Robot&Lover
ドルガナ中央情報局にスカウトという形で入れてもらえた。試験も難なく合格してしまった。あの程度の試験、魔獣と戦ってた時なんかと比べれば全然苦にならない。全寮制で毎月給料ももらえるし、剣零の時と基本何も変わらない。一つ違うのは、レンレンや郁達がいないことだ。だから、今の願いは一つだけ。ここから帰るか、レンレンたちをこっちに呼ぶかどちらかだ。レンレン早く会いたいよ。
「さて、今日付けで死祭騎士団に配属になったカケルだ。仲良くしてやれよ」
「あれ、この前のじゃない。マクスウェルの言うとおりになったね」
「当たり前だ。俺のは予想や予知ではない、未来はある程度なら見えている」
「カケルにはいきなりで悪いけど、さっそく任務だ。この銀河の第十惑星にドルガナはあるわけだが、任務は同銀河第三惑星に行き、魔獣の調査。三時間後にゲート三〇二に集合。何か質問は」
第三惑星だと、それってなぜかこの星にいる僕が本来いるはずの星じゃないか。帰るべきかどうかは考えないで置くとして、このままじゃ、レンレンたちにも出会ってしまう。それは何とかしないと。
「第三惑星ってReathですよね、行かずともある程度なら魔獣の情報が分かると思いますが、なぜ安全かも分からない第三惑星にまで行くのですか」
「魔獣の調査というのはあくまで名目だ。実際はその星にある剣零高校に潜入、調査してほしい」
「剣零高校は、特別魔獣対策専門学校と名前が変わったんではなかったんですか」
「ほう、よく知っているな。今回は時間がないから触れないで置くが、次に会うまでにそれなりの理由を考えておくんだな。とにかく、特魔対で潜入及び調査をし、それを帰還時にレポートで報告。レポートの形式は自由。今回の任務からだがリーダーはカケル、お前だ。マクスウェルはカケルをフォローしてやれ。他に質問はあるか。では、解散」
―食堂―
ここの食堂はメニューが多いな。特魔対の倍以上はある。さっきは危なかった、勢いで必要ないことまで言ってしまった。剣零高校が特魔対に改名されたのはつい最近のはずだから知っている人は少ないはずだ。これ以上怪しまれないように、発言は慎んだ方が良いかもしれないな。
「どうした、お腹へってないのか。要らないならもらうぞ」
「ああ、食べてもいい。あんまり食欲がないんだ」
「そりゃそうだろうな。初めっから何をしたらいいのかよく知らないのにリーダーをやらされるとは運が悪いやつだな」
よく考えたら僕は昔から運のないやつだったな。学校に行くときに魔獣に会うし、生徒会の副会長をさせられるし、カリストアになぜかいるし。しかもレンレンも冷たいし。なんか泣けてくる。
「でも、最初っから任せられるほどのやつだって思われてるんじゃない。それならその通りの成果を出してやれば問題ないだろ」
「そうか、そういうことならそれ以上の成果を出さないと。よしって、Reathまでどうやって行くの」
「宇宙空母に六機、二足歩行兵器を積んでそれでそこまで行く。大気圏もその空母なら問題なく降りれる。もちろん六機あるってことは俺らが乗るんだけどな」
「二足歩行か。四足歩行はないの、僕はあっちの方が動かしやすいんだけど」
「四足歩行の兵器はあったかな。聞いといてやるが、多分ないぞ」
「それじゃ、僕は特魔対で自分の機体を探してくる」
「そう簡単に見つかるものかな。あんなところに機体があるとも思えないし」
―ゲート三〇二―
わあ、この艦、大きい。早く二足歩行の機体が見たい、色とか装備とかいろいろ気になる。
「これが宇宙空母か。どこに機体が積んであるの」
「そうあわてるな。順番に説明するから。この艦は死祭騎士団専用だ。もちろん修理等も騎士団内でする。そして、カケルが気にしている機体だが、これだ」
えっ、ちょっと装備が少なすぎない。武器はないし、これと言って何も装備はない。機体の色は、白黒赤青紫水だ。特魔対とほとんど色が変わらないのが恐ろしい。
「カケル、白だ。他のやつはいつも通りだ。何か質問はあるか」
「なぜ、装備がないんだ。それと、この程度の機体なら特魔対には近づけない」
「装備は潜入が目的だからだ。この程度といったが、この機体なら特魔対には近づける。そう簡単に壊れる代物じゃない」
まあいいいか。どうせ僕は特魔対で自分の機体を使うんだし。
「他に何も質問がないならすぐに配置に就け」
―死祭騎士団宇宙空母コックピット―
大丈夫なのか。初めての任務でいきなりリーダーをやらせて何かあったらどうするんだろう。いくら司令長官の命令とは言え、無理があるような気はするが。
「全システム問題なし。いつでも出撃できます」
「出撃時刻は2100に設定。死祭騎士団をスタンバイさせろ」
「その死祭騎士団から通信です。つなぎますか」
「つないでくれ。何の用だ」
『特魔対についてどの程度分かっているんだ。何も分からないわけじゃないだろ』
「なんだその聞き方は。誰に向かって言ってるんだ」
「別にいい。確かに何も分からないわけじゃない。そっちにデータを送る」
何だこれ、データって言ったって、これと言って役立つものは何もない。ドルガナでもこれだけしか情報を集められないものなのか。じゃあ、この情報を信じることにして、ある程度の特魔対の情報を渡すとするか。もちろん特魔対に全く問題のない範囲でだ。
『分かった。では、このデータを参考に必要であろう情報を入手してくる』
「出撃時刻です。通信を一度切ってください」
「ああ、すまない。エンジン点火」
「第一エンジン点火。異常なし」
「発進!」
―第三惑星特魔対―
カケルがいなくなって数日が経過した。カケルは副会長であったが、生徒会長であるハルがしっかりしているためあんまり問題は起こっていなかった。起こっているのは、レンをリーダーとする剣零騎士団内でだ。
「レン、そろそろ元気出して。このままじゃ、カケルが帰ってきてもカケルを困らせるよ」
「レンにもこういうところがあったんだな。なんか以外だね。レンっていつもツンデレのツンしかないような感じだったからびっくり」
「大変だ。第九惑星から攻撃型宇宙空母の出撃を確認。目標はここ、Reath」
「さすがにここには来ないだろ。ここに来たってカリストアのことは何も分からないんだぞ」
「あいつらにはそんな事関係ない。特魔対のロボットでも盗む気だ」
「どうするんだよ、宇宙空母の性能なんて誰も知らないぞ」
「リーダーとして命じる。飛行不可二足歩行機体のみ出撃。情報漏洩を最低限にしろ。あらゆる電波は遮断。会話は拡声器を使え」
一番旧式の機体でもそれなりに使える。飛行可能機体が有ること等を隠せれば問題ない。
―宇宙空母―
暇だ。魔獣とあんまり戦えないだけで退屈なのに、こんな狭い空間で何時間もいたらさすがに退屈になる。ドルガナは食事とかにはそれほど不満はないけれど、さすがにこの扱いには不満がある。どうせまだ着かないんだし、普通にいてもいいじゃない。何で機体の中でずっと座ってなきゃいけないんだ。
「あれか。こんなに恒星が近いというのによくあんなきれいな色をしているな」
「いや、あれは恒星が近いからこそだよ。リブニとは違ってあれは完全な自然星だから」
『今から大気圏に突入する。念のため耐衝撃体勢でいて』
―Reath―
ふぁあ、なんとか無事に着陸したようだな。大気圏に突入する前に寝てしまったから、よく覚えてないけど、それなりに的確な射撃で攻撃を受けてたような気はしたけど。まさか、あいつらがするわけ――
「よくあんな揺れてる中で寝れるな。バカかお前は」
「バカっていうな。僕は機体を信じてるからどんな状況でも寝れる」
「カケルらしいな。機体は生きていないのに、信用するのはカケルにしかできないしな」
「それは褒めてくれてるのか貶してるの――」
誰か近づいてくる気配がした気がしたけど気のせいか。魔獣の出るかのせいがある防護壁外に出る奴など、いないわけではないが。
「特魔対はあっちだよ。ただ気を付けて、どんな兵器があるかはよく分からない」
「構わない。すべてわかってることほどつまらないものはない、そうだろカケル」
「ならいいが。ちなみに僕たちはすでに囲まれているんだけど、気付いてた」
「なっ、いつの間に。気づいてないふりをしよう。それもばれてるかもしれないけど」
―特魔対防護壁―
相変わらずここは変わってないな。てっきり一番外側の防護壁くらい魔獣に壊されてると思ったのに。
「衛兵!帰ったぞ」
「か、カケルさま。おかえりなさいませ。すぐに剣零騎士団をお呼びします」
は?衛兵がいるのにも驚いたが、なんで敬語を使われるほどのことになっているんだ。
「少しいいか。カケルお前は一体何者なんだ」
「言うのが遅れてすまない。僕は特別魔獣対策専門学校生徒会副会長兼剣零騎士団長、カケル。Reathの民だ」
「やはりそうだったか。それで特魔対に詳しかったわけか。じゃあ入ろうか」
おい、何もしないのか。敵国の同盟国の民が嘘をついてまで潜入していたとなれば普通なら追放か、抹殺にはなると思ったが。
「カケル!帰ってきたのか。お前がいなくても全然問題なかったんだけどな」
「そんなこと言って、カケルがいなくなってしばらくパニックになってたくせに」
「それは内緒のはずだ。それより、なぜ宇宙から落ちてきたんだ。そこのは新しい仲間か」
「正解。レンレン、えっとマクスウェルにレッドマーキュリーでその隣が――」
「それはコードネームだ。本名を言った方が良いだろ。まず俺が、霜だ。で、愁・涼・享・尊だ」
そうか、僕はコードネームが偶然かどうか知らないがそのままだったからあんまりその存在が遠く感じていた。
「あれ、その名前どっかで――。あっ、KOBの生徒会の人だ」
「珍しく郁がさえてるじゃん。そうかそれで前にKOBの近くに行ったときも静かだったんだ」
「ああ、俺らがいない間は不要な行動は控えろと言っておいたんだが、そうしたら何にもしなくなってたんだな」
「ってことはカケルの仲間が他防護壁施設の生徒会だったって事か。相変わらず妙な運
を持ってるよね」
「恋に言われたくない。恋ほど運がいい人も見たことないけど。それより、僕が潜入したチームが潜入してる人たちの集まりだったてことか。生徒会なのにもびっくりだけど、僕と同じ行動をとってるのにも驚いた」
「カケルは一体どこに行ってたんだ。さっきから全く話が読めないんだが」
「ハルさん、もちろんちゃんと説明はするよ。簡単に言えば、ドルガナの諜報機関の仕事で来たんだ」
「諜報機関?誰がそんな機関に所属してるんだ」
「カケルとKOBの生徒会だろ。大丈夫なのか、バレたりしたら何かされるんじゃ」
「問題ないよ。確か、旧式のもう動かない二足歩行兵器があったよな。あれもっていけば何とかなる」
「エンジン部分は取り除いとけ。それだけでも十分な技術だ。最低限の兵器しか持っていくな」
「カケル、お前がいない間に造ったのによく二足歩行兵器があるって気づいたな」
「そりゃ、前にはなかった音が聞こえるんだもん。どうせ二足歩行なら完成してるだろうと思って」
旧式のやつは遅いし燃費が悪いし、すぐに壊れるしでろくに使えたもんじゃなかった。あくまで造っただけという感じだったらしい。もちろん、新型はそれを超える性能が備えられているはずだ。
「ほい、もう動かないがもってけ。分かっていると思うが、カケルのためだ。KOBの生徒会のやつのためじゃない」
「もってけじゃないよ。剣零騎士団ものるんだよ。ハルさんの所の騎士団も乗っていくんだけど」
「どうするつもりなんだ。カケルお前は何を考えてる」
「仕返しをするだけだよ。ここに魔獣を送り込んできたのはドルガナだ。だからドルガナを攻撃する」
「死祭騎士団は予定通りに戻る。剣零騎士団とハルさんの所はドルガナの領空で落とす」
「だが、生徒会がいなかったら、防護壁内はどうするんだ」
「安心してください、防護壁内のことは生徒会代理として私がしておきます」
「冬夏、本当に大丈夫だな」
「信用してないのか。カケルがいない間、だれが生徒会副会長の代わりをしていたと思ってるんだ」
「じゃあ、生徒会副会長として命令します。生徒会代理として、防護壁内を一時的に全権委任します」
「分かりました。責任をもって防護壁内を管理します」
これで何も問題は無いはずだ。今さら思えばおかしいのだが、何故か生徒会長であるハルさんよりも僕の方が権限が強くなっている。あれだけ勝手にドルガナに言ったりしてるのに何でそんな事になるんだろう。
「カケル、そろそろ時間だ。剣零騎士団とハル達はどうした」
「あれ、さっきまでそこにいたはずなのに」
『安心しろ、俺はカケルから離れたりしない。別の艦で行く。死祭の艦ではドルガナに確実に勝てない』
いつの間にそんなものまで。あれなら宇宙にも行けるだろうけど、どうやってあんなものを。せめて二足歩行兵器程度ならまだ分かるけど、あんなに大きなもの何処においてあったんだ。大体僕があんな大きな艦の音にすら気づけないとは。一体僕がいない間に何があったんだろう。
『それなら一つくらい増えても問題ないな。俺らも艦を出す』
はあ、これじゃあこっそりドルガナに帰る必要がないじゃない。まあいいか。損よりも得の方が大きそうだし。
「カケル、死祭はこんな艦でいいのか。剣零に攻撃されたら確実に負けるぞ」
「剣零が攻撃してくるわけがないだろ」
レンレンがそんなことをしてくるはずがない。大体出来るはずもないんだ。
「全艦、発進。目標、第九惑星ドルガナ」
―ドルガナ国防総省―
何やらあわただしくなっている。それは当たり前だ。特務機関の精鋭である死祭騎士団が向かったはずの惑星から三機の飛行物体が向かってきているのだ。もちろん一機は死祭騎士団だ。だが、あとの二機は誰も見たことのない機体だった。そのため、全く攻撃を受けていないにも関わらず、ほぼ全部隊で対応するということになり、端から端まで大忙しだ。
「この二機の船籍はまだ分からないのか」
「コードにない機体でして。全部隊あらゆる攻撃に備えて待機させてあります」
「当たり前のことを言うな。二機の予想武装数は」
「主砲五門、気雷管三十門、機銃五十門です」
「一機だけでそんな武装だったらこっちも勝てるか分からないぞ。第一防衛線を第七惑星軌道上に、第二防衛線を第八惑星軌道上に、絶対防衛線を第九惑星第十惑星の中間に設定」
未知の機体である以上、想像は大事であるがその分飛躍的に考えてしまうこともある。実際、二隻の艦には、外部には一切攻撃装備を取り付けていなかったのだから。
ー剣零艦隊ー
ドルガナにこのまま普通に戻れるかな。死祭騎士団が全員Reathの民だったからよかったけど、もしそうじゃなかったら大変だった。でも、ドルガナが三機の艦を見てそのまま何事もなく戻れるとは思わない。念のためであっても、絶対に積み荷の確認をさせられるだろう。そうなったらレンレンやハルさんがいることもばれるだろう。どうするべきなんだろう。
「前方より艦影多数。小型無人機約三百、小型有人機百五十。宇宙空母十二隻、宇宙戦艦及び宇宙巡洋艦二十隻」
「ドルガナか。この数からして積み荷内容の確認ではないと思うけど、どうする」
「レンレン、そっちの二隻に積んでるものが今使えるんだったら使って」
「なんだ、カケル気づいていたのか。もちろん、カケルのやつも積んでる」
さすがに僕の機体があることまでは期待していなかった。でもそれはそうか。最初は死祭騎士団は普通に戻って、あとの二隻は地上に降りて、国防総省等を包囲する予定だった。ドルガナが二隻の積み荷の中身を気にしないわけがないことを忘れていた。
「全部隊、敵戦力不明及び防衛戦力不足のため、敵艦が攻撃をするまで一切の砲撃を禁ずる」
出来れば、攻撃をせずに戻りたい。ここで戦闘になった場合、勝てる保証はどこにもない。ドルガナがどれだけの戦力を持ってるかもわからないし。
「ドルガナから通信だ。繋ぐぞ」
「構わないが、言語が理解できるのか」
「大丈夫だ。お前がいない間にカイルとシャロンに習った」
「それにカケル以外の死祭騎士団はその程度の言語は話せる。翻訳は任せろ」
そういうことか。だから死祭騎士団は僕に話すのがドルガナの言語じゃなかったんだ。
『ドルガナ中央艦隊旗艦戦艦コンゴウだ。積み荷の確認をさせてもらう』
「十二、十八、二十、四十二、十五か。どうやってこれらの艦を造ったんだ」
『さすが、レンだな。戦艦、重巡、軽巡、潜水艦、空母の数を正確に当てるとは。どうやって造ったかと言ったな。中央情報局のおかげだと言えば分かるだろ。で、カケル、積み荷の中身を確認してもいいな』
「ああ。好きなだけ見ればいい」
どうしよう。どうやっても後に引けなくなった。
「カケル、俺に策がある」
さすがレンレン。そんな機能まで機体に搭載してたんだ。これならドルガナでも気づかないだろう。積み荷の確認っていう割にかなり細かいな。中を見たらすぐに行くのかと思ったら、搭載武器まで調べるのか。
「なぜ、この二隻には積み荷が無いんだ」
「その艦は性能が一切分からないから、分かるまで航行以外しないことにしただけ。それに積み荷は一隻に全部乗ったし」
そういえば、コンゴウがいる上級艦隊もそうだが、他の艦隊にも妙な噂がある。現時点で一つ言えることは、宇宙にいるはずだから各艦の甲板に立とうとすれば、空気がないし温度的にも宇宙服らしきものはいるだろう。いま僕たちの艦は空気のない区画にいる人だけ来ているから大丈夫だが、上級艦隊は全員普通の服装だ。正確に言えば、宇宙に適した服装ではない。それに、ドルガナにしては珍しく、制服が存在していない。一番疑問なのはそんなことよりも、名称が僕たちは騎士団なのに、なぜか艦隊だということだ。ドルガナは何かと統一を図ろうとするはずなのに、なぜ名称を騎士団と艦隊の二つを用意したのかが疑問だ。
「それならいい。すまないな、時間を取らせて」
はあ、上級艦隊の旗艦とは言え、やはり緊張する。いつかこんなやつと戦うことがあると思うと不安になる。いくら機動性攻撃力防御力に優れていても、コンゴウ以上なら正確かつ高出力で攻撃をできるだろう。できれば敵には回したくない相手だ。味方にできれば重要戦力になる。それに、今の僕たちには艦への攻撃は原則できない。特魔対規則十三条、『機体を壊していいのは機体だけ。動物を倒していいのは動物だけ。その他も同様とする』があるからだ。これに則れば、戦艦等艦を破壊していいのは艦だけになる。今の僕たちには攻撃できる機体はあるが、攻撃できる艦は一隻たりともない。だから攻撃されても出来るのは迎撃ぐらいだ。別に規則に反したところでこれと言って罰などはないのだが、もしそうした場合、規則を作った意味がなくなってしまう。だから、今できるのは自衛だけだ。ちなみに規則の適用範囲は、特魔対等防護壁内及び特魔対所有艦船内となっている。防護壁内ではないのに規則が適用されるのはそのためだ。特魔対に属さない、死祭騎士団の艦は今は攻撃系装備が一切ないから良くも悪くも攻撃ができない。十三条通りなら、今倒せるのは小型有無人機だけだ、もちろん攻撃を受けてからだが。
「全艦、前進全速。これより予定通り作戦を続行する。各艦の指揮は、レンレン、ハルさんに任せる」
―ドルガナ本土某所―
ここはどこなんだ。惑星大気圏に突入する際、エンジントラブルか何かで、着陸場所がかなり離れた場所になってしまった。角度的には一度以上もずれていないはずなのに、こんなにも場所が変わるのか。
「着陸の衝撃によるけがや機械の故障はない?」
「カケル、あのエンジンしか壊れてないようだ。もう一つ予備で積んでいれば良かったな。」
「カケル、機体の燃料は満タンだ。整備も終わってる」
「じゃあ、そいつで――って何でレンレンも恋も、こっちにいるの。さっき剣零の艦に乗ってたよね」
「ああ、それのことか。コンゴウとカケルが話している間に全員入れ替わった。この艦は剣零騎士団の艦だ。それに、霜にカケルは死祭よりも剣零にいる方が良いと言われた」
いつの間にそんなことを。別に作戦に支障はないけど、もっと僕にも分かるようにしてくれてもよかったんだが。
「そいつでって言おうとしてたけど、何をするつもりなの」
「言わなくても分かってるだろうけど、機体に乗って機体だけで国防総省まで行くだけ」
「そうか。カケル、俺はお前から離れられない。だから、これを渡しておく。一応魔石らしいが、会話も出来るらしい。カイルからもらった」
「離れられないって、どこかに行くつもりなのか」
「カリストアだ。カケルなら理由は分かるだろ」
「そうか。次に会うときは全員無事でいることが条件だよ」
―国防総省―
とりあえず、一機だけ持ってこれた。あとは一度にじゃ持ってこれないし、それにもって来たくも無い。大体、国防総省なんかに入る事自体嫌なんだが、コンゴウにあんなことを言われたら行くしかない。
『カケル、ドルガナについたら国防総省に来い。ドルガナ最先端の機体を見せてやる』
こんなことを言われたら、僕の好奇心的にも断る事なんてできない。だから国防総省まで来てしまった。
「カードの提示をお願いします」
なんだ、警備に人がいると思ったら全部ロボットか。よくできているな。でも、国防総省に入るためのカードなんてもってないんだけど。そうだ、このロボットの性能を試す機会だ。
「ここには呼ばれてきたんだが、中央艦隊旗艦コンゴウに会いたいんだが」
「それでは、コンゴウさまにお繋ぎいたします。しばらくお待ちください」
『中央艦隊旗艦秘書、ヒエイです。私がお話を伺います。ご用件は何でしょう』
「コンゴウに呼ばれてきたんだが、僕はカードを持っていないから入れない。どうにかしてほしいんだが」
『お話は聞いております。ですが、ただいまコンゴウさまは外出されております。おかえりになるまでお待ちください』
「いまどこにいるのか知っているだろ。教えてくれ」
『いえ、私も外出するとしか伺っておりませんので場所までは存じません』
「分かりました。自分で探します。もし帰ってきたら、カフェにいると言っといてください」
あれ、今更だけど、なんでドルガナの言葉が分かるんだ。知らないはずなのに、知っている。一体どういうことなんだろう。あれかな、異世界に行けば他言語も理解できるというやつか。ドルガナは異世界扱いということで納得しておこう。
―ドルガナ カフェ―
へえ、これがカフェか。思ってたより小さいな。見た目は小さくても中身は大きいはず、なのかこれは。
「いらっしゃい。ひとりかい、それなら――――」
「いや、そこでいい」
はあ、あれだけ旗艦らしそうにしていたくせに、コンゴウも普通に紅茶を飲むんだな。
「ご注文はどうする?」
「ダージリンでいい、砂糖なしの」
コンゴウ、僕が目の前にいるのを分かってわざと無視してるだろ。そうじゃないならなぜ何も言わない。
「コンゴウ、機体を見せてくれるといっていたが、どこにあるんだ。なあ、聞いてるのか、姉さん」
「ねえさん?誰に向かって言ってるんだ。コンゴウと呼べ、異星の民が」
あっ、なんかいけない事言ったかな。気に障ったならもう言わないけど、なぜ僕が異星の民だと知ってるんだ。これを知っているのは死祭騎士団、剣零騎士団、剣機騎士団だけだ。剣機騎士団というのはハルさんの所の騎士団の名前だ。
「あら、まだ話し合いは始まって無いようね」
「ヒュウガにタカオ、マヤ、キリシマ、ハルナ。それに、ヤマトまで。そこの小さいのは誰」
「私は潜水艦四〇〇。私は小さくない、周りが大きいだけ」
まあ、強情張りだな。うちのレンレンと似てるような気もする。レンレンが女の子だったらこんな感じだろうな。
「そういえば、気になってたんだが、潜水艦って宇宙空間じゃ潜水できないのに、何をするための艦なの」
「宇宙空間では、目視できない範囲ではセンサー系統には簡単には映らない、その程度だ。もちろん、水中では通常通り、航行できる」
「それで、上級艦クラスに超級艦クラスまで集まって、どうしたの」
「お前の死祭騎士団についてだ。知っているか。ドルガナには、総統派と王党派がいる。今は、総統派が政権を握っているが、やつらには多々疑問がある。ここで一つ質問だ。カケル、中央艦隊、少なくとも今ここにいるやつは総統派か、王党派かどちらだと思う」
「普通に考えて、王党派だろ。まさかだが、カリストアとの戦争も総統派の策略なのか」
「それは分からないが、総統派ならその可能性はある。まあ、この話は別にどうでもいい。大事なのはカケルが最新の機体を見たいのだろ。マヤ、案内してやれ」
「はいはーい。マヤに任せて」
「マヤ、カケルに迷惑をかけないでよ。いつもすぐに暴走するんだから」
「ダージリンが残ってた。ちょっと待って」
大丈夫なのか。暴走されてもほっておくことしかできないから知らないけど。
「いらっしゃい。お席はどこにします」
「そこでいい。アッサムを一つ頼む」
あれ、この声どこかで聞いたような。アッサムを頼んでるってことはまさか。
「レンレン!」
「カケル!」
まさか、何も言ってないのに同じ店に来るとは。
「なんだ、知り合いか。カケルは人を集めるのが得意なようだな」
確かに僕の周りにはよく人が集まる。もちろん、僕を手伝ってくれる人だ。弁護士に医者、薬剤師、警察官、解剖医、科捜研等々。それに共通点は、賢くて変人というところだ。最近は何度か、海外に言ったおかげで、世界数か国にもいる。CERNやCIAにもいる。
「あくまで偶然。それよりなんでレンレンはここに来たの」
「お前と同じだ」
ってことはまさか、剣零騎士団がいることがばれてるのか
「安心しろ、さっき言った通り王党派だ。味方にできるものはなんでも味方にする。不要になった場合はどうなるかは分からないがな」
不要になったら、ねえ。
そのうち僕たちもそうなるのかな。
「マヤ、あとはタカオ、仕事をしてほしい。報酬はこれでいいですか」
「仕事の内容にもよるわよ」
「カリストア第二艦隊を撃滅する。これが仕事」