第5話 理想と現実。
久草
『き、きさまぁ、私を誰だと思っているんだ?!
私は天下の庶民不自由党の久草様だぞっ!?
俺は偉いんだぞぉ! 』
久草はそう言うと私の首を力いっぱい両手で締めあげてきた。
すごい力だ。
ヤマザキ
『うぅ…あんたはクソだ!』
久草
『キサマ、まだ言うか!
いいか、ヤマザキ、当の庶民は我が党を支持しているんだ!
庶民は富裕層を支えることを奴ら自身が認めているんだ!
それが何故だかお前には分かるか?!』
ゴボゴボゴボ。
水かさが増して2人をのみ込んでゆく。
ヤマザキ
『うっ…もうだめだ…』
薄れゆく意識の中で、拳を握りしめたヤマザキはもう一発、久草にボディーブローをお見舞いした。
バキッ!
久草
『ガハッ』
私の首に絡みついた久草の両手が放れ、久草はあっという間に流されていった。
久草
『うわぁー。』
私も死を覚悟して目を閉じた。
それからどれぐらいの時間が経過したのだろう?
ヤマザキ
『ん…ここは何処だ。私は死んだのか?』
何故だか分からないが、牛丼屋の便器から溢れた水は温泉のように温かくなっていて、客は店内で風呂を満喫していた。
皆、一様に頭の上にタオルを乗せて、くつろいでいる。
変な光景だ。
ヤマザキ
『ここは天国かな?それとも…』
そう思った瞬間、私は飛び起きた。 すべて夢だったのだ。
現実の私は政治家ではなく、何者にも成れていないニートだったのだ。