五話
さて、草原に出て街が見えなくなったところで足を緩める。
ソロ...ではなく一人旅であるため、喋る相手もいないので、心の声が多くなりそうだ。
それは置いといて、辺りを見渡すと初めてモンスターに遭遇した。
爽やかな風が吹き、波を打つ草原で、それに紛れるようにモンスターはいた。
何もせずに見えるのはHPゲージのみである。ならば。
「【鑑定】」
グラスボール Lv1
HP5 MP0
草が集まり玉のような形の姿をした魔物。
名前通りの草の玉で、草原では保護色になり見え辛いが、草の背丈が足りないため近づくと居るのがすぐに解る。
大きさはバスケットボールくらい。
目も手足も見当たらない。
なんにせよ戦闘である。
草原であるため遮るものがほとんどなく、相手もこちらに気付いている。
その証拠に、こちらに向かって勢いよく転がってきているからだ。
肩幅ほどに足を開き、軽く腰を落とす。両手を顔の横まで持って行き、軽く握り締める。
ボクシングっぽい構え。ボクシングしたことはないため、あくまでぽいもの。
グラスボールに注視する。もう目の前に来ている。あまり距離が離れていなかったためであろう。
グラスボールが勢いのまま跳ね上がり、私の胴体目掛けて突っ込んできた。
お腹の前で両手をクロスさせ防ぐ。
ベシッという音とともに私のHPが減り、僅かに腕に痛みが生じる。
地味に痛い。凄く痛いわけではないが、地味に痛い。
HPを確認すると15あったHPが14になっている。
「勢いの割にはダメージ少ないのね...」
グラスボールは私にぶつかった反動で離れていく。また突撃するための勢いをつけに行くのだろう。
逃がす訳がない。
間合いを詰めるためにダッシュで近寄る。戻るときの転がる速度はそこまで早くはないためすぐに追いついた。今は足元にグラスボールがいる状態だ。
足元にグラスボール。
足元に、グラスボール。
ボール。
「ってい!」
蹴りますよね。ボールだし。
グラスボールは蹴り上げられ、私の少し先にボトッと落ちてくる。
草が絡まって玉の形をしていたグラスボールの草が解けて、ただの草になり消えていく。
...。
よし。
初戦闘、勝利である!
...ちょっと締まらないが。
なんにせよ初勝利だ。そしてグラスボールが倒れた場所に何やら反応が。
ドロップというものかな?
薬草 rank1
ポーションの原料になる。そのままでも食べれるが苦い。
効果:HPが1回復
おお。
ファンタジーの定番だ。ポーションの原料になるということは薬師が使うものかな。
そういえばさっきの戦闘でダメージを食らっていたはずだ。1だけど。
丁度いいし食べてみよう。どれくらい苦いのだろうか...。
モグ...
「...っ!?...!?」
にっっっがい!!
苦い苦い苦い!!
ちょっと待ってこれは生じゃ食べられないって!
かじった分は飲み込んだがそれで限界だった。
お、恐るべし...薬草...。
HPを見ると15に回復していた。
効果はあって何より。なかったらどうしようかと。
まだ口の中が苦いが耐えられないほどじゃない。
...ごめんちょっと無理。
この口の苦味をなんとかしないとやばい。味覚が継続ダメージ受けているのである。精神的にきつい。洗い流すか別の何かで上書きせねば。
ふと、アイテムボックスの中にポーションがあったのを思い出した。
ポーション(初) rank1
薬草などを調合することでできる液体薬。傷口にかけるか飲むことでHP回復する。初級は回復量が少ない。
効果:HPを5回復
薬草使ってるならこれも苦いのでは。
でも他のものも使ってるしもしかしたら平気かもしれない...
グイッごくん。
「ーーーーーッ!!?」
味覚が御臨終されました。
今回のまとめ
初戦闘なんてなかった。
良薬口に苦し。