1羽目 神様
一定感覚で襲ってくる頭痛、足が重い。
はっきりとしない意識の中で、俺が最後に聞いたのは何かが砕ける鈍い音だった。
□■□
ぐるぐると頭の中を探られているような感じがして吐き気が襲う。
と思えば今度は優しく包みこまれているような感じがして、心地が良い。
その両方が絶えず交互に襲ってくる、意味がわからなくなり、泣き出しそうになる。
ーーなんなんだよこれ
「おーーい!」
「痛っ!!」
鋭い痛みを感じ目を覚ます。
知らぬ間に泣いてたようで頬が少し乾いている。
涙を拭い、キッと横を睨みつける。
「やっと起きたのぅ…ふぅ…手荒い扱いをしてすまんかった」
「……」
汗を拭うような仕草をする老人をじっと見つめる。
白い髭、白髪、猫背、どこにでもいそうな老人だ。
それよりも俺が気になったのはいつの間にか寝かされていたこの部屋、
やけに広い、そしてどこまでも白い。
俺トラックに轢かれて…病院…?いや、でも広すぎないか…?
「うむ、そうじゃな、そのことについて手っ取り早やく話そうかのぅ」
「え?」
まるで考えていることを見透かしているかのような言い方だ。
心読まれているわけでもあるまいし…
「それがそうなんじゃよ」
え、まじで?
「うむ」
このパターンは……
「俺死んだ!!??」
「うむ」
□■□
ひとしきり驚いたあと、どこからか出てきた炬燵に入ってお茶を飲みながら一息つく。
これみたら信じるしかないじゃん…どこから出したんだよ…。
「神様…ですよね?」
「そうじゃよん」
「……」
お茶を啜りながらじっくりと考える、確かに外見はどこにでもいそうだが神様…に見えなくもない?
何も無いところから物を出すのも実際見たし、恐らく、本物なのだろう…。
自分が死んだっていう実感は薄いが…こんな状況普通じゃあり得ないしな。
別に心残りとかは無かったんだが、あまりにも驚いた。ほんとにあるんだな、死後の世界って。
それより、だ。
ケータイ小説でありがちなパターン…もしかして、
「転生じゃの」
「ですよね〜」
□■□
そこから暫く神様の話を聞いていた。
俺が転生するのは【ギルクレイン】と呼ばれている世界、もちろん、剣や魔法、獣人やら何やらもいる。
ゲームと似たような感じと思えばいいらしい。
魔法が中心とされているので化学はあまり発展していない、しかしある程度は進んでいるようだ。
そしてここからが重要で、俺が転生する理由
このギルクレインという世界にはどうやら多くの種族が存在しているらしく、
その中の一つ、〝天羽族〟下級種族で、今まさに絶滅しかけだと言う。
本来ならば神に最も近いとされる存在だったのだが、力の源である《心臓》が魔神に盗まれ力を失い、下級種族となってしまっている、とかなんとか。
そして天羽族の翼はとても美しく高値で取引され、その種の数を減らしてきているらしい。
そこで、異世界の住人の俺に天羽族となって欲しいと。
異世界の知識もあるし、異世界人特有の魔力の大きさもあってピッタリな条件らしい。
もちろん俺は了承の旨を伝え…なかった。
異世界には興味があるし、魔法や剣も気になるが、もう一度人生をおくるとなると、面倒極まりない。
神様は驚いて「もう転生すると決まっておるし…」とかぶつぶつ呟き、何か吹っ切れたなと思うも束の間、
いきなり神様は俺の背中を押して、突如現れた魔法陣の中に自然と体が吸い込まれて行く。
ーそして俺の意識は途絶えた