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ワタクシ。Ritaであります!  作者: リノキ ユキガヒ
第七章「ついに」①
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 リナの件からどれ位の月日が流れただろうか?

 所要で事務所に顔を出した時にマネージャーさんが微妙な表情で私に話しかけてきた。

「あの~。防衛省から仕事の依頼がきてるのですが…」

 私は彼の問いかけを受けて一旦事務所の天井を仰いだ。

「防衛省ってあの?」

 と、ピンとこない感じで返答した。

「ですよね~。さすがにここからの仕事は受けづらいですよね~。因みに自衛官募集のポスターなんですけど…」

「えっ!?ちょっと持って!それって実際に隊員の人と絡みあるの!?演習場とか入ったり装備品とかつけたりするの!?」

「え!?ああ、あるんじゃないですか?多分」

「本当!受ける受ける受ける!」

 血相と形相を変えた私の表情に押されるようにしてマネージャーさんは先方に電話を入れた。

 打ち合わせは勿論、市ヶ谷の防衛省で行うとの事!

 これはもう、総員緊張して待機せよ!だ。

 

 某月某日。天気晴れ。


 私とマネージャーさんは新宿区市ヶ谷本村町にいた。

 任務の特性上、日にちは秘匿させて頂く。

 防衛省だからだろうか?明らかに普通の官庁街とは違った作りの門構えに期待と緊張が入り混じる、興奮状態の中に私はいた。

 とりあえず、正門の門扉をくぐる前に自撮りをパシャリと済ませた。

 省内は勿論、撮影など厳禁であろう。

 改めて門の周りを見渡す。物々しい雰囲気。厳重な警戒態勢。流石にMPと思われる自衛官はいないが、立ち並ぶ様に門前に配置された民間会社の警備員さんの数が普通のビルやらとは違う。

 そしてその警戒をより一層重々しくしているのは明らかに何かしらが突っ込んで来ても耐えられそうな鉄柱が門前の地面に埋没しているところだ。有事の際はこれが飛び出てくるのだろう。

 正直、履帯で進行してくる戦車の超提能力を防げるか怪しいが、かなりの重量がある車両でも衝突だけでは突破、破壊は難しそうだ。

 更に車止めの為だろうか?門をふさがない程度に散見される、低い移動式のバリケードだ。

 これは車両の出入の際に一時的に門をふさぐ役割を果たしていた。

 

「お疲れ様です!!」

 

 と、正門を物色していた私の耳に突然凄まじい声量の挨拶が飛び込んできた。思わずそちらに視線を飛ばす。

 先ほどは気付かなかったが、迷彩の戦闘服に身を包んだ自衛官の姿があった。

 声の主だろうと思われる彼は、恐らくであろうが、高官が乗車している車両に向かって挨拶をしていたのだろう。一般的な乗用車には何ら反応は示さない。

 その彼は膝丈位の白い台の上に休めの姿勢ではあるが、直立でおり。よく見るとその手には小銃らしきものがあった。

「い~っ!?」

 それを見て私は思わず変な声が出た。恥ずかしい話実銃を見るのが初めてだったからだ。

 いや、正確には現役使用中の小銃を見るのは初めてだったからだ。

 お巡りさんが携行している拳銃ならホルスターに収まっているとはいえ見た事はある。

 いや、日本人だと身近にある実銃はこれくらいだろう。

 まぁ、趣味で狩猟やクレー射撃をやっている知人がいれば話は別だが。

 長尺物。いわゆるライフルなんかは見れる機会はそうそうない。アンチマテリアルライフルなんかを日本で見ようとすれば夢のまた夢だ。

 しかしそれはすなわち、日本が平和である証拠でもある。感謝すべきで誇れる事だ。

 改めて彼に視線を向ける。当たり前といえば当たり前だが、やはり軽装だ。

 戦闘服に弾帯、そこにマガジンポウチと思われるものが数種類。自分の今いる場所からではよくは見えないがおそらくサイドアームもあるだろう。

 しかし、特徴的なのはヘルメットだ。通常のテッパチではなく白色のクラシカルなタイプのものだ。いわゆるM1タイプで耳の部分が保護されてないものだ。

 ベトナム戦争とかを思い浮かべてもらえばいい。

 しかし、そのヘルメットのデザインがここが日本の防衛の要であるという事と、特別な場所であるという雰囲気を伝えてくる。

 そしてそれを更に深くするのが彼が携える「64式小銃」だ。

 現代のカスタマイズを優先した無機質なデザインの小銃とは違い、今日では馴染みの薄い木製部品を使用したグリップとストックは、サンパチや九九の意思を引き継いだ芯のある力強さが感じられる。

 それでいて日本人特有の温かさを宿し、それらが混ざり合う事で気品すら漂わせる。

 

 これぞ日ノ本の突撃銃!

 

 と、強く思わせる。

 こんな素晴らしい小銃を目にしてしまうと、ウットリとした視線を図らずも注いでしまうのは私だけではないはず。…だ。

  「あの~。リタさんそろそろ時間が~」

 マネージャーさんが私の顔を覗き込む。どうやら打ち合わせの時間が迫ってたようだ。

 いかんせん。普通の出版社とは違う、その入館に手間がかかるのは織り込んでいかなければならない。

 私達はいよいよ防衛省の門扉をくぐった。そのすぐそばには入館手続きをする小さめ建物があり、私達はその中に入っていった。

 少し驚いたのがその来訪者の数の多さだ。一流企業のそれと遜色は無い。会社の規模も大きいと、その受付のカウンターとその係りの方も多くなる。

 防衛省…。その特異性から鑑みるにここで諸手続きをしている人達は恐らくは軍需産業に携わる方々なのだろうか?何か、こう。妙な想像力を掻き立てる。


 武器商人


 と、いう四文字が私の脳裏を横切る。そう思い始めると見える景色は何かこう、いけない事でもしている集団に紛れ込んだような感じというか、ブラックマーケットに迷い込んだというか、

 ただ単にではあるがここが日本ではなく中東のどこかにでもいるような気分になってきた。

 シタールの音色がどこからともなく聞こえてきそうな…

 いや、よくよく考えてみたら皆がみな、兵器やらの交渉で訪れている訳ではないだろう。

 考えを改めて私とマネージャーさんは防衛省に入る為に手続きをすべく受付カウンターへと向かった。

「いらっしゃいませ」

 私の耳に入って来たのは華やかな女性の声だった。虚を突かれたので思わず目が丸くなった。

 カウンターの向こう側には女性の事務員らしき方が、笑顔をこちらへと向けていた。

 防衛の重要拠点の入口にまさか女性が配置されていようとは…。私がもし国家転覆を画策している輩だとしたらこの場を易々と制圧できるかもしれない。まったく、防衛省の危機意識はこの程度なのか?呆れてしまう。

 いや待て。

 軽々に事を考えるな。このいくつかあるカウンターに配置されている女性達。

 一見すると只の事務要員の様に見えるが実は特殊訓練を受けているWACだとしたら…。

 仮にだ、私が何らかの攻撃にでたとしてもWACが数名いたら、返り討ちに合う事は免れないだろう。

 それこそ、銃火器を向けても私が彼女達を制圧するのは難しいだろう。

 カウンターが邪魔して見えないが、腰には恐らく拳銃の類が。

 マネージャーさんとやり取りしている後ろから私は彼女の容姿を確認した。

 が、私の身長をもってしてもカウンターの下に続く机に視界は遮られて、彼女の下半身はよく見えなかった。

 んや。ひょっとしたら机の下には機関単銃くらいはあるのでは?

 ここは防衛省だぞ。銃火器の一つや二つあってしかるべきだ。重火器だってあってもおかしくはない。

 事実。迎撃ミサイルが一時的配備された事もある。

 日本の防衛を司る中枢機関の防御が脆弱でいいわけがない。私たちにはわからないがきっとハリネズミのような武装が各所に施されているにちがいない。私は室内をギョロギョロ見渡した。

 せわしなく視線を動かしていたら受付の方と目が合ってしまった。

 彼女はマネージャーさんとのやり取りの流れで何かに感づいたらしく「ハッ」とした表情を示した後に

「モデルのリタさんですね!」

 と、思わず口に出してしまった。私に室内の視線が一気に集まる。それはまるで十字砲火のよう。


 十字砲火


 第一次世界大戦に考案された塹壕と鉄条網によって行われる情け容赦ない鉄の雨。

 ギザギザに張り巡らされた鉄条網に、行く手を阻まれた歩兵達は否応なしに横隊を崩さざるを得なくなり。そしてそれは一つの塊に成り果てる。

 そう、狙い撃つ側からすると、ギザギザに張り巡らされた鉄条網の突端に集まった人達は幾重にも重なって見える。

 そこを左右から挟み込む様に配置された、機関銃で狙い撃つ。

 文字どうり火線は十字に交わり、地獄の業火と化した銃弾に焼かれ、兵士達はバタバタと倒れていく。圧倒的な火力の前に小銃突撃していく兵士達は、成す術なくなぎ倒されていく。


  そんな感じだ。どんな対応をしたかは業務上の理由から秘匿させて頂く。


 以上。

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