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仙人浜

作者: 絵夢恵子

 2001年7月7日僕は北海道の襟裳岬にいた。


 僕、斉藤諸馬は現在デザインの専門学校2年生で、今年22歳になる。

 僕は以前自転車で日本一周をしたことがあるんだ。

 忘れることの出来ない2001年7月7日の出来事を、今でも鮮明に思い出すことが出来る。


 当時17歳だった僕は、高校が通信制とだったこともあって夢だった日本一周を決意した。

 時間はたくさんあったので、ひたすらアルバイトをし、旅に必要な物はほぼすべて自分で用意した。

 そして2001年5月1日に旅は始まる。



 旅を始めてから2ヶ月が経った今7月1日、僕は北海道、知床半島の羅臼で昆布干しのアルバイトしていた。

 長野県から出発した時が5月で、日本海側を新潟から走り、青森からフェリーを利用して北海道に渡る。


 6月の梅雨の時期に本州を抜け北海道に入ったのは計画をしていた訳ではないのだが、今考えればかなり季節にあったルートだったと思う。

 北海道は本州と違い6月の露の影響が非常に少ないから雨があまり降らないし、この時期の北海道は旅行者も多く安いオートキャンプ場多くあることや、自転車旅人のための短期バイトに満ち溢れている。


 北海道の知床半島でのアルバイトは、当時高校生だった僕の少ないお金を増やすためには必要不可欠。

 昆布干しというのは物凄く力や体力の要る仕事だ、水分を多く含んだ昆布の束で担ぎ上げ、籠から干し場まで持って行き、きれいに並べて干す。

 一回の往復で数十キロの重さの昆布を運ぶ昆布干しは、あまり運動が得意ではない僕には、完全な力仕の昆布干しになれるには時間が必要だった。


 五郎「しょうくん、君がここでアルバイト初めてもうすぐ半月ぐらいになるな。」

 諸馬「もうそんなに経ちましたか、時間が過ぎるのは早いですね。よっと。」


 昆布を干し場に広がる茶色い網の上に広げる。

 吉又五郎さん僕の雇い主で、キャンプ場に居た僕に昆布干しのアルバイトをしないかと声を掛けてくれた漁師さんだ。

 

 五郎「半月だけって約束だったし、そろそろ日本一周再開するか?」

 諸馬「そうですね、明日出発しようと思います。色々お世話になりました。」


 軽くお辞儀をすると、五郎さんはいいんだよと顔の前で手を振った。

 

 五郎「この時期は人手がたり無いから君がいてくれて凄く助かったよ。ほれ、これは今日までのお給金だ、日本一周頑張りなよ。」

 諸馬「ありがとうございます。また旅が終わったときにでもお手紙なり年賀状なり書きますね。」

 

 五郎さんから受け取った封筒を作業着の中に入れもういちどお辞儀をした。


 五郎「しょうくん、これからえりも岬のほうへなんかしていくんだろう?。」

 諸馬「そうですね、そんな怖い顔してどうしたんですか?。」

 

 五郎さんは眉間にシワを寄せ難しいそうな顔でこちらを見つめながら言う。


 五郎「お前はよそのもんだから知らないかもしれないが、襟裳岬には有名な仙人浜キャンプ場っていう無料のキャンプ場があるんだ。きっとおしょう君も通ると思うがそこだけはやめておくといい。あまりいいい噂を聞かないからね」

 諸馬「治安が悪いとか、熊が出るとかそういうのですか?」

 五郎「いや、それが解らないんだ。でもあのキャンプ場3回も場所を変えてるんだそうだよ。なんでも場所変えれば起こらないんじゃないかっていう考えがあっての事らしいが。今だに解決してないらしい」

 諸馬「仙人でも現れるんですかね。忠告ありがとうございます。近くを通ることがあれば出来るだけさけるようにしますね。キャンプ場意外でも野宿はできますから。」

 

 そう言うと五郎さんはうんと頷き、仕事にもどっていった。


 最後の仕事を終えて無料キャンプ場に設営してある自分のテントに戻った時、もう辺りは真っ暗。

 

 テントの中に入り北海道の地図を取り出した僕は、明日から1週間のルートを決めるために道の確認を行っていた。

 目標地点と現在地点をより海沿いに道路で繋ぶ。

 その道沿いの施設を調べて記入して行く。

 

 作業を続けてると、聞き覚えのある施設がの名前が出てきた。

 襟裳岬の先端から1キロ山に入った道に書かれてる名前は、つい最近耳にしたものと似ていた。


 諸馬「仙人浜キャンプ場料金は無料、6月1日~8月31日までか。これ今日五郎さんが言ってたとこかね。」


 そこにはこうも書かれていた、「キャンプ場開場期間中は霧多い事がありますので、ご注意ください」と。

 僕は不気味に思いつつももしもの時に備えてその3日後通る予定のキャンプ場を地図に記入した。


 出来る事なら早くえりも町に出て暖かい宿に泊まり、こんな不気味な場所は無視したい。 

 

 作業を終えるともう23時になっていた、明日も早いし今日はもう寝ようとテント内の明かりを消し寝袋の中で眠りに付いた。



 

 


 


 

                  つづく

 


 

 


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