十三話
街につき、食事などを含めた休憩を取り終えて、今は露店のならぶ通りを歩いている。
先ほどからフラフラと見て回っているが、目当てのものはまだ見つかっていない。
(なかなか見つからない...武器を売ってるプレイヤーはいたけど、盾とかは売っていなかったし、時間がかかりそう。)
この街は大通りから入り組んだ路地裏に入ることができ、そこにも露店がチラホラ見える。
街の散策だけで1日潰せそうだ。
大通り近くの路地裏に入り散策してみる。
(大通りほどじゃないけど、露店開いている人がいるわね...NPCが殆どみたいだけど)
「くー...くー...」
「...?」
なにやら声が聞こえる。そちらの方を向くと背の低い女性プレイヤーが舟を漕いでいた。道の端に座りこみ、露店を開いているプレイヤーの1人だろう。
寝こけているが。
(あっ盾が売ってる。あと武器と防具も揃ってる。)
売り物だろうそれに手は触れず、しゃがんで見てみる。
鉄の円盾. rank1
鉄を円形に打ち、盾にしたもの。
腕に固定して使う。
効果:【耐久】に+5
中型の盾といったところか、木の板を土台に、円形に打った鉄を取り付けたものだ。
革の留め金と鉄の取手が1つずつ裏に付いており、取手を握り留め金で固定して装着するらしい。
装飾らしいものは無く、表面は磨かれて鈍い光を反射している。
感心しながら眺めていると、ひとつ気になるものがあった。
鉄の籠手 rank1
腕部に装着する防具。
手を保護する。
効果:【耐久】に+3
(これは...)
「んん...ん?えっお客さん!?わたし寝てた!?
あわわ、な、何か買いますか!?
いや違くていらっしゃいませっ!?
じゃなくて!ごめんなさい!お店出してるのに寝てしまうなんて!」
「え、ええ、気にしないでください。見ていただけですし」
そのプレイヤーは、金色の髪に赤い瞳の小さな女の子だ。可愛らしい容姿は鍛冶師には見えないが、白い顔に付いた煤がそれを証明している。
「本当にごめんなさい...そ、それで、お姉さんは何か買っていきますか?そんなに良いものはないですけど...全然売れてませんし...」
「え?こんなに良い出来なのに?」
素人目だが、かなり出来が良く感じているのだが。
繋ぎ目も目立たないし、頑丈そうだ。
「rank1の中なら、です...もう市場にはrank2や3のものまで売ってるところもありますから。
でもわたしは...その、rank1の素材しか手に入らなくて...」
「それはまた、どうして?」
「...うぅ、わたし、運動神経ないし、パーティ組んでも迷惑かけちゃうし、何より、その...技能の構成が...」
話を聞くと、彼女はこのゲームの発売日からやってるらしいが、ゲーム自体が初心者で、なにも知らずにNFTを始めたらしい。
戦闘がてんで駄目で、以前組んでいたパーティからは足を引っ張るからと自分から抜け、今は街の低ランクの依頼を受けたり、残ってた素材や安く売られている素材でなんとか鍛冶をしてるらしい。
ただ余り鍛冶もできないし、戦闘もできないからレベルが上がらず燻っている、と。
「そうなの...」
「すみません...お客さん相手に愚痴っちゃって...こ、このまま続けてればいずれレベルは上がりますし、そうしたら新しい技能を取ろうとは思っているんです!」
「でも、相当時間がかかるんでしょう?」
「うぅ...そうです」
どうしようか...見捨てるのもあんまりだし、かといって何かするにしても...
あぁ、じゃあこうしよう。
「少しいい?提案があるの」
「提案、ですか?」
「依頼とも言うわ」
今回のまとめ
もしかして:初会話(プレイヤー)
装備!装備!