隊に入隊すると埼玉県は朝霞市にある駐屯地へと送られる。ここには女性専用の訓練施設がありここで前期教育。いわゆる基礎的な訓練を受ける。

 しかし、富士にあるのはそれら基礎的な訓練課程を終えたものが入る施設で、より専門的かつ実践的な訓練をするところで、その成果の集大成といえるのがあの有名な「富士総合火力演習」通称、総火演である。

 

「えぇ…。朝霞にもあったの~」

 

 マネージャーさんの気の抜けた声が聞こえたが我々三人はお構いなしに力強く一歩踏み出した。


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