六話
「酷い目に遭いました...」
現在地は変わらず草原の初戦闘の場所。
口元を抑えて蹲っていたがまず一言。
「これは酷い...」
思わず口に出るほどに酷い味だ。苦味だけでなく、酸味や甘ったるい味が加わりそれぞれが自己主張していて味覚を苛んでくる。だが匂いはなく、舌触りは普通の水と一緒だ。ドロドロしてたらもっと酷いことになる。
「これは薬師が必要になるわ...」
恐らくNPCが売っているポーションはこの味が普通なのだろう。そして薬師のプレイヤーはハンドメイドのポーションを作る時に味を改良し、さらに効果を上げると。
NPCのポーションは飲まずに傷口にかける方が良さそうだ。効果は若干下がるらしいが仕方ない。あれ飲みながら戦闘は【精神】の値が高くないと無理だろう。精神力的な意味で。
「一旦街に戻りましょうか...?」
口直しもしたい。切実に。
でもお金はないから食べ物などは買えない。
...戻っても意味がなさそう。なら先に進むしかない。
この草原の先には森のフィールドがある。
移動に時間が少し掛かるが、そこでなら何もない草原より【採取】の技能も役に立つだろう。もしかすると食べ物、木の実なんかも手に入るかもしれない。
食べ物である。
食べ物。
「行きましょう、森へ」
まだ始めたばかりだし、無理はしない程度に冒険しよう。
レベルも上げないとボックス容量が足りないからまともに旅も出来ない。
何より食べ物は大切。大切。
早速森へと足を進めるが、移動中は草玉が出てくるだけだった。
近づいて蹴り飛ばす。だが一撃では沈まなかった。
HPを見ると残り2。HPは5だったのは先ほどと同じだったはずだ。
だがHPが残ってる。
恐らく最初のグラスボールの時には、所謂クリティカルヒットしたのだろう。自分でも気持ちよく入ったと感じていたので、納得しながらもう一回蹴飛ばした。
グラスボールが消えるがドロップはなかった。まあ、今回は、いいかな。
...薬草コワイ。
ふと技能が頭をよぎった。そういえば私は【蹴り】の技能は持っていなかったような...
ウィンドウに技能の一覧を映す。
【素手】の経験値を表すゲージは全く増えていなかった。...当たり前だった。私蹴る以外の攻撃してない。浮かれすぎだ私よ。
ちょっと反省しながら別の技能に目を移すと、【僧侶の素養】によるヒーリングを見つけた。
あっ、ポーション必要ない。
ま、まあMP切れた時用の保険で持つのは良いことだから、何も悪くないから。
取り敢えずヒーリングのスキルを見てみよう。
ヒーリング 消費MP2
対象のHPを回復する魔法。回復量は使用者の【知能】によって上下する。
現在HPは消耗していないため使う必要はないが、回復手段は多いに越したことはない、のだが
「ちょっと恥ずかしいわね」
魔法スキルは使用する時に詠唱の後、スキル名を口にしなければいけない。
ヒーリングなら『癒し給え、ヒーリング』と口にすることで発動、対象の回復が起きる。
噂では詠唱破棄や高速詠唱などもあるらしいが、現状では唱えないと発動しない。
「まあ、後々慣れてきますよきっとたぶん。さて、そんなことより前進しましょう」
襲ってくるグラスボール達はは蹴らずに殴りました。
...殴れば一発だった。技能補正は重要。
今回のまとめ
精神力が試される回復薬
旅は引き際も肝心(引き返す訳ではない
無闇に蹴ってはいけません
黒歴史を強要するスキル