3羽目 金の羽
〜10年後
「ウル!そこ掃除しといておくれ!」
「あいよ〜」
かのディ○ニー映画のようにバケツやらほうきを操り、隅々まで綺麗にする。
前世を思い出して早10年、少し飛ばし過ぎたかと思ったが気にしない気にしない。
魔法、剣術共に祖母を唸らせる程の実力を手に入れた。
ややこしくなるので途中で気づいた全属性持ちは隠してるけど。
んでそろそろ言おうかなって思ってる。
ここにある本は読み終えたし、正直言ってもう学ぶことはない。
実力もついたし、そう簡単にやられないはずだ、多分。
掃除し終え、埃がないかなど点検してから祖母のいるリビングへと向かう。
丁度母さんもいるしリィアもいないようだ。
「母様?」
ちなみに、口頭で母様と呼んでいるのには訳がある。
天羽族の楽園とも呼ばれているこの場所に住み、そして島を操る主。
そう、母さんは天羽族の長なのだ。
100年に一度天羽族に産まれてくる金の羽を持つ赤子、そして赤子は長として育てられる。
この島を守る為に。
この浮遊島には天羽族に伝わる秘宝が隠されているんだとか、まぁそれが魔族に取られた 【心臓】だがな。
それを守る為に産まれてきたんだって母さんが言ってた。
だからさ、結構お偉いさんなわけよ、むずかゆいけど良い子を演じなきゃね、うん。
ちなみのちなみに黒い羽をもって産まれた赤子も結構珍しいんだってさ。
「どうしたのウル?」
おっと、そうだったそうだった。
「旅がしたいです」
唐突にそう言った。
□■□
「ウル、もう一度言って?」
「母様、僕、旅がしたいです」
「はぁ〜…」
盛大なため息をつかれる。
一筋縄でいかないことは分かってたが、なかなか骨が折れそうだな。
「ウル、確かにあなたは強いわ。でもまだ15歳なのよ、世間に出るには幼すぎるわ。
外はここより危険なのよ?魔獣だっているし…そもそも捕まったらどうなることか…それに、」
「ルーシェ」
今まで黙って聞いていた祖母が口を開く、
「行かせてやりな」
「え?」
思わず俺と母さんの声がかぶさる、祖母も反対なんだろうと思っていたのに意外だ。
「何だいウルまで、ま、本人がどうしてもって言うなら別にいいじゃないか」
「しかし…」
「で、ウル。いつ行くつもりなんだい?」
「早く行けるならすぐ行きたいですけど…」
「分かった、なら明日には用意しといてやるよ」
思わず形容し難い表情になる。なんか拍子抜けってしたっていうかなんていうか…。
まぁ、別にいっか。ていうか母さんが置いてかれてたけど大丈夫か…?
「母様?」
「はぁ〜〜……」
本日二回目のため息、しかしどことなく諦めが入り混じったため息だ。
「仕方ないわ…お母様は一度言ったことは意地でも曲げないの…。
だけどウル、無理だけはしないでね!!!」
がしっと俺の手を握り、燃えるような目を向ける。若干怖い。
母さんは手を離すと、ふと目を閉じる。
刹那、金色の翼が視界を覆う。
光を照らしていないに関わらず輝く翼、その美しさは前世で見た宝石より余程美しい。
思わず見惚れていると、母さんにその美しい金色をした羽根を手渡される。
「これを持っているといいわ、この島に入れる通行書よ。あ、待って今ペンダントにするから」
せっせと作業をする母さん、そういえば初めて翼みたな…。
綺麗だな〜と眺めていると作業が終わったようだ
母さんがこっちを振りむき、首に何かかけられる。
「さ、これでオッケー!」
首元を見ると金色の羽根がぶら下げられている。
触るとさらっとした手触りのいい感触がした。母の温もりを感じ、自然と笑みがこぼれる。
「ありがとう、母様」
「いいのいいの!さ!今日はもう寝なさい!…」
背中を押され、苦笑混じりに自室へと戻る。
リィアに何も伝えてないけどいいのか……
……ま、いっか。
案外疲れたのか眠気に襲われて思考を投げ出す。
ベッドに横たわるとそのまま吸い込まれるように眠りについた。