最終話。『お疲れさんです!』
私も死を覚悟して目を閉じた。
それからどれぐらいの時間が経過したのだろう?
ヤマザキ
『ん…ここは何処だ。私は死んだのか?』
そう思った瞬間、私は飛び起きた。 夢だったのだ。
現実の私は政治家ではなく、
何者にも成れていない『ただ』のニートだったのだ。
ヤマザキ
『ふぅー。イヤな夢だったなぁ。それにしても、夢の中の自分は大金持ちのお坊ちゃんだったな!
あんな家に生まれてたらなぁ。プリンスってか?
へへへへ。
金持ちの家なら、人生ゲームの難易度もEasyだよなぁ!』
部屋を見回す。カップ麺などの食べかけが散乱している。
カラスの鳴き声が窓の外から聞こえる。
『夢の中の自分は美希っていう金目当ての身体だけが取り柄の女と付き合っていたのか。
けっ!甘いんだよ!自分の力で金持ちになろうとせず、男の力で金持ちになるのは反則だぜ!俺を見てみろ!そして俺を見習え!
働きたくないからリスクを負ってまでニートをしている俺を!
美希は考えがせこいぞ!』
両手を振り上げ、ヤマザキは絶叫した。
ヤマザキの言葉は虚しく宙に響いた。
今はやっぱり1人の時間を過ごしたい。 1人の時間を過ごさなければ成長できない。 私はそう信じている。そして人生の一発逆転満塁ホームランをいつか必ずや打ってやろう。
メタモルフォーゼだ(笑)
社会とは随分長い間、関わっていない。
関わりたくもない。
私の1日が今日も始まった。
今頃、普通の学生や普通の社会人は満員電車に揺られている時間帯だろう。あれは辛そうだ。
俺ならあまりの辛さに涙目になるね。
『お疲れさんです!』
テレビをひねる。
今日も一日頑張りましょうと女子アナが笑顔でほざいている。
私の妄想、空想に満ちた1日が今日も始まった。
自らの愚かな行為によって待ち受ける『ツケ』がヤマザキを待っていることも知らずに。